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初恋は蜜の味だと思ったら大きな間違いだよ?  作者: 櫻木サヱ
それでも、待ってしまう

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17/21

空白

連絡は、途切れなかった。


毎日じゃない。

でも、忘れた頃に来る。


『今なにしてる?』

『ちょっと聞いてほしいことあって』


用事は、いつも曖昧。

でも、私には断れない理由になる。


『どうしたの?』


そう返すと、

少ししてから長文が来る。


部活のこと。

友達のこと。

将来のこと。


大事な話みたいな顔をして、

実は、

誰に話してもいい内容。


でも、

私に話してくれる。


それだけで、

意味がある気がしてしまう。


夜。

ベッドに寝転びながら、

スマホの光を見る。


既読がつく。

返事が来る。


それだけで、

今日が報われた気になる。


返事が遅いと、

理由を探す。


忙しい。

寝落ち。

たまたま。


自分に都合のいい答えだけを、

拾い集める。


「まだ、嫌われてない」


その事実に、

しがみついていた。


ある日、

紗季が言った。


「連絡、向こうから多くない?」


「そう?」


即座に返した自分の声が、

少し高かった。


「でもさ、会う話は?」


一瞬、

言葉が止まる。


「……そのうち」


そのうち。

便利な言葉。


来ない未来を、

先延ばしにできる。


「それ、空白だよ」


紗季は、

静かに言った。


「何も起きてない時間を、

勝手に希望で埋めてるだけ」


反論できなかった。


でも、

納得もできなかった。


空白でも、

そこに名前をつけたくなる。


期待。

可能性。

未定。


どれも、

自分を守るための言葉。


その夜も、

連絡は来た。


『今日はありがとう。話せて楽だった』


楽だった。


私は、

それ以上を求めていないふりをする。


『こちらこそ』


短く返して、

画面を伏せる。


心は、

全然、足りていないのに。


空白は、

何も起きていない証拠じゃない。


少しずつ、

何かが削れている時間。


それを理解しながら、

私は今日も、

返信を待ってしまう。

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