空白
連絡は、途切れなかった。
毎日じゃない。
でも、忘れた頃に来る。
『今なにしてる?』
『ちょっと聞いてほしいことあって』
用事は、いつも曖昧。
でも、私には断れない理由になる。
『どうしたの?』
そう返すと、
少ししてから長文が来る。
部活のこと。
友達のこと。
将来のこと。
大事な話みたいな顔をして、
実は、
誰に話してもいい内容。
でも、
私に話してくれる。
それだけで、
意味がある気がしてしまう。
夜。
ベッドに寝転びながら、
スマホの光を見る。
既読がつく。
返事が来る。
それだけで、
今日が報われた気になる。
返事が遅いと、
理由を探す。
忙しい。
寝落ち。
たまたま。
自分に都合のいい答えだけを、
拾い集める。
「まだ、嫌われてない」
その事実に、
しがみついていた。
ある日、
紗季が言った。
「連絡、向こうから多くない?」
「そう?」
即座に返した自分の声が、
少し高かった。
「でもさ、会う話は?」
一瞬、
言葉が止まる。
「……そのうち」
そのうち。
便利な言葉。
来ない未来を、
先延ばしにできる。
「それ、空白だよ」
紗季は、
静かに言った。
「何も起きてない時間を、
勝手に希望で埋めてるだけ」
反論できなかった。
でも、
納得もできなかった。
空白でも、
そこに名前をつけたくなる。
期待。
可能性。
未定。
どれも、
自分を守るための言葉。
その夜も、
連絡は来た。
『今日はありがとう。話せて楽だった』
楽だった。
私は、
それ以上を求めていないふりをする。
『こちらこそ』
短く返して、
画面を伏せる。
心は、
全然、足りていないのに。
空白は、
何も起きていない証拠じゃない。
少しずつ、
何かが削れている時間。
それを理解しながら、
私は今日も、
返信を待ってしまう。




