同じ側
集まったのは、
駅から少し離れたファミレスだった。
部活の話。
学校の愚痴。
笑い声。
私は、
その輪の中にちゃんといる。
でも、
中心にはいない。
悠人の隣の席は、
最初から空いていなかった。
気づいた時には、
誰かが自然に座っていた。
偶然。
でも、何度も重なる偶然。
「それでさ」
悠人は、
向かいの子と楽しそうに話している。
私に振られる話題も、
ちゃんとある。
だから、
疎外されているわけじゃない。
それが、
余計につらい。
「みんなでまた来ようよ」
誰かの一言に、
全員がうなずく。
みんなで。
その言葉は、
何も否定しない代わりに、
何も選ばない。
食後、
会計を済ませて外に出る。
夜風が、
少し冷たい。
「じゃあ、またね」
解散。
悠人は、
私と同じ方向。
少しだけ、
期待が顔を出す。
「駅まで一緒?」
聞く前に、
向こうから言われた。
「うん」
短い距離。
短い会話。
「今日、楽しかったね」
「そうだね」
当たり障りのない感想。
「最近、元気そうだよね」
その言葉に、
一瞬、詰まる。
元気そう。
本当に元気だったら、
こんなふうに、
小さな言葉に引っかからない。
「まあね」
曖昧に笑う。
駅に着く。
改札の前で、
自然に足が止まる。
「じゃ」
それだけ。
立ち止まる理由が、
どこにもない。
背中を見送りながら、
分かってしまった。
私は、
同じ側にいるだけ。
特別な位置じゃない。
「嫌われていない」は、
安心じゃない。
「選ばれていない」ことの、
言い換えだ。
電車に乗って、
窓に映る自分を見る。
ちゃんと、
平気そうな顔。
でも、
胸の奥で、
静かに何かが折れていた。
それは、
音もしないし、
涙も出ない。
ただ、
戻らない。




