人影
スクドゥマ軍の夜警の目を盗み、野営地を離れる人影があった。
それは二人の男であった。
その者たちは、ナゥラ市街の方面へと向かっていた。
そして彼らが、ナゥラの市街地を目前にしたその時――男の一人の背中に、とん、と軽く何かの当たる感触があった。
男は振り向き――次の瞬間!
ヤコブの拳が一閃、男の顎を右から左へと打ち抜いた!
それをまともにくらった男は昏倒――!
その音に反応して足を止めたもう一人の男のみぞおちに、今度はパウルスの拳が深くめり込んだ!
「かは――ッ……!」
男は声にならない悲鳴をあげ、その場にうずくまった。
しかして男二人は、ヤコブらが用意していた縄で、その身を縛り付けられた。
そうしてナゥラ市街の外れに、五人の男たちが集った。
ヤコブ、パウルス、ブラナテラ剣兵が一人、そして野営地を抜け出した男二人。もう一人のブラナテラ剣兵は、引き続き野営地にて警戒にあたっていた。
ヤコブの拳に沈んだ男は意識を失っており、ヤコブはもう一人の男に剣を突きつけて言った。
「大声は出すな」
「い、命だけは――」
男の言葉に、ヤコブは答えた。
「命はとらぬ。吐かねば、肉を削ぐ」
「――ッ!」
男は絶句。
かくして、ヤコブらによる尋問が始まった。