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霧
抜かった――! このままでは勝てない――!
大将ルドヴィクスは、霧の発生に対する策を持ち合わせていなかった。
見たところ、リーベルタ軍の主力は魔術隊。
対してブラナテラ軍は、長槍、剣術、弓術の隊をほぼ均等に持ち、魔術士は比較的少数。
この霧が一段と濃くなり、見通しが悪くなった際、最も優位に立ち回れるのは、幾多の事象を操れる魔術士となる。
さらには、この戦はリーベルタの側から仕掛けられたもの。
リーベルタ軍が霧の発生を予測していることは明らかで、ブラナテラ軍は開戦を待たずして、圧倒的不利な状況下に置かれようとしていた。
――だが、ブラナテラ軍に勝ち筋が残されていないわけではなかった。
魔術士は近接戦闘においては無力。
霧がその濃さを増す前に、敵陣の内部へ切り込むことができれば、あるいは、ブラナテラ軍が勝利を手にすることも可能であろう――。
果たして、ルドヴィクスはひとつの賭けに出た。
直ぐにパウルス・シルウァルムをその元へ呼び寄せると、彼にこう尋ねた。
「子細は追及せぬ。貴君は、雷光の如き俊足を持つと聞き及んでいる。此度の戦――こと緒戦において、それができるか、できまいか。それだけを教えてはくれまいか」
パウルスは少考ののち、答えた。
「できます」




