062_四人で行こう
魔法屋へ運ぶ荷は、村の中を歩くだけでも軽くはなかった。
ソワレに挨拶し、指定の箱へ集めた素材を納めた。薬草の袋、包んだ空き瓶、輝石、毒針。プリシラとエレノアが手伝ってくれたおかげで、どれも頼まれた数だけ揃っている。
「お疲れ様でした。こんなに早く対応して頂けるなんて助かりました」
「訓練もできて一石二鳥でしたから」
「報酬はギルドの受付から受け取って下さいね。ありがとうございました」
ソワレが袋を開き、薬草の状態を見て頷いた。無事に受け取ってもらえて、ウィルもほっとする。礼を言って店を出ると、報酬を受け取りにギルドへ向かった。
報酬を受け取ると、その足で道具屋へ向かった。明日は山向の廃墟へ行く。今日の稼ぎから、まず必要な道具を買っておきたかった。
ポーションを買い足し、割れないよう包んでもらった。前の下見より遠くまで行くのだから、水も余分に持っていこう。
ネージュにも頼んで、四人で行ければ心強い。治癒を任せられる人がいれば、自分は前の敵に集中できる。もちろん、彼女に用事がなければの話だ。ウィルは買った品をしまい、店を出た。
向こうからこちらへ歩いてくるプリシラに気づいた。
ウィルが手を上げると、プリシラは笑って足を速めた。道具屋の前まで来て、彼の顔を覗き込む。
「全部、渡せた?」
「うん。助かったって」
「やったね。エレノアにも言ってこよ」
ウィルは、素材集めを手伝ってくれた礼をプリシラに言った。プリシラはどういたしましてと大げさに胸を張る。仕事を終えたことを喜ぶ顔につられ、ウィルも笑った。
村長の家の前で、授業を終えたエレノアと合流した。プリシラが納品を終えたと知らせると、エレノアも嬉しそうだった。ウィルは買った品を下ろし、明日は山小屋の先へ進もうと話した。すると、プリシラの目が山の方へ向いた。
「今度こそ廃墟へ行くんだね!」
「うん。キノコが採れる魔物を探しにね」
「楽しみ! エレノアも行くでしょ?」
エレノアも頷いた。ウィルは続けて、もう一つ相談した。
「明日はねーねにも、一緒に来てもらおうと思ってるんだ」
プリシラの顔が明るくなった。
「ねーねも? いいね、四人で行こうよ!」
「まだ、来てくれるって決まってないからね」
「そっか。じゃあ、聞いてきてね♪」
エレノアも賛成してくれた。
「お姉様にも予定があるでしょうから、今のうちに伺っておいた方が良いかも知れません」
「うん。二人はここで待っててくれる?」
「あたし、一度家へ戻って支度してくる。そのあと、ここで待ってるね」
プリシラが言い、エレノアも頷いた。
エレノアは村長の家で本を調べながら待っていてくれるというので、買った品を家へ置き、ネージュを訪ねた。
戸を叩くと、ネージュは笑顔で出迎えてくれた。ネージュに招かれて部屋へ入り、卓を挟んだ椅子に腰を下ろした。
「ねーね。明日、僕達と山向の廃墟へ行ってもらえないかな」
彼女は顔を上げた。
「廃墟へ?」
「うん。支部長に頼まれたキノコが、そこにいる魔物から取れるんだって。プリシラとエレノアにも、一緒に来てもらうんだけど……」
ウィルは下見で歩いた道と、引き返した場所を話した。山小屋より先はまだ知らない。支部長にはDランクで行ける場所だと聞いたが、実際に足を踏み入れるとなると不安はあった。
「ねーねにも来てもらえたら、心強いんだ」
「もちろんいいわ、一緒に行きましょう。明日は何時に出るの?」
ウィルは、朝の待ち合わせの時刻を伝えた。
「山小屋の先まで行くなら、帰りは遅くなりそうね」
「うん。暗くなる前には戻れるようにしようと思うけど」
「キノコが見つからなくても?」
先日まで五十五万ほどだった借金は、今は五十六万ゴールドほどに増えている。できれば明日、頼まれた分を揃えてしまいたかった。
「……その時は、また行くよ。帰り道で動けなくなったら困るし」
「そうしましょうね。私も支度をしておくわ」
「ありがとう、ねーね」
ウィルは椅子から立ち、戸口まで見送りに来てくれたネージュへ振り返った。
「明日、よろしくね」
「ええ。また明日ね」
ネージュが手を上げる。ウィルも手を振り、明るい道へ出た。
村長の家へ戻り、エレノアとプリシラに返事を伝えた。
「やった! 四人だね」
プリシラが両手を打ち合わせる。エレノアも嬉しそうに笑い、朝の待ち合わせ場所を相談した。
ウィルは下見で通った道を二人に説明した。ネージュと話した帰りの予定も伝える。小屋までは一本道だったが、その先は判らないと言うと、エレノアは頷いた。
「人の立ち入らない場所の探索は初めてですね」
「ワクワクするね! これぞ冒険!って感じだよ♪」
昨日は見失うほど先へ走っていった本人が言うので、ウィルは思わず笑った。
「頼むよ。本当に」
帰宅すると、ポーションと水の容器を荷に収めた。前に出るのは自分とプリシラで、後ろからエレノアとネージュが支えてくれる。四人での活動が楽しみだった。
ネージュに、見つからなくても帰ると答えた時は正直少し複雑な気持ちだった。借金は待ってくれない。それでも、四人で出かける以上、自分の都合だけで粘るわけにはいかなかった。
荷を戸のそばへ置くと、夕食の支度に取りかかった。




