↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未だ蕾の勇者様(ノベライズ版)  作者: さじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/71

051b_選ばなくていいんです

 エレノアを見ながらプリシラのことまで言うのが申し訳なかった。けれど、ここを隠して好きだと答えたら、きっと後でもっと悲しませる。


「ウィル兄様」


「……はい」


 叱られると思っていたウィルに、エレノアは呆れ混じりの笑顔を向けた。


「兄様の不器用な優しさは、とっても素敵です。私もプリシラさんも、そういう兄様だからこそ大好きなんですけれど」


「その……ありがとうございます」


「そうですね。だからこそ、こういう発想が出てこないのは仕方ないですよね。むしろ、ずっと本気で悩んでくれていたという事がわかって、私はとっても嬉しいですよ?」


「うん……ごめんね。……こういう発想?」


「だから兄様の悩み、私がここで解決してあげます」


「えっと……どういう事?」


「兄様は選べなくてずっと悩んでらしたのでしょう?」


「はい……すみません」


「いいんです。だったら、選ばなくていいんですよ」


「……なるほど?」


 返事だけは出た。何がなるほどなのか、自分でも分からない。


「そんな面白い顔しないで下さい。ウィル兄様。断言しますけど、プリシラちゃんも同じ考えです」


「え~っと、つまり?」


「二人とも娶って下さい。そうすれば誰も傷つきません」


 ウィルはエレノアを見たまま、瞬きをした。


「……なるほど?」


「もう! その変な顔やめて下さい!」


「うぅ、エレノアが僕をいじめる……」


「虐めてません! 兄様、貴族は奥さんが沢山いるでしょう? 奥さんは何人いても別にいいんですよ?」


「ぇ……そうなの?」


「そうです。多くの人が一夫一妻なのは金銭的な余裕が無いからで、別にそういう決まりがある訳ではないですよ」


 貴族には妻が何人もいる。それは知っていた。けれど自分もそうしていいのだとは考えたことがなかった。


「……選ばなくていいの?」


「はい。それこそ、冒険者さんでもたまに居るじゃないですか」


「ぁ、……アレって本当にそうだったんだ?」


「そうですよ! もう! 昔から変な所で抜けてるんですから……」


 ギルドで、女の人を何人も連れた冒険者を見かけたことはある。仲間同士の冗談だと思って、ウィルは深く考えたことがなかった。


「……僕ずっと悩んでたんですよ?」


「……ふふ。ず~っとヤキモキさせると思ったら、そんな簡単な事だったなんて。でも、兄様らしいですね」


 エレノアが笑った。ウィルはほっとしかけて、それでも首を傾げた。


「……でも、最初から知っていても、やっぱり『二人ともお嫁さんになって』とはならなかったと思うけど」


「まぁ、それもそんな気がします。でも、もういいじゃないですか。今度三人でお話ししましょう? 私、プリシラちゃんなら一緒で大丈夫ですから」


 プリシラも同じ考えだと、エレノアは断言した。けれどウィルはまだプリシラ本人の口から何も聞いていない。確かめるなら、三人で顔を合わせて話すのがいちばんだった。


「うん、わかった。エレノア、いままで待たせてごめん」


「いいんです。変に拗れたり振られるより、最良の結果だったと思いますから」


 嬉しそうなエレノアを見て、ウィルもほっとした。けれど結婚となると別の問題がある。村長に肩代わりしてもらった借金は、まだ返し終えていなかった。


「うん、でも……借金の事もあるし、いきなりお嫁さんは難しいと思うから、恋人からでもいいかな?」


「……そうですね。今となっては急ぐ必要もなさそうですから、とりあえずはそれで許してあげます」


「ありがとう、エレノア。好きです、恋人になって下さい」


「はい!」


 今度は、笑ってごまかさずに言えた。


「兄様、キスして……」


「うん」


 ウィルはエレノアを抱きしめ、唇を重ねた。離れると、彼女はすぐそばで目を開けた。


「私、この時をずっと夢見てました……」


「……ごめんね、僕が何も知らないせいで」


「良いんです、大好きですウィル兄様。ねぇ、もっとキスして下さい」


 ウィルは、また彼女の願いに応えた。


「大人のキス……すごくエッチですね。ウィル兄様のここ、またとっても元気になっちゃいました」


「好きな娘とキスしたら、そりゃこうなるよ」


「兄様。私、ご褒美欲しいです」


「でも……、プリシラにすぐ戻るって言って来ちゃって……」


「む~、それじゃあまり時間がありませんね……」


「こんなつもりじゃなかったから……」


「……それなら、少しだけエレノアの好きにさせて下さいませ」


「うん、まぁ少しだけなら……」


「やった。うふふ。ウィル兄様はそのままで。全部エレノアが致しますから」


「え? ……ちょ、わぁ!」


 その先の申し出まで、ウィルは考えていなかった。


     *


 恋人としての、二人の初めての濃密な時間だった。

 プリシラを待たせている手前、身体を重ねる程の時間は無かったが、エレノアはウィルの猛るモノに懸命に奉仕した。


 エレノアは途中から夢中になってしまったと、恥ずかしそうに謝った。ウィルこそ初めての彼女を困らせなかったか気にしていた。問いかけると、エレノアは嬉しかったと答えてくれた。彼女が隣で微笑んでいることを、もう家族だからという言葉でごまかさずに受け止めたかった。


 プリシラが待っている。そう言われても、もう少し二人だけでと頼んだのはウィルの方だった。エレノアはもう一度だけと念を押して、ウィルの若い情熱に応えてくれた。


     *


 倉庫を出る支度を整える頃には、ウィルはすっかり落ち着かなくなっていた。プリシラにはすぐ戻ると言ったのに。


 エレノアは、反対に嬉しそうだった。


「ふふふ。これからは、二人で過ごしたい時はいつでも言って下さいね❤」


 教室に戻った時、どんな顔をしていればいいのだろう。ウィルは隣で笑うエレノアと顔を見合わせ、倉庫を出た。


 *


 子どもたちが帰った後の教室に、村の先生が一人で残っていた。


「エレノアさん……今日も可憐だったなぁ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。