30 私の魔法
極端な話、私の思う自分の幸せとは、自分さえ良ければ、自分さえ楽しければいいというものだ。
私は幸せを知らないまま死ぬぐらいなら、自分だけでも幸せになってやりたいと思う人間だ。
醜い願望なのだろうけど、そんなの知ったこっちゃない。
人生で幸せのために生きれる時間は限られている。私には他人からの評価とか他人からの意見を聞いてやれる余裕はない。
「その願いぃ、その幸せに対する素直さぁ、私好みかもしれないですぅ。」
それが認められたのか、それは突然やってきた。
子供のような声が聞こえてきたかと思えば、目の前の何も無い空間から、金色に輝く毛玉のようなものがいくつも姿を現す。
「うぇ?!なにこれ!」
「なにこれとは酷いですぅ、今姿を現しますからぁ…」
その声と同時に、その毛玉のようなものが一斉に一箇所に集まっていき、人型を作っていく。そしてちょうど私と同じくらいの高さの、金色の毛で全身が包まれている人型の何かができあがった。
「…え?いや、全く分からないんだけど…」
「あれれ?あっ、そうだぁ。顔がまだでしたねぇ。」
そう言うと、ちょうど私の視線の高さにある顔らしきものがある部位の金色の毛が一斉に周囲へ弾けるように飛んでいき
「初めましてぇ、あなたの気持ち悪いぐらいに素直な気持ちに同情してやってきたぁ、モカと申しますぅ。まぁ…有能なぁ悪魔だと紹介しときますねぇ。」
女性だった。そして、顔はかなり童顔で、幼いようにみえる。
さらに、注目すべき点は他にもあり、目は青く、何より頭から、ねじ曲がった二本の黒色の太い角を生やしており、それだけでもかなり印象的なのだが、身体中を金色に輝く毛玉、いや泡にもみえるよく分からないものだけで隠しており、はっきりと言って形が丸分かりというか、みていてこっちが恥ずかしく思えてくる服装?だった。
「あのぉ…聞いてますぅ?」
「あっ、ごめんなさい。登場から服装まで全てが堂々としたものだったからつい…」
「あっ!分かっちゃいますぅ?今日の服装は金色でぇ、かなり気合いをいれてやってきたんですぅ。もっと褒めてくれて構いませんよぉ嬉しいのでぇ。」
「気合い…というかやっぱりこれが服なんだ…」
悪魔だと言われ、恐らく呼びだしに成功している。喜ぶべきなのだろうが、登場した悪魔が悪魔である以上に衝撃的な存在でそっちに意識がいってしまう。
「にひぃ、それでそれでぇ、何を望むのですぅ?早く契約をするのかしないか話さないとモカが消えちゃうのでぇ手短に話しましょ?」
「あっ、じゃあ…モカ?ちゃんと契約したら私は何ができるようになりますか?」
「モカちゃん?可愛い呼び名に感謝でえすぅ。それに理解も早くて助かります。ではではぁ説明に入ってもよろしいですかぁ?」
「はい…お願い…します。」
悪魔とは皆このように元気なのだろうか。勢いというか、話の圧を凄く感じる。
「モカと契約するとぉ、たーーくさんのことができるようになりますぅ。モカが求めるのはぁ、こっちの世界での快適な暮らしですぅ。以上ですぅ。」
「…えっ?は?それだけ?!もっと何か教えてよ!それじゃあ契約なんて…」
「じゃあ無しにしますかぁ?でもでもぉ、モカはここに来る前にぃ、他にこの呼びかけに応じた奴らを全員殴ってきたのでぇ、モカを断ったらぁ、その後誰も来ない可能性が高いですけどぉ…どうしますぅ?魔法、諦めちゃいますぅ?」
「はあ?!そんなのありなの?!平等じゃないじゃない!」
なんて性格の悪いやつだ。私の望みを知った上でこの仕打ち。悪魔か、いや悪魔なのだけれど、このやり方は私に選択の余地がないじゃないか。
「別にぃ、モカはいいんですよぉ?他の契約者を探すんでぇ。ただぁ、あなたは厳しくなっちゃいますねぇ?」
モカは悪戯が成功した子供のように笑みを浮かべる。
「ぐっ!迂闊だった…こんなやり方があったなんて…」
主導権を完全に握られてしまった。卑怯だと言ってやりたいが悪魔にそれは悪口にならないだろう。
(うぅ、やっぱりメヴィアに来てもらったらよかった…)
未知の挑戦に対して、一人でも大丈夫だろうという油断が完全に仇となった。
「さぁさぁ?どうしますぅ?後、三十秒以内には決めてもらわないとぉ、モカは帰っちゃいますよぉ?」
目の前の悪魔は、心底楽しそうに笑みを浮かべ、この状況に満足といった感じの表情をしている。
私に残された選択は、よく分からない怪しい契約をするか、それを断って、次いつ成功するかも分からない魔法取得訓練をまた再開するか、この嫌な二択だった。
(でも…決めれない選択ではない。もっと最悪な選択肢じゃなくてよかった…私は本当なら捧げ者として死んでた命。奇跡で生きているのだから、もう、幸せになることに妥協はしないと決めているし、後悔しないよう、何でも挑戦していくって決めてる。)
せっかく奇跡が起きて、行き止まりだった人生に新しい道ができたというのに、また停滞するつもりなんかない。だから私は
「…分かった。状況は最悪だけど、モカちゃんと契約する。」
「…へ?いいんですかぁ?あっ…そうでしょうそうでしょうねぇ!そうするしかありませんもんねぇ。了解しましたぁ。契約ありがとうございまあすぅ。」
意外な反応だった。こちらを馬鹿にするように喜ぶものかと思っていたが、一瞬だが、彼女は素の表情で驚いていた。
すぐに調子を戻してしまったが、少しだけ彼女に対する印象が変わったかもしれない。
「…まあ、だから何だって話だけど。」
「なんです?」
「いいえ、なんでもありません。それで?契約はこれだけで成立するの?」
「そうですよぉ?口約束でも契約は契約です。信用できなくてぇ、薄っぺらい約束。悪魔らしいでしょう?」
見た目と服装だけをみれば、全く悪魔にみえないが、言動は全て悪魔らしい。そして、実感は湧かないが、私は悪魔と契約できたらしい。悪魔と言えば闇魔法になるわけだが
「…ねえ、契約が成立したってことは、じゃあ私はもう魔法が扱えるの?」
「まさかぁ。それに関しては契約だけでは無理ですよぉ。モカを身体に受け入れないと。」
「そうなの?じゃあ受け入れるってどうしたらいい?」
「簡単です。両手を左右にひろげてもらってぇ、モカが空いた胸に思いっきり突っ込むぅ!そしたらモカはあなたの胸の中、いわゆる精神世界に侵入できるのでぇ、それで同化は終了。そうした後なら扱えますよぉ。」
たったそれだけ。契約の仕方といい、同化といい、簡単すぎやしないだろうか。
ユウシンが、魔法は取得するまでの過程が難しいと言っていたが、確かにそう思う。
呼びかけにさえ成功すれば、後は流れに身を任せるだけとは。
「…まあ複雑過ぎても困るんですが。」
「なんです?」
「なんでもありません。」
「独り言多いですねぇ?悩みでも?」
ほっとけ。と、言い争っても勝てる気がしないので私はさっさと話を進める。
「なんでもいいです。…とりあえず、どうぞ?」
私は両手を左右にひろげ、受け入れる準備をした。
「おぉ、やはり話が早い契約者様は助かりますね。ではではぁー、お言葉に甘えて!とぉ!」
なんの躊躇いもなしに、少女の見た目をした悪魔が突っ込んでくる。
「んっ…」
衝突する瞬間、吸い込まれるようにモカと名乗った悪魔が私の胸の中へと消えていく。感じたことのない違和感に嫌な感じが胸に残るが
「…なるほど、こうなるのですね。」
その瞬間に直感として分かった。目を瞑り、胸に意識を集中させると、一つの真っ白い部屋に私は立っていた。
そしてその部屋には私以外にもう一人。
「そそぉ、モカに会いたくなったらぁ、こうして会いに来てね?レンカちゃん。」
「…あなたはずっとここにいるのですか?それと、どうして私の名前を?」
「呼ばれるまではここにいるよぉ。必要なら数十秒だけ外にも出れるけど、まあ基本的には人格をのっとることもできるから、外をでるぐらいなら身体を借りるかもぉ。名前に関しては、同化した時にあなたの情報を全て手に入れたからだよぉ。これからはレンカちゃんって呼ぶねぇ。モカのこともモカちゃんでいいよぉ。」
「…なるほど。好き勝手できるというわけね。」
悪魔、いやモカちゃんはそう言うと寝転び始める。人の精神世界でくつろぐなと言いたいが、受け入れたのは私だ。
「ねえ…契約したんだからさ、詳しい話教えてよモカちゃん。」
「詳しい話ってぇー?」
「モカちゃんと契約したことで、私にもあなたにも変化はあるんでしょ?その確認。お互い知らないのは損じゃない?」
「…むっ。言われてみればぁそうですねぇ。じゃあ確認だけしちゃいますかぁ。」
意外とすんなり聞いてくれた。モカちゃんは起き上がると
「ではこれからぁ、モカとレンカちゃん、これからの二人の関係についてぇ。そして、あなたが扱える魔法についてのお話、第一回!親睦会を始めますぅ!」
「おお!ついに…私の魔法!!親睦会!いえーい!!」
こうして私は、悪魔と契約する事に成功し、魔法の取得?に成功したのだった。
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