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魔王城の人姫  作者: 川輝 和前
第一章 『混沌の魔王城』
29/35

29 運命

魔法取得訓練を開始して二日目になった。

結局初日は何も変化がおきないまま終了し、二日目になっているわけなのだが


「…うーーん、天使と悪魔…私の魅力を沢山叫んだけど、何一つ反応は無しかあ。そんなに私って魅力ないのかなあ?…魅力を叫んで反応される人とされない人がいるって分かってると、なお辛さが倍増というか…流石にしんどくなってきたなあ…」


威勢よく始めたものの、やはり何も無いところへ呼びかけ続けるのは精神的にしんどいものがあった。昨日からなので、始めたばかりでそんな簡単にはいかないとメヴィアに言われたが、二日も魅力を叫び、無視されるのは日数関係なく辛いものだと思う。


「もう少しだけ、私に優しい世界になってほしいものですなあ」


白の七番、魔法領域と呼ばれる幻想的な世界の中、私は一人そう呟いた。

本当はメヴィアにも来てもらいたかったのだが、昨日は夜遅くまで付き合わせてしまったので、誘うのはやめた。


「…そもそも、人である私が、天使と悪魔が興味を持つものを想像するのが間違っているのかな?結局それって、私ならの話だもんね…」


昨日から色々考えて、言葉を選んで、叫んでをずっと繰り返している。疲れてくるまで、それの連続だ。


「私だけじゃなくて…私以外も関わってる話…ってどうだろう?」


その時、ふと思いついた。今までずっと元気だとか、狩りが上手いとか、自分の誇れるところの話ばかりをしていたが、その話に反応してくれるのは、きっと同じような生活をしている者達だけだ。

ずっと、住む空間は違えど、天使と悪魔、妖精や精霊も同じような存在だと思っていたが、何もかもが違う存在だった場合、私の今までの話はきっとつまらないものだったに違いない。


相手が興味をもちそうなことを話して、魅力を伝え、こっちに来てもらう。そのためには、己の良さを知ってもらうための話が必要だと思っていたが


「大事なのは、私がどういう人物なのかを教えるのではなく、向こうが自分から私を知りたくなるような、他にはない私だけの魅力を話すこと…」


メヴィアは言った。魔法は解明されていて、ほとんどの者が扱えると。

だとしたら、人間の良さや悪さはもう知っているのではないか、私が話した内容と、同じような内容を話した人物もいるのではないか。


否定はできない。もうそういう人物がいると分かっているのなら聞く耳すらもたないのも納得できる。


「だとすると…まだ私に残っている、勝負できそうな話といえば…」


早い者勝ち。私のこの推測が正しかった場合、魔法の取得は早い者勝ちだということになるが、私は運がいい。私にはある。

絶対に他に負けない、それでいて誰も聞いたことがないような、とびっきりの話が。


(まさか…あんなに嫌っていた故郷に感謝する日がくるだなんて…)


これは私の故郷のお話。ユウシンですら知らなかった、空の壁によって外から隔絶されていた場所にある小さな国の、ある少女の話だ。

辛い過去であり、思い出したくもない日々だが、私を語るなら、私を知ってもらうなら、この話は何よりも分かりやすく私という存在を、魅力的にしてくれるだろう。


「…私は、ここに来る前は、ある小さな国に住んでいました。そこは空の壁と呼ばれる結界のようなものに、四方を塞がれており、外とは無縁の国でした。そこでは、その空の壁は神と拝められていました。自分達を守ってくれるものだと。故に、自分達も何かをお礼として捧げなくてはならないと、誰かが言い始めました。その時から、捧げ者と呼ばれる者が、ある一定の時期になると、その国から一名選ばれます。最も勇気のある者。魔獣を沢山狩った者が、選ばれます。選ばれた者は、捧げる当日になるまで、ありとあらゆる自由が約束されます。ですが、当日。捧げられる日、選ばれた者は、自らの足で空の壁へと足を踏み入れなければいけません。捧げの儀式、それによって空の壁はこれからもこの国を守ってくれると。そして私は、捧げ者になる予定でした。ですが、ユウシンという魔王に助けてもらい、連れ出してもらい、私は今ここにいます。」


私は抜け出した。でも、勢いで抜け出した訳では無い。ちゃんと理由があって、夢があったからだ。


「…ふぅ。はっきりと言います。私は幸せになりたい!人生を謳歌したい!夢を叶えたい!魔法が使いたい!やりたい事をやって、なりたいものになりたい!だから!」


考えてみれば、昔から私が望んでいたものは今も変わらないものだった。

一人ではどうしようもない、誰かに助けとほしいとずっと思ってた。そしてユウシンがやってきて、助けてもらった。


その後、魔王城で一人だった私だが、メヴィアが友達になってくれた。私が昔も今も望んでいるのは、ずっと変わっていなかったんだ。

捧げ者として視られ続け生きてきた。誰かに助けてもらってばっかりの人生だった。


私は、人生という物語の中で、一度も自分の人生で主役になることはなかった。


「だから、私に…自分で幸せを掴めるだけの、力を貸してください!」


私は空に吠えた。私は欲張りだ。これからの人生、自分が主役で、周りが羨むほど輝いて生きていたいと本気でそう思ってる。

姫になりたいという夢は、形だけとはいえ叶っている。だが、まだまだ足りない。もっと掴みたいものがある。魔法もそのうちの一つだ。


「その願いぃ、その幸せに対する素直さぁ、私好みかもしれないですぅ」


そして、そんな強欲な叫びが、空間と空間を繋ぐことになった。


最後まで読んいただきありがとうございます。

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