27 魔法領域
白の七番、魔法領域と呼ばれるその部屋は、ありとあらゆる部屋があるこの魔王城の中でも特に異質さを感じさせる空間だった。
「これは…一体どういう風に作ればこんな部屋を…」
「凄いでしょ。王は普段しっかりしてない様にみえるけど、魔法を使わせたら本当に凄いんだよ。この部屋も王の魔法で作られた部屋だ。」
メヴィアにそう言われるも、私にはとても生物が作ったとは思えない部屋だった。
空をみれば、雷雲に雨雲、更には燃えている雲、この世のものとは思えない光景があった。ただ、雷も雨も炎も、目に視えるだけで、それらを感じさせるものはなかった。というのも、時々空が光るが音もせず、眩しくもない。雨も降ってはいるが、雨粒が身体を通り抜けていく。空を燃やしている炎も、ただ燃えているだけで、熱さなどは感じなかった。
だが、それだけではない。左右辺りを見渡せば、見たこともない花や木々が生い茂っており、下は、地面が凍っており所々に水溜まりを作っていた。更に、地面の氷には中があった。氷の中を、黒い何かと光り輝く何かが#蠢__うごめ__#いている。
「まるでここだけ…別世界になっているみたい…」
「そう思ってくれていい。ここは、王が自身の魔法で作った全くの別世界。魔法をより身近にするために作られた、全ての魔法を詰め込んだ空間。故に魔法領域と呼ばれている場所だ。」
「心を不安にさせる不気味さ、でも、それ以上に、なんて幻想的な場所…私、この場所が結構好きかもしれません。」
「おお、やっぱレンカとは気が合うね。私もこの部屋が好きだ。滅茶苦茶で、訳の分からない部屋だが、これ程に自然を感じさせてくれる場所も中々ないからな。」
不思議だった。雷はうるさく怖く、雨粒は冷たく、炎は熱いはずなのに、それを感じない空。どのような木々で、名も知らない花ばかりなのに、心を落ち着かせてくれる植物達。身体を冷やすはずの氷と水の大地は、ただ綺麗に輝いているだけ。氷の下にいる黒い何かと光り輝く何かに関してはよく分からないが、どれもこれも偽物だと分かっているのに、私の身体は自然を感じていた。
「ですが、一ついいですか?」
「ん?なんだ?」
「この、氷の下にいる生物?のようなものはどう呼べば?」
「あぁ、そいつらが光と闇の魔法を取得するにあたって、仲良くしないといけない奴らだよ。光と闇は他とは違ってな、契約魔法使いなんだ。」
また知らない言葉だった。けど、段々と言葉的になんとなく分かってくる。
「契約魔法使いとは、約束のようなものをするのですか?」
「そう。そいつらと触れ合って、信頼関係を高める。そしたら力を貸してくれるかも?ってやつだな。」
「ふ、触れ合う…触れて大丈夫なんですか?この子達って。」
「問題ない。こいつらにまだそういうことをする意思は宿っていない。なんせまだ生まれてもいない状態だからな。」
前言撤回。言葉的に分かってくるは嘘でした。
「あの…聞き違いですか?今生まれてくる前って聞こえたんですが…」
「ん?そう言ったよ?こいつらは卵のような状態だ。光ってるやつが天使になる前のやつ、黒いやつが悪魔になる前のやつ。本当の姿は、契約者にしか視せない恥ずかしがりなやつらさ。どうやってるかは知らないが、契約者以外の眼には何か蠢いているものにしか視えないようになってる。気になるなら、頑張って契約してみたらいい。」
「…初耳だらけです。天使と悪魔までいるんですね…本の世界だけだと思ってたけど、まさかこの二体までいるなんて驚きです。」
「ああ、その話はまだしてなかったか。じゃあついでに話しとこう。この世界には四つの空間があるんだ。一つは私達が住むこの空間。#命界__めいかい__#、第三層と呼ばれている場所だ。そして、#獄界__ごっかい__#、悪魔が生活している第一層。それに、#魔界__まかい__#、自然生命体である精霊や妖精の住処の第二層だ。最後に、#天界__てんかい__#、天使達の楽園である第四層。同じ惑星にいるけど、別空間の存在。普段はお互い視えないが、呼びかけて向こうに気づいてもらい、こちらの空間に来てもらって力を貸してもらう。それが魔法だ。」
それは知らなかった。その者達の存在は本で知っていたが、実在するとも思っていなかったし、まさかそれぞれが住む空間があるなんて思いもしなかった。
「話の規模がまさに異次元過ぎて混乱してしまいそうですが、とりあえず気になったことがあるので一つ、別空間にいるのに呼びかけて聞こえるものなのですか?呼びかけてと言ってましたが…」
「聞こえる。そこは問題ないよ。でも…そうだな。分かりやすく言うとほら、悪魔の囁きって言葉があるだろ?あれと同じさ。悪魔は人間の弱みや欲望に反応してやってくる。そしてそれは、それを利用して楽しいことができると分かっているからやってくるんだ。悪魔の囁きに負けた者は間違った行動をする。そしてそれを見て悪魔は笑う。どう呼びかけ、自分が何を望むのか。相手に興味をもってもらえるかどうか。強く呼びかけ、強く望めば、それに気づき反応してくる者は必ず現れる。先程、魔法はできるまでやると言ったが、正しくは気づいてもらえるまでやる、だったな。これが、魔法の真実であり取得方法だ。そして、この魔法領域は声が届きやすくなっている特殊な場所だ。それぞれの空間と極限まで近づけたのがこの部屋だ。」
「…なるほど。だからこんなにも色々なものが混ざった部屋になってるのですね…よし!まずは呼びかけからですね!頑張ります!分かりやすく説明してくださり、ありがとうございますメヴィア!」
「おーーう、とはいえ私がなにかしてやれるのはここまでだ。後はレンカ次第。まあ何かは反応してくれるはずだ。頑張れー」
魔法領域、この場所で遂に、私の魔法取得訓練が始まったのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ご評価、ご感想、ブクマなどあればよろしくお願いします。




