25 魔法教育⑴
その日、私はメヴィアと朝早くから、彼女の部屋で、ある約束をしていた。
「おはようございますっメヴィア!ついに!この日がきましたね!」
魔王ユウシンとの一件以降、私と彼女の距離はかなり縮まったと思う。今では朝からこんな感じで会いにいっても
「ん、おはようレンカ。凄い盛り上がってるな。」
と、こんな感じで凄く友達らしい関係になってきた。それはそうと、彼女の言った通り私は今、非常に心が昂っている。
それは何故か?理由は単純明快である。
「当たり前です!ようやく、ようやく!魔法に関わることができるのですから!しかも扱えるかもしれないなんて…あぁ夢みたい…」
そう、今日メヴィアとした約束とは、メヴィアに魔法教育をしてもらえるというものだった。というのも、あれは数日前のことだ。
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「…魔法を教えてほしい?レンカ…どうしたんだい?突然。」
とぼけた声でそう答えるのはユウシンだ。
「とっ、突然?!ここに!私が魔王城に来る前に言ってたじゃないですか!すぐに扱えるようになるよって!それなのに…三週間近く経ってもあなたからの連絡が無いから、私は自分で言いに来たんですよ!」
私は少しだけ怒っていた。ここに来る前、故郷の国から転移する時、ユウシンは確かに私の教えてという願いに、向こうで教えると言った。
当然私も、ここに来てすぐにとはいかないだろうとは思っていた。メヴィアとユウシンの件もあったし、もう少し時間が必要だろうと。
「ええ、分かっていますとも。あなたも忙しいのでしょう。ですが!何にも報告無しとはどういう事です!もしかして…と思って言いに来てみれば突然?!ユウシン!あなた私との約束忘れていたでしょ!」
魔法を教えるとなれば準備は必要だろう。だから私は待った。メヴィアと魔王城を二人でうろつきながら、遊びながら、話しながら、そして何もおきることなく、楽しい三週間だけが終わった。
「あぁ…そういえば、たしかに。そんな約束を、したね。色々あったから忘れてしまっていたよ。申し訳ない。」
「ユウシン、あの一件から何を学んだのですか…」
反省はしている。それは凄く伝わってくる。けれど、言ったきりそれ以降は知りませんの癖が治っていないのはどうなのだろうか。
それに、この感じをみるに、他の住人達とも同じようなことになっているのではないかと心配になってくる。
(メヴィアや私みたいに、あれ?あの件どうなった?ってなっている人は結構いるんじゃ…いや、考えるのはやめよう。今は私のこと。)
嫌な想像をしそうになったところで、私は考えるのをやめた。そしてそれと同時にユウシンが話す。
「よし…事情は分かった。魔法を教えてほしいとのことだったね?」
「うん…つかいたい!できる?」
「もちろん、感覚さえ掴めれば、その後は楽にできるはずだよ。魔法を扱えるようになるまでの過程は難しいけれど、魔法自体は難しいものじゃない。」
「…ん?どっちなのそれ?」
難しいのか、難しくないのか。よく分からないはっきりとしない答えだった。
そもそも、ユウシンがどこまで本気で考えて言ってくれているのかも私には分からない。相手のことを思ってずっと黙っていたり、普通に忘れていただけだったりと、彼の話をどこまで信用するべきなのか。
「あの、私でも扱えるものなのですか?魔法って。」
とはいえ、考えたからといって答えのでる問題でもないので、私は本題にうつった。
「…問題ない。魔法は誰でも関わることができ、扱うことのできるものだよ。」
「誰でも…では、魔法使いとはこの世に結構いるものなのですか?私の故郷ではいませんでしたが…」
「かなりいる。そして、レンカの国についてだが、君の故郷は魔法が発展する環境になかったからね。狩りが主に行われていて、それを競い選ばれし者を決める、だったか。魔法が発展するような場所ではなかった。そしてそれに加えて空の壁により、余所者が関係を持つこともできなかった。だから、魔法が珍しく思えるのだろうけど、魔法自体はそんなに珍しいものではないよ。」
「なるほど…」
納得がいった。簡単な話、私が田舎者すぎたということだろう。魔法に一喜一憂していたのを思い出すと、凄く恥ずかしくなってくる。
「さて…とりあえず、この世界の魔法については話せたかな。」
「はい、理解できました。絶対に魔法を扱えるようになってやろうと、私は今凄く燃えています。」
「それはいいことだね。そのやる気があればすぐだよ。ただ…少し悩んでいることがあってね。」
「…悩み?なんです?」
まさか、今更になって教えるのを辞めようか迷っているんじゃないだろうかと一瞬思うが、彼が迷っていたのは全然別のことだった。
「いやね、魔法に関してはエルフであるメヴィアが一番詳しくて上手いんだよ。だから、教えるとなると僕よりメヴィアの方がきっといいと思うんだけど…どうだろう?ここ最近メヴィアと凄く仲良いだろう?悪くない話だと思うんだけど。」
「へーー、そうなんですか。私はメヴィアが大丈夫ならそれでも構いませんが…」
「よし、だったら今メヴィアは酒場にいるから聞いてみるといい。きっといい返事をもらえるはずだ。」
「分かりました。では、メヴィアが大丈夫そうなら彼女から教わることにします。もし無理そうだったらまたここに戻ってきますね。」
話はまとまった。私としても、そちらの方が都合も良くて助かる。そうして私は、ユウシンの自室から酒場へと転移し、彼女に会いに行った。
「おっ!レンカじゃねえか。用事はすんだのか?」
酒場に転移すると、偶然メヴィアの座っている机の近くで、彼女はまた緑の飲み物を飲んでいた。本当は今日も彼女と魔王城をうろつく予定だったのだが、私がユウシンに用があるということでお預けだった。
「はい、ユウシンに対する用事は終わりました。ただ、メヴィアに頼み事ができてしまい、少しいいですか?」
「頼み事?私で解決できることなら、力になるけど…一体なに?」
「それが…私、魔法を扱えるようになりたいから教えてとユウシンに頼んでいたのですが、彼が言うに、魔法を教わるならメヴィアの方がいいと言われたもので…なので、大変だとは思うのですが、私に魔法を教えてくださいませんか?」
「なんだ、そんなことか。それなら全然いいよ?」
持つべきものは友だと、私はこの時思った。
「本当ですか?!ありがとうございます!」
「ああ、魔法を教えるぐらい問題ないさ。ただ、一から教えるとなると色々準備が必要だ。今日中に揃えておくから、明日の朝からでいいか?」
「はい!全然!むしろ明日から学ばせていただけるなんて最高!です!」
「学ばせていただくって…ふっ、ふふふ。そんなかしこまらなくたっていいよ。いつも通り、いつも通りでいい。」
彼女はそう言うと、緑の飲み物を一気に飲み干し
「んじゃ、用意してくる。朝は…そうだな。レンカが用意できたらいつでも転移してきてくれ。それまでにはまとめておくから。」
「はい!分かりました!早寝早起き、頑張ります!明日から、よろしくお願いします!」
「やめてくれやめてくれ。もっと気楽でいいってば。ま、そういうことだ。今日はこの辺で。じゃあまた明日なレンカ。」
「あっ、すみませんつい…はい!また明日ですメヴィア!」
彼女と別れ、私も自身の部屋へと転移する。
魔法を教わる。それは、今まで読んできたどの本よりも、幻想的な現実だった。
「魔法かぁ…楽しみだなあ!」
こうして私は、生きてきた中で一番の楽しみの感情を胸にしまい、明日を待ったのだった。
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