14 本番会議
作戦を実行する当日の朝、私は再びメヴィアの部屋に行き、二人で作戦の再確認をした。
「おはようレンカ。」
「おはようございますメヴィア。」
結局昨日は夜遅くまでメヴィアと作戦会議をしていた為、こうして朝早くに出会うと、昨日の続きのように思える。
こうやって次の日にも簡単に気楽に会える相手なんて何年ぶりだろう。国にいた時は、選ばれた者になった瞬間から皆とは壁を作っていたから、凄く懐かしい気持ちになる。
「じゃあ早速向かおうと思っているが、怖さに対する心の準備はできているか?」
「と、当然!も、もう心は限界突破ですよ!」
「震えまくってんじゃん…もうちょい落ち着くまで待つか?」
「い、いえいえいえ!だ、大丈夫ですよ!行きましょうメヴィア!」
私は震える手で魔石を握り、部屋に移動するために必要な色が書かれた紙をみつめた。この魔王城での移動は、広すぎるが故に転移魔法が使われる。
その際に必要なのが色だ。各部屋には、ユウシンによって決められた色がある。そしてその色を転移魔法を発動してくれる魔石に伝えることで、目的の場所へと行けるのだが、その量がとにかく多い。
ただの色だけじゃない。例えば、今回の緑二番というのは、緑色の部屋、その色を名付けられた二番目の部屋という意味で、確認できてるだけでも、各色それぞれ百番は名付けられている。
まさにとんでもない数の部屋がこの魔王城には存在しているのだ。しかも、それが全てではないというのだから、途方もない話だ。最早、なんでもありのような城だ。そして今回、私達が向かう緑二番の部屋は、そのなんでもありを詰め込んだような部屋で、少し怖い。
その緑二番の部屋を知ったのは昨日、作戦会議をしていた時のことだ。
「緑二番。朝に必ずユウシンが一人で行く部屋…ですか。」
「そうだ、王は毎朝この部屋に行く。そして、基本この部屋は王しか入らない。」
メヴィアが教えてくれたのは、ユウシンの一日の行動だった。ユウシンの隠し事を暴く。それが目的の私達には、ある絶対に必要な前提条件があった。
それは、絶対に邪魔がはいらない場所で二人きりの状態であること。怪しい話をするわけではないが、他の者がいたら話を逸らされる可能性を考慮し、できる限り二人きりの状態での作戦遂行が望ましいということで、メヴィアがこの時に備え事前に調べてくれていたユウシンが一人になる時間帯を狙うことになった。
まずは朝、朝の時間帯でユウシンが一人なるのは、この緑二番の部屋にいる時だけということらしいのだが
「この緑二番という部屋には、何があるのですか?」
毎朝行くということは、この部屋にはそれだけ何かをする用事があるからなんだろうが、ユウシンが毎朝してそうなことなんて想像もつかない。むしろ、そういった事を嫌いそうな印象があるのだが
「この部屋は、竜の花園って呼ばれている場所だ。分かりやすく言えば、王が飼っている竜が、沢山いる部屋だと思ってくれたらいい。」
「えっ…」
「王は毎朝、竜に餌をやりに行くんだ。そしてこの時間帯は誰も王の近くにはいない。だから私達はこの時間帯を狙う。」
「いやいやいや!えっ?本気で言ってます?」
聞き間違いだろうか。今、竜のいる部屋で、餌やりをしているユウシンから情報を聞きだせと言われた気がしたのだが。
「本気も何もこんな絶好の機会ないだろ?誰もいないんだぜ?」
メヴィアはそう言うが、そりゃあそうだろう。誰が好き好んで、竜の餌場に朝から行くというのだろうか。それこそ、餌になりたいやつか、餌やりのユウシンくらいだろう。
「大丈夫だって!たしかに獰猛で肉食だけど、王が近くにいるわけだからさ。それに、離れたところからだけど私もいる!」
「獰猛で肉食って…絶対に駄目なやつじゃないですか!しかも!餌の時って一番危ない時間帯!私食べられちゃいますよ!嫌ですよそんなの!」
「本当に大丈夫!安心してレンカ!だって竜は小さい肉には興味が湧かないから!なにかあっても、匂いを嗅がれるぐらいだって!あいつらは同じくらい大きいやつにしか興味がないんだ!」
「それを聞いて安心できる人いませんよ!」
本当に安心させる気があったのか。気休めにもならない情報である。匂いを嗅がれるということは、それだけ近い距離に竜がいるということで、最早それは危機的状況であり、安心とは程遠い状況だろう。だから私は断ろうとしたのだ。断ろうとしたのだが
「…駄目?ここまで話して…駄目?ここまで、話したのに?」
「ぐっ!そ、その言い方はずるいですよ!」
「じーーーー」
「な、なんです。そんなにずっとみられても嫌なものは嫌ですからね!」
昨夜は、こんなやり取りばっかだった。そして現在。
「ふぅ。じゃあ行きますよメヴィア。」
「ありがとうレンカー!いざしゅっぱーつ!」
結局私は、メヴィアの作戦を断ったのだが断りきれず、この作戦を実行することになった。
「緑二番に転移。」
握っている魔石を口元に近付け、そう魔石に伝えた直後、二人の足元に緑色に光る魔法陣が出現し、私達を緑二番、竜の花園へと転移させたのだった。
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