12 メヴィアとレンカ
メヴィアに聞いたところ、この魔王城を全て知っているのは王、つまりユウシンだけだという。
「でも彼は、自分にも分からないところはあるって…」
図書室にいた時、ユウシンは自分でもこの魔王城の全ては分からないと言っていたはずだが
「ああ、レンカにはそう言ったの?あれは嘘だよ。いや、嘘っていうか…王はたまに何も考えてない言葉を適当に吐く時があるから。多分それだな。あっ!それって嘘ってことになるのかな?」
手に持った容器一杯に入った緑色の飲み物を一気に飲み干し、豪快に机に置いたかと思えば、メヴィアは軽い笑みを浮かべ私にそう言ってくる。
「そ、それも嘘なんですか?」
明らかに身体に悪そうな、粘りの強い緑色の飲み物については今は触れない。結構な勢いで飲んでいたのにも関わらず、容器に飲み物が所々ひっつくような感じで残っているという、飲む吸引力も粘り気もどちらもおかしい光景を目の当たりにしたが、一々聞いていると、この場所の情報収集という本来の目的が進まなくなりそうなので、またの機会にする。正直、どういった飲み物なのか物凄く気になっているが我慢だ。
「嘘だね。まあ私も直接本人に聞いたわけじゃないからね。憶測だけど。適当なのか本当なのか、隠さないといけない理由があるのか。ただ、王は嘘をついていると私は確信している。」
「なぜ、そう言いきれるのですか?」
「エルフの、風の勘だよ。」
「風の勘?ですか?」
憶測なのに確信していると言ったメヴィアは、その根拠は風の勘だと言った。
「そそ、信じられないかもしれないけどさ、私、風と凄い仲良しなんだよね。もう…凄い…どれぐらいかって言ったら大親友ぐらい。風の姿もみえるんだよ?そして操ることもできる!凄いっしょ。」
「風と…仲良し?姿?」
緩い笑みを浮かべながら身体を左右に揺らしながら話しているメヴィアの言葉は、凄く冗談のように聞こえてくるが、態度とは裏腹にメヴィアの目はすごく真剣で、だから困ってしまう。からかっているのか、真実を話しているのか、どう話をうけとったらいいのかが分からない。
「そー、風と仲良しだったらさあ、分かるんだよね。何が分かると思う?」
「いや全く。想像もつかないです。」
「だよねぇ。えへへへあはは!」
「メヴィア…酔ってますか?」
メヴィアは顔を横にふる。本当に困った。このエルフの本当の感情が分からない。表情も声音もすぐに変わる。それも驚くほど自然にだ。不自然さはなく、嫌な気もしない、だが、絶対にふざけているとだけ伝わってくるこの感覚。
「いやいや、この程度の#緑魔水__りょくますい__#じゃ酔わないよ。本当なんだって。」
「緑魔水?」
「あれ?レンカ、この飲み物初めて?飲んでみる?おいしいよ?まとわりつくような、口の中を溶かすような、この食感が癖になるんだよね。」
「まとわりつく…口の中を溶かす…飲み物の味の表現として初めて聞きますね。遠慮しときます。」
この飲み物を提供してくれている方に物凄く失礼かもしれないが、これほど拒絶反応がでる飲み物は初めてだ。
飲んだことがないので、一口くらいならと一瞬思ったが、まとわりつく、溶かすような食感と聞いてもう駄目だった。
「と、話が逸れました。それで、風と仲良しだったら何が分かるのですか?」
この飲み物は気にしないと決めていたのに、衝撃が強すぎると人は無視できないらしい。これからの自分が少し心配になる。
「うーんとね。ちょっと聞いててほしいんだけど。風ってのはね、通った道の記憶を忘れないの。風が通った道を#風道__かざみち__#って言うんだけど。本当は通るだけなの。ただ、そこに生物がいた場合、そいつの中を通り抜ける時に一緒にその生物の記憶とか生命体としての情報も運んでしまう時があるんだ。」
はっきり言おう。もう既によく分かっていない。何を言っているのか全く何一つ理解できていない。でも、聞いていてほしいと言われたので、今は黙って一応頷いておく。そしてメヴィアは続けて話続ける。
「そして、エルフは風と仲良しだからね。何かしらの情報を持っている風と出会った時に、その情報を共有することができる。ここまで言えば分かるだろう?」
「…今の話のほとんどは信じられませんでしたが、仮に本当だと考えたなら大体予想はつきました。ユウシンの中を通った風から、何か嘘に繋がる情報を手に入れたということですか?」
「正解!まあ風の情報を知れるのが私だけだから意味ないんだけどな。誰も信じないし。正直レンカも信じられないだろ?」
「…申し訳ないのですが、正直。」
絡むのも初めてなのに、流石にこの話を最初から信じるのは無理だ。ただ、嘘を言っているようにも思えない。なので、試すことにする。
「メヴィア、ユウシンのところに行きましょう。」
「えっ?」
「私も全然分からないことばかりですし、この際本人に直接全部聞いちゃいましょう。そこにメヴィアも来てくれたら、メヴィアの能力も本当だと証明できるかもしれませんし。全部解決です。」
「いやいやいや、王は私達全員に適当言ってる人だぞ?今更聞いたところでまた適当言うだろうさ。正直に答えるわけがない。」
確かに、普通ならそうだ。でも今は条件と状況がとても良いから分からないと私は思う。何故なら
「大丈夫です。私、この魔王城のお姫様ですから。ユウシンもそう言ってましたし、姫である私の質問に、嘘はつけないはずです!」
ユウシンが適当に答えるようなら、メヴィアの力の証明となり、私は彼女を信じられる。そしてユウシンが真実を答えるなら、私とメヴィア両方の疑問が解決する。
完璧な作戦だ。こうして私達は、完璧な作戦をもって、ユウシンから色々と情報を聞きだすことに力を合わせることになった。
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