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歪んだ輪舞曲(ロンド)〜鉄の処女と白銀の駿馬〜 ――私の婚約者(馬車)が、元婚約者の婚約者(馬)と不倫していました。※乗れません  作者: 山田りく
1章 私の婚約者(馬車)が、元婚約者の婚約者(馬)と不倫していました。

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夜会の狂乱(婚約破棄テンプレ)

数日後、華やかなる侯爵家の夜会。大ホールの中央で、エドワードが朗々たる声で宣言した。


「マリアンヌ! 君との婚約を破棄する!」


 一瞬にして静まり返る会場。


『……エドワード様、一体どういうことですの?』


 脳内に直接響くマリアンヌの冷ややかな声に、エドワードは腕を組んだ。


「ふん、君がアレクサンダーのトラクションに溺れたんだ、僕だって君への義理はなくなったさ! 僕はついに、真実の愛を見つけたんだ! 紹介しよう、最高級二輪軽馬車の『シャルロット』だ!」


 エドワードが劇的に手を払うと、大扉が開き、小ぶりでスタイリッシュな二輪の新型馬車がスポットライトを浴びて鎮座した。


 周囲の貴族たちは一斉に白目を剥いた。馬車から婚約破棄されて、別のタイプの馬車に乗り換えただけだった。


 その時、ホールの窓を木端微塵に叩き割り、アレクサンダーが乱入してきた。


「ブルルルルッ!(そこまでだ!)」


「ちょっとアレクサンダー、待ちなさいよ!」


 ドレスの裾をボロボロにしてセレナが追いかけてくる。


 アレクサンダーは前足で地面を激しく蹴った。


「ブルルルルッ!(セレナ、お前との婚約もここまでだ! 婚約破棄を宣言する!)」


「な、なんですって!?」


 セレナの顔が怒りで紅潮する。


「き、き、勘違いしないでよね! 私だってあなたの繋ぎの角度に飽きてたんだから! でも、一体誰に乗り換えるつもりなのよ!」


 アレクサンダーは、エドワードの隣にある新型二輪馬車シャルロットを情熱的に見つめた。


「ブルルッ(俺は、あの軽量ボディのシャルロットと真実の愛に目覚めた! あの軽快な車軸を、俺のホースパワーで限界まで加速させてみたい!)」


『ちょっと待ちなさいよ、アレクサンダー!』


 マリアンヌのドアノブが激しくガタついた。


『私という四輪の包容力がありながら、あんな二輪の小娘に乗り換えるというの!?』


「な、何よその馬車! 私よりあんな車輪が2つしかない女の方がいいっていうの!?」


「僕のシャルロットに手を出すな、家畜め!」


 エドワードがシャンパングラスを剣のように掲げる。


「馬車が馬に浮気されて、人間が馬車に乗り換えて、馬が別の馬車に……?」


 周囲の貴族たちは脳の処理が追いつかず、泡を吹いて次々と倒れていった。


 ハンス執事は静かにポケットから遺書を取り出し、天井のシャンデリアを見上げた。

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