ホワイトボードの修羅場(そして一旦の幕引き)
会議室へ移動したハンスは、青白い顔でホワイトボードにマーカーを走らせた。『エドワード⇄セレナ(ツンデレ口喧嘩密会)』『マリアンヌ⇄アレクサンダー(深夜の超高速牽引リンク)』という昼ドラ並みに複雑な相関図を描き終え、新しい胃薬をトリプルスコアで飲み込む。
セレナがホワイトボードをバシバシ叩いた。
「見てみなさいよエドワード! 全てはあなたの女々しさが原因なんだからね!」
「言いがかりはやめろ、セレナ! 君が寂しそうな顔で僕を見るからだろ!」
「ブルルルル!(俺の背に乗れ、マリアンヌ! ※乗れません)」
窓の外から、マリアンヌがドアノブをカタカタ鳴らした。
『そうよエドワード! 私はアレクサンダーの野生の牽引力に魂を奪われたの! あなたがセレナ様と朝帰りするなら、私はもう二度とあなたを中に乗せないわ!』
ハンスの胃壁がパキッと音を立てて砕け散る感覚がした。
ハンスはホワイトボードをバンッ! と叩いた。あまりの気迫に、全員がビクッと動きを止める。
「皆様、静粛に。これ以上の議論は、ハンスの『命』に関わります。お引き取りを」
ハンスの凍りつくような笑顔に、流石の4者も言葉を失った。
「ふ、ふん! 今日はハンスの顔を立ててあげるわ!」
セレナはフイと顔を背け、アレクサンダーの曳き綱を強引に引っ張った。
「勘違いしないでよね、べ、別にあなたの顔なんて見たくないんだから!」
「ブルルル……(マリアンヌ、また深夜に厩舎の裏で)」
『ええ、アレクサンダー……待っているわ……』
「待て! マリアンヌにアイコンタクトを送るな!」
エドワードが叫ぶが、マリアンヌはブレーキを固く閉ざし、そっぽを向いたままだ。
お互いに全く納得はいっていない。お互いにフイと別々の方向を向き、泥沼の四角関係は最悪の火種を抱えた状態で、一旦の幕引きを迎えた。
ハンスはその場で、静かに膝から崩れ落ちた。




