納得できる言葉
「納得できる……言葉……?」
ゼツはきょとんと目を丸くした。
自分の軽はずみな発言でいつもの拳が飛んでくる覚悟をしていただけに、真直ぐに自分を射抜くリーンの真摯な眼差しに、一瞬言葉を失ってしまう。
「そうよ。精霊の愛の延長でも、その場のノリや勢いでもなくて……あなたが本当は何を考えていたのか。あなたの言葉を聞かせて」
リーンはベッドの縁に腰を下ろし、どこか祈るような面持ちでゼツを見つめた。
真剣なリーンの表情に引き締められ、ゼツは深々と息を吐くと、頭をかきながらゆっくりと部屋の床に腰を下ろした。
「……正直に言うよ。最初はね……きゅーちゃんと僕の二人だけで過ごしたかったんだ」
「うん」
「君がついてくると言った時、本当は……少し邪魔だと思った」
「うん」
「見えぬ精霊への愛を貫く僕の世界に、君はいらないんじゃないかって……そう思っていた。でも、きゅーちゃんは僕じゃなくて君を求めた」
ゼツは苦笑交じりに遠い目をした。
「君が好きなんだと悟ったよ。だから、きゅーちゃんが幸せなら、僕は我慢しようって……自分に言い聞かせていたんだ」
「……それで?」
「でもね……違ったんだよ」
ゼツは自分の胸にそっと手を当てた。
「我慢なんかじゃなかった。三人で過ごす時間は、僕が今まで生きてきた中で……一番楽しかった」
「どう思ったの?」
「一人と一匹じゃない。二人と一匹だったから、あんなに温かかったんだ。……いや、それだけじゃないな。街を歩いて、くだらないことで喧嘩して、君が呆れ顔で僕を引き戻してくれる……そんな君と二人の思い出のすべてが、僕にはたまらなく愛おしかったんだ」
言葉を紡ぐうちに、ゼツの瞳に確かな熱が宿っていく。
「きゅーちゃんはきゅーちゃん。君は君だ。僕の精霊への愛に嘘はない。だけど……僕は『見えぬ精霊』を愛することで、ずっと自分の孤独から逃げていただけだったのかもしれない」
ゼツは照れくさそうに、けれど誤魔化さずにリーンを直視した。
「その孤独を本当に埋めてくれていたのは……僕の隣で、ずっと呆れながら付き合ってくれていた君だったんだよ、リーン」
「……っ」
部屋の中に静かな時間が流れる。
リーンは目を見開いたままゼツを見つめ、やがてその目元をふっと緩めた。
「……まったく。最初からそう言いなさいよ、このバカゼツ」
「り、リーン……?」
「うん。……合格」
リーンは頬をほんのり赤く染めたまま、心底愛おしそうにクスクスと笑った。
「その言葉なら……ちゃんと納得してあげるわ」
「じゃあ……! 結婚してくれるのかい!?」
「それはまだ早いわよ! 順序ってものがあるでしょ!」
そう言いながらも、リーンの口元には隠しきれない幸せな笑みが咲いていた。
窓から差し込む朝の光の中、二人を祝福するように、どこからともなく小さな風の微精霊たちが楽しげに踊り始めていた。




