↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歪んだ輪舞曲(ロンド)〜鉄の処女と白銀の駿馬〜 ――私の婚約者(馬車)が、元婚約者の婚約者(馬)と不倫していました。※乗れません  作者: 山田りく
4章 僕の愛した精霊と、僕の大切な相棒

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/61

愛の結晶


「パ、パ……マ、マ……っ♪」


 光の粒子を淡く散らしながら、きゅーちゃんは二人の顔を愛おしそうに見つめていた。その体はすでに透き通り、今にも夜風に溶けてしまいそうだった。


 そして、最後に二人へ向かって、心の底からの感謝を込めて——


「パパ……ママ……ありが……とう……っ♪」


「「……っ!?」」


 二人が息を呑んだ瞬間、きゅーちゃんの体はまばゆい光の粒となって弾け、夜の部屋を優しく包み込んだ。


 そして、静かに空へと溶けて消えていった。


 あとに残されたのは、先端の宝石が完全に砕け散った、古びた一本の杖だけだった。


「きゅー……ちゃん……」


 ゼツは力なく膝をつき、呆然と天井を見上げていた。


 涙でボロボロの顔をぬぐいもせず、ぽつりと呟く。


「……なぁ、リーン。どういうことなんだ……? なんであの子は、最後に僕たちのことを『パパ』『ママ』って呼んだんだ……?」


 あまりの出来事に思考が追いつかないゼツに、リーンは目元の涙をそっと拭い、静かに口を開いた。


「……あの子はね、ただの擬似精霊だったのよ」


「擬似……精霊……?」


「そう。あの杖の術式は、二人以上のマナが重なることで初めて起動する仕掛けだったの。……あの夜、あなたのマナで溢れてた杖に、私がほんの少しマナを足したでしょ? あなたの熱く膨大なマナと、私の繊細なマナ……その二つが奇跡的に混ざり合って生まれたのが、きゅーちゃんだったのよ」


「……二人のマナが……混ざり合って……?」


 ゼツはハッとしたように目を丸くし、自分の手と、リーンの顔を交互に見つめた。


 そして、何かがカチリと音を立てて繋がったような顔になり——


「……つまり!!」


 ゼツはバンッと力強く立ち上がり、涙を吹き飛ばして叫んだ!


「あの子は!! 僕とリーンの『愛の結晶』だったということかーーーーっ!?」


「はあぁぁぁぁぁっ!???」


 静かな部屋に、リーンの叫び声が響き渡る。


「な、ななな何言ってるのよこのバカゼツはーっ!! 『マナが混ざった』って言ったでしょ!? 変な言い方しないで!!」


 リーンの顔は一瞬で耳の先まで真っ赤に染まり、頭から湯気が出そうなほど取り乱している。


 しかし、ゼツは真剣そのものの表情で言葉を重ねた。


「ふたりのマナが合わさり、ひとつの命(擬似精霊)を育み、最後に僕たちを『パパ』『ママ』と呼んだ……! これを『愛の結晶』と言わずしてなんと言うのだリーン! つまり僕たちは、実質的にもう夫婦も同然……いや!」


 ゼツはビシッと真っ直ぐにリーンを指差し、感動に満ちた真剣な眼差しで言いのけた。


「よし、結婚しよう!!」


 いつものように「バカ言わないでよ!」と怒鳴り散らすか、拳が飛んでくると思っていた。


 しかし――


「……っ」


 リーンは顔を真っ赤に染めたまま、俯いてギュッと唇を噛み締めた。その手はかすかに震えている。


「……リーン?」


「……嬉しい」


「え……?」


 思いがけない小さな呟きに、ゼツは目を丸くした。


「嬉しいわよ、ゼツ。……でも、ダメ」


 リーンはゆっくりと顔を上げた。その瞳には、誤魔化しのない真剣な光が宿っていた。


「私は……ちゃんと『納得できる言葉』を聞きたい。精霊の愛の延長とか、勢いとかじゃなくて……あなたの本当の言葉を」


 真摯なリーンの眼差しに射抜かれ、ゼツは息を呑む。


 部屋を包む静寂の中、二人の止まっていた時間が、静かに動き出そうとしていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。