↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歪んだ輪舞曲(ロンド)〜鉄の処女と白銀の駿馬〜 ――私の婚約者(馬車)が、元婚約者の婚約者(馬)と不倫していました。※乗れません  作者: 山田りく
4章 僕の愛した精霊と、僕の大切な相棒

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/55

増えていく日常

「……ゼツ、ちょっと買いすぎじゃない?」


 宿屋への帰り道。両手に大量の荷物を抱えて青息吐息のゼツを見上げ、リーンが半眼で呆れていた。

「何を……言うんだリーン……! これらはすべて、きゅーちゃんとの快適な旅生活に必要な『至高の逸品』たちだぞ……!」


 ゼツの腕からはみ出しているのは、高級シルクで仕立てられた手のひらサイズのミニクッション、精霊用の最高級磨き布、そして謎の特製ミニチュア家具セットだった。


「クッションは分かるとして、そのミニチュアの椅子とテーブルは何なのよ。どこで使うの」


「宿屋のテーブルの上にセットするんだよ! これできゅーちゃんも、僕たちと同じように食卓を囲むことができるじゃないか!」


「……発想が完全に過保護な親なのよ」


「きゅ~♪」


 当のきゅーちゃんは、ゼツが抱えるミニクッションの上にちょこんと乗り、乗り心地を確かめるようにぷよぷよと弾んでいる。どうやらかなりお気に入りのご様子だ。


「ほら見ろ! きゅーちゃんも大満足している! 買って正解だったんだ!」


「はいはい。で、その大量の荷物のせいで前が見えてないのはどうするつもり?」


「ぬ……っ!? 確かに視界の八割がクッションで遮られている……! だが僕は精霊愛好家、これくらいの障害など愛の力で——ぐはっ!?」


「言わんこっちゃない」


 盛大に街道の段差につまずき、前のめりに倒れかけるゼツ。


 しかし間一髪、リーンがゼツの襟首をひっ掴み、きゅーちゃんが「きゅーっ!」と風を起こすようにゼツの背中を押し戻したことで、絶妙なバランスで体勢を立て直した。


「ふぅ……間一髪だったな……!」


「私の迅速なカバーときゅーちゃんのナイスアシストのおかげでしょ。お礼の一言もないわけ?」


「感謝するよ、二人とも! さすが僕の自慢のパーティーだ!」


「私はパーティーというより保護者だけどね」


 軽口を叩き合いながら、三人で並んで夕暮れの街を歩く。


 ふとゼツは、自分の鞄や懐に、きゅーちゃんのための小道具やリーンに買い出させられた食料が増えていることに気づいた。ひと月前までは、自分一人分のスカスカな荷物と、怪しい魔導具だけを詰め込んで歩いていた道だ。


「……どうかしたの、ゼツ? 急に立ち止まって」


「ん? いや……なんでもないよ」


 前を歩くリーンと、その頭の上で夕日を浴びて黄金色に光るきゅーちゃん。


 一人で空回りしていた頃には想像もつかなかった、少し賑やかで、少し騒がしい日常。増えていく荷物の重みが、どこか誇らしく、そして愛おしく思えた。


「ほら、早く行かないと宿屋の夕飯に遅れるわよ!」


「きゅ~♪」


「待っておくれ! 僕の足取りは、いま感動で少し重くなっているんだ……!」


「ただ荷物が重いだけでしょ! ほら、しゃきっと歩く!」


 夕闇が迫る街の中に、二人の掛け合いときゅーちゃんの無邪気な鳴き声が、どこまでも心地よく響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。