↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歪んだ輪舞曲(ロンド)〜鉄の処女と白銀の駿馬〜 ――私の婚約者(馬車)が、元婚約者の婚約者(馬)と不倫していました。※乗れません  作者: 山田りく
4章 僕の愛した精霊と、僕の大切な相棒

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/57

三人

「よし……! 行こうか、きゅーちゃん!」


 翌朝、ゼツは宿屋の部屋でビシッと旅装を整え、両拳を握りしめた。


「今日は僕ときゅーちゃんの『ふたりきり』で街の散策だ! 絆を深めるための大切な第一歩……いざ出発!」


「はいはい、いってらっしゃい。迷子にならないでね」


 ベッドで優雅に朝の紅茶を飲んでいたリーンは、手をひらひらと振って送り出そうとする。ゼツはきゅーちゃんを肩に乗せ、満足げに部屋のドアを開けた。


「……ん? どうしたんだい、きゅーちゃん?」


 ドアを出ようとした瞬間、きゅーちゃんが「きゅーっ!」と強く鳴き、ゼツの服の袖をグイグイと引っ張り始めた。目的地は外ではなく――紅茶を飲んでいるリーンの元だ。


 きゅーちゃんはリーンの肩へ移動すると、ゼツに向かって「きゅ♪」と一鳴きし、リーンを指し示すように(丸い体で)アピールして動かなくなってしまった。


「……なんで?」


 ゼツの口から、心底ショックそうな素朴な疑問が漏れ出る。


「僕とふたりでお出かけじゃダメかい……? リーンはお留守番でいいんだよ……?」


「きゅーッ!(首を振るような仕草)」


「……どうやら私を連れて行きたいみたいね」


 リーンはカップを置くと、くすりと笑って立ち上がった。きゅーちゃんは嬉しそうに「きゅ〜♪」と鳴き、リーンの髪の中に収まる。


「くっ……! 悔しいが、きゅーちゃんがそこまで言うなら仕方ない……。リーン、君も同行を許可しよう!」


「上から目線ね。ついて行ってあげる立場なんですけど」


 こうして、ゼツの思惑とは異なり、三人(二人+一匹)で街へ繰り出すことになった。


 最初のうちは「本当はふたりで水入らずの絆を育むはずだったのに……」と、ゼツは少し不満そうに眉をひそめて歩いていた。


 だが、賑やかな露店街を進むうちに、その空気は変わっていく。


「ゼツ、前! カート来るわよ!」


「うわっ!? あ、ありがとうリーン!」


「ほら、きゅーちゃんあれ見て。綺麗なお花があるわよ」


「きゅ〜♪ きゅ♪」


 きゅーちゃんはリーンの肩の上で心底楽しそうに弾み、時折ゼツの顔の周りを嬉しそうにくるくると飛び回る。ゼツが危ない目に行きそうになればリーンが呆れつつ引き戻し、三人で笑い合いながら露店を巡る。


 ふたりだけだったら、自分が空回りしてきゅーちゃんを困惑させていたかもしれない。でも、ここにリーンがいるだけで、驚くほど自然に、賑やかで温かい時間が流れていた。


(……なんでだろ)


 ゼツは、前を歩くリーンときゅーちゃんの楽しそうな後ろ姿を眺め、ふっと表情を緩めた。


 最初は少し不満だった。自分ときゅーちゃんだけの特別な時間にしたかった。


 だけど――


(……まあ、悪くないな)


 一人と一匹より、二人と一匹。この三人で歩く街の景色の方が、ずっと鮮やかで楽しいと、ゼツは静かに噛み締めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。