きゅーちゃんのお世話
「よし、きゅーちゃん! 朝ご飯の時間だよ!」
宿屋のテーブルの上。ゼツが恭しく差し出したのは、小さな小皿に並べられた綺麗な『結晶化した魔導塩』と、澄んだお水だった。
「おお……! 精霊の好物をちゃんと調べて準備したのね。偉いわゼツ」
ベッドの上で身支度をしていたリーンが、感心したように目を丸くする。
「当たり前じゃないか! これでも精霊の文献は網羅しているんだ。純度の高い塩分と綺麗な水、それに澄んだマナが精霊の活力源だからね! ほら召し上がれ、きゅーちゃん!」
「きゅ〜♪」
ゼツの言葉に反応するように、空中に浮かんでいたきゅーちゃんは嬉しそうに小皿へ寄っていった。ちょこんと塩を突っつき、大満足そうに「きゅ♪」と鳴く。
「やった! 食べてくれたぞ、リーン!」
「ふふ、良かったじゃない。ゼツの努力が実ったわね」
大喜びするゼツの姿に、リーンも思わずフッと笑みをこぼす。
「では仕上げに、僕のマナをデザートとしてプレゼントしよう!」
「あ、ちょっとゼツ、急に与えると——」
リーンの制止も虚しく、ゼツが「さあ、お腹いっぱいお食べ!」と指先からドカンと一気にマナを練り出してしまった。
「きゅ……っ!?」
ゼツのマナ自体は上質で美味しいものの、勢いが強すぎて、きゅーちゃんは「ふわぁぁっ!?」と風にあおられたようにクルクルと吹き飛ばされてしまった。
「ああっ!? すみませんきゅーちゃん! 加減を間違えました!」
「ちょっとバカ! マナの圧が強すぎるのよ!」
吹っ飛んできたきゅーちゃんを、リーンが「っと……大丈夫?」と素早く両手でナイスキャッチする。
手の中で目を回していたきゅーちゃんであったが、リーンの手触りが気持ちよかったのか、そのまま「きゅ〜……」と頬をすり寄せて安心しきってしまった。
「うう……せっかくのご飯タイムだったのに、また加減を失敗してしまった……」
落ち込んでガックリと肩を落とすゼツ。
「もう、落ち込まないの。きゅーちゃんもゼツのご飯自体はすっごく喜んでたんだから。ね?」
そう言って、リーンは手の中のきゅーちゃんをゼツの目の前へとそっと差し出した。
「……リーン?」
「ほら。今度は私の手の上から、ゆっくり、ちょっとずつマナを出してみて。加減を微調整してあげるから」
「……! うん、やってみるよ!」
ゼツは慎重に、リーンの手元へ向けて優しくマナを押し出していく。リーンのサポートのおかげで、今度はふんわりと心地よい光となってきゅーちゃんを包み込んだ。
「きゅ〜♪ きゅ〜♪」
「あ……食べた! 僕のマナを美味しそうに食べてくれているぞ、リーン!」
「ね、言ったでしょ? 力ずくじゃなくて、そうやって加減すれば大丈夫だって」
「ありがとうリーン! 君と一緒なら、僕も上手にお世話できそうだ!」
「当たり前でしょ、誰が相棒だと思ってんの。ほら、次は水を飲むみたいだから小皿持ってきて」
「了解だ、相棒!」
手の上で美味しそうにマナを食むきゅーちゃんを挟んで、ニカッと笑い合う二人。信頼し合う凸凹コンビの、賑やかで温かい朝のひとときが流れていくのだった。




