きゅ~♪と鳴く奇跡
「出よ、精霊――ッ!!」
やけくそ気味に叫んだゼツの手に握られた杖。その先端の濁った石が、突如として眩い黄金色の光を放ち始めた!
「――っ!? 光った!?」
ベッドの上で爪を磨いていたリーンが、思わず跳び起きる。
ブウンと部屋全体をかすかな振動が包み、まばゆい光の粒子が室内を満たした。光が収まると、ゼツが突き出した杖の先、空中にぽっかりと小さな光の塊が浮かんでいた。
ふよふよと浮遊しながら、その丸っこくて愛らしい光の精霊は、ゼツの顔を覗き込むように「きゅ〜……」と可愛らしく鳴いた。
「み、見えた……! 見えるぞ……!!」
ゼツの目がこれ以上ないほど見開かれ、全身を歓喜の震えが突き抜ける。
「見えたあぁぁぁぁっ! 姿が見える! 精霊の愛くるしい姿が、僕の目にはっきりと映っているぞ! リーン、見ろ! 精霊だ! 本物の精霊だあぁぁっ!」
「わっ、ちょっとゼツ、大声出さないの! 宿屋の人に怒られるでしょ!」
叫びながら部屋の中を飛び跳ね、感動の涙をボロボロと流すゼツ。その姿があまりにも全力で、あまりにも子供のように純粋な喜びに満ちあふれていたため、リーンは思わずクスッと笑ってしまう。
「……もう、大げさなんだから」
呆れつつも、リーンの口元にはあたたかく微笑ましい笑みが浮かんでいた。イジイジと床に伏せっていた男が、たった一つの小さな光にここまで満面の笑みを咲かせている。さっきまで付き合わされて散々だるそうにしていたのも吹き飛ぶくらい、その笑顔は眩しかった。
(……まあ、あんなに喜んでるんだから、いっか)
自分がさっきほんの少しマナを足したからだとか、難しい理屈はどうでもよかった。リーンはゼツの手元にある古びた杖をあらためて見つめる。
(それにしても……あの怪しい露店の商人、ホントに本物を売ってたんだ……)
ただのインチキ露店商品だと思っていたガラクタが、目の前で確かに精霊を呼び出している。
「ああっ、愛しい精霊よ! 僕の元へおいで!」
ゼツが感極まって両手を広げると、小さな精霊は楽しそうに「きゅ〜♪」と鳴きながら、ゼツの頭の周りをくるくると楽しげに飛び回った。
「やった……ついにやったぞリーン! 僕は精霊と出逢えたんだ!」
「はいはい、よかったわねゼツ」
少年のように無邪気に精霊と戯れるゼツを見つめながら、リーンはどこか誇らしげで、優しい眼差しを向け続けるのだった。




