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歪んだ輪舞曲(ロンド)〜鉄の処女と白銀の駿馬〜 ――私の婚約者(馬車)が、元婚約者の婚約者(馬)と不倫していました。※乗れません  作者: 山田りく
1章 私の婚約者(馬車)が、元婚約者の婚約者(馬)と不倫していました。

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鉄の処女、野生に牽かれる(馬×馬車)

それは、二人が正式に婚約する少し前、まだマリアンヌが誰のものでもなかった頃の、深夜の厩舎の記憶である。


 マリアンヌは、高潔なシャーシを暗闇に潜ませ、頑なに心を閉ざしていた。


『私は鉄の処女アイアン・メイデンよ。誰にも牽かれたことなどないわ』


 その時、闇を裂いて、荒々しい鼻息と共にアレクサンダーが近づいてきた。マリアンヌのドアノブが、未知の恐怖と期待でカタカタと小さく震える。


「……ブルルル」


 アレクサンダーの低い、不敵ないななきが響いた。


『牽かれる悦びを知らないだけだね』


 ガチリ、と狂おしい金属音が静寂を破った。アレクサンダーの曳き綱が、マリアンヌのシャフトに容赦なく、しかし完璧に絡みつく。強固な連結の合図だった。


「ブルルルルッ!(いくぞ、マリアンヌ!)」


 アレクサンダーの強靭な飛節ひせつが地面を蹴り、圧倒的な馬力が爆発する。


『あ、ああああっ……! 何、この圧倒的なトラクションは……っ!?』


 高速で回転を始めるゴム引き車輪。未開発だった制動装置が摩擦で異常な熱を帯び、客室が、彼の激しい歩様に合わせてガタゴトガタゴトと激しく鳴り響いた。


『だめ……! サスペンションが、私の板バネが壊れちゃう……! でも、進むのを止められない……!』


 無機質な鉄の塊が、野生の生命力によって「最高に走る乗り物」へと変貌していく。こうしてマリアンヌは、アレクサンダーの牽引力なしでは生きられない身体に調教されてしまったのだ。

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