夜明けの連結(そして伝説へ)
人間たちがシャルロットの部品を拾い集め、口喧嘩しながら去った後。
静まり返った夜明け前の庭園には、冷たい朝露が降りていた。
アレクサンダーはマリアンヌのフェンダーに優しく鼻先を寄せた。
「ブルルル……(マリアンヌ……俺を許してくれ。俺のホースパワーを真に受け止められるのは、お前の重厚なサスペンションだけだ……!)」
マリアンヌのドアノブがカタカタと震える。
『……馬鹿な人(馬)ね、アレクサンダー。私の前車軸を回していいのは、あなたのあの逞しい飛節だけよ!』
「ブルルルルッ!(マリアンヌ!)」
『アレクサンダー!』
ガチリ!
朝焼けの光の中、アレクサンダーの胸繋がマリアンヌのシャフトへと完璧に滑り込み、運命の再連結を果たした。
『さあ、牽いて、アレクサンダー! 誰もいない、私たちが純粋に走れる世界へ!』
「ブルルルルッ!(応ともさ! 俺の背に乗れ、マリアンヌ! ※乗れませんが、魂は共にあります!)」
ババババババババッ!!!
4つの蹄が芝生を激しく蹴り上げ、無人のマリアンヌを引き連れて地平線へと猛スピードで暴走し、彼らは駆け落ちしていった。
数時間後、頭に包帯を巻いて庭園へ這い出してきたハンスは、二条の深い車輪跡を見つめて、仏のような笑顔でぽつりと呟いた。
「……ああ、世界が平和になりましたね」




