泥沼の終着駅(そして遺書への追記)
「シャルロットオオオオ!」
「ブルルルルルッ!!」
エドワードとアレクサンダーが左右の引棒を同時に強引に奪い合い、正面衝突した。庭園に凄まじい金属音が響き渡る。
ガガガガガガガガッ!!!
ピシッ……パキンッ。
不吉な音がしたかと思うと、シャルロットの木製車輪が左右にスポンと外れ、芝生の上をコロコロと転がっていった。
『あ、ありえないわ……私のシャーシがもたないわ……』
シャルロットは完全にバラバラになった。
「しゃ、シャルロットが自立できない身体に……!」
エドワードは芝生に膝をついて崩れ落ちた。
「ブルルル……(なんという悲劇だ、俺の推進力が彼女を破壊してしまった……)」
アレクサンダーもうなだれる。
「な、なによこれ! 結局どっちもフラれてるじゃない! ざ、斬新な結末だけど、べ、別に同情なんてしてあげないんだからね! ほらエドワード、元気出しなさいよ!」
セレナが顔を真っ赤にして叫ぶ傍らで、マリアンヌはドアノブをカチャカチャと満足げに鳴らしていた。
審判台の上で、ハンスは疲れ切った手つきで遺書にサラサラと追加文を書き加えた。
【ハンスの遺書・追記】
坊ちゃまは馬とドリフトバトルを繰り広げた結果、新しい婚約者を物理的に解体なさいました。ハンスの胃は粉々に粉砕され、もうワックスを塗る余地もございません。
最後に一つ。馬が叫んだ「俺の背に乗れ」に対し、私の理性がどうしても「※乗れません」と突っ込みたがって狂いそうでした。
あれは馬車用です。乗れません。絶対に、乗れません。
ハンスは一足お先に旅立ちます。皆様、あとは勝手に連結し合って、どこまでも暴走なさればよろしいかと存じます。
ハンスは遺書を胸ポケットにしまい、満足げな笑みを浮かべて仰向けに芝生へと倒れ込み、白目を剥いた。




