地下
オーストラリア大陸の南西部、低い山々が連なるところに、閉山し忘れ去られた石炭鉱山がある。
厳重に警備された検問を抜け、さらに延々と車を走らせた先にある、カモフラージュされたそのゲートはゆうに大型ロケットが通るだけの大きさがあった。
シローの運転する車はそのゲートをくぐり、深く地下へと向かうスロープを走っていた。
「まったく、あのタヌキめ。どうやってこんな規模を隠蔽してたんだ」
悪態を吐きながら緩やかにカーブするスロープを進む。
広大な空間には明らかにそれまでとは形状も素材も違う宇宙船の部材が横たわる。
構内クレーンが巨大なトラス構造のフレームらしき部材を運ぶ。
「実物はヤッパデカいな」
感嘆するシロー
シローの姿を視認し近付く技術主任
「このユニットでちょうど80%」
シローが問う前に答える。
「流石ですね。工程表の通り、まさにオンスケジュール」「組立も順調?」
答える代わりに両眉をピクリと持ち上げる技術主任。
「SOLRエネルギーのエンジンは?」
「それも目処がついたよ。予想通り0.18%までいけそうだ」
「既に充填率も56%だ。6カ月で99.8%の予定通り。」
シローが見たことのないくらいのドヤ顔。
「じゃあ最短打ち上げはやはり半年後?」
蕎麦屋の出前と新作ゲームの発売は遅れるのが常識だったシローが驚く。
「何の為に我々が仕事していると思っているんだね」
ドヤ顔を崩さないまま答える技術主任
「そんな事より、例のパイロットはどうなっている。コクピットドリルだけでも半年だぞ。」
低く、低く、ゆっくりとしたトーンで尋ねる。技術主任
「目途はついてますよ。もちろん。ただ、本人が今一つ乗り気じゃないって言うか」
「君たちの国ではそれを目途と言うのかね」
「あぁ、そうだ、植物の栽培はどうなってます?光速の0.18%とは言え片道3年もかかるんだ」
「私達に抜かりがあると思うかね」
構内放送がかかる。
”ブリーフィングの時間です。関係者は会議室へ”
”ブリーフィング始まります。”
ぞろぞろと会議室に集う面々。
シローは紙のファイルを山ほど抱えている。
技術主任はタブレット1台だけだ。
局長が口火を切る。
「さぁ、もう時間が無い。諸々は今日でFIXするぞ」
頷く面々。
長い長い会議が始まる。




