決断
休憩が3回挟まるような長い長い会議も終わり、打ち上げ時期が決まった。この巨大なプロジェクトの動きはもう止められない。
シクシク痛む胃を薬でごまかしながら、オーストラリアから帰国したシロー
一息つく間もなくライザの元へと向かう。
”ブー”
相変わらず癪に障る音色の呼び鈴を押す。
一瞬ドアの覗き窓からライザの目が見える。
一呼吸おいてからドアが開く。
「副局長様お忙しいのにどうされました」
考えうる最高のイヤミ。
「ライザ、ずっと連絡まってたんだけど…」
「けど、なに?」
「君に仕事の依頼があるって…そう言っただろう」
「そういや、そんなこと言ってたわね。」
「考えてみてくれたか…」
被せ気味にライザが答える
「受ける気はないわ。」
「なぜ…?悪い話じゃないはずだ」
「取り繕ってもしょうがないからハッキリ言うわ。レオよ。レオはまだ9歳なのよ。私たちずっと二人だけで暮らしてきたの。そんな危険な任務受けるわけにはいかないわ。それにSOLRの虹色が気に入らない。」
「ライザ聞いてくれ。確かに月へ食料を運ぶのとは訳が違う。片道で3年かかる旅だ。その間レオとは会えなくなる。」
「でも、このまま6年後この世界はどうなっていると思う?」
「一度解決したはずのエネルギー問題がまた人類を争いに誘う。」
「キミはそんな世界をレオの未来にしたいのか」
「私が乗らなくたって船を飛ばせる人は居るでしょ?」
「あぁ、その通りだ。君が断っても計画は進む。船は飛び立つさ」
ライザの表情が少し和らぐ。
「でも、君が乗らなければ、帰って来る保証はない」
ライザの目つきが変わる。
「ホント、あんたって卑怯よね」
「レオの事が心配なら、俺に任せて。俺が面倒みる。だってレオは俺の…」
そこまで言って口ごもるシロー
ライザが柔らかな表情で続ける
「ええ。」
「だからあの子の事を頼むわよ」
いつの間にか胃痛が吹き飛んだシローが胸を張る
「任せろ。」
片手では持ち上げられない仕様書を渡しドアを出るシロー
大きく息を吐く。
「さあ、打ち上げだ」




