邂逅
シローは古びたアパートのエレベータに乗っていた。
政府直轄部署のPMになった事で得た権力をフルに活用し、とある人物の所在を突き止めたのだ。
ガッタン。ググゥ。
前時代的な音をたててエレベータの扉が開く。
生活感あふれる廊下を進んでいき目的の部屋の前に立つ。
「ふぅ」
ふっと深呼吸。
意を決してチャイムのボタンを押す。
「ブー」予想を裏切る音色のチャイムが鳴る。
しばしの沈黙の後、ガチャガチャと扉が開く。チェーンロックはかかったままだ。
「どちら様…?」
あくまでもテンションは低い。
「やぁライザ、久しぶり」
「もう10年ぶりくらいになるかな」
突然の訪問にライザの瞳孔が開く。
「……シロー…?」
シローが次のセリフを紡ぐ前にライザが続ける。
「帰って。」
「ま、待って。やっと探し当てたんだ」
「ちょっと話をさせてくれないか」
粘るシロー(ガンバレ)
「あなたと話すことなんて何もないわ」(つれない)
しばしの押し問答。
と、そこに帰宅する少年の姿。
「ライザ、ただいま」
「こんにちは」
レオが元気にあいさつする。
「……ぁぁ、こんにちは」
レオの為にチェーンロックを外すライザ。このスキを逃さないとばかりに、シローが半身になり扉の隙間に身を滑らす。
「……名前は?」
軽い諦めの色を浮かべながら答えるライザ。
「レオよ」
「今年で9歳になるわ」
シローの視線が彷徨い一瞬の思考が巡る。
{…まさか…?}
動揺を悟られまいと、深刻なオーラを醸し出す。
「ずっと一人で?」
「ええ、そうよ」
答えるライザ。
「あなたには関係ないことよ」
「それで、何の用?用がないなら帰って。」
「単刀直入に言おう。君に仕事を依頼したい。」
「貨物船を飛ばしてるらしいじゃないか」
「どうして私なの?」「他にもパイロットは沢山居るわ」「士官だって大勢いるはずよ」
「そうなんだ、そうなんだけど…」
「実践で飛ばせる経験と判断力を持った人材が、ね。」
ライザにも思い当たる節が無い訳ではない。
月基地や、火星探査隊への物資輸送でも、純粋なパイロットの姿は減っている。特に政府関係はほぼAI無人機だ。
「だからって私じゃなくたっていいはずよ」
ライザだって士官学校での経験がある。シローがこれ見よがしに着ている制服で、少なくともソレ系ってことは分かる。しかもかなりの地位ってことも。
しばしの沈黙。シローは次の言葉が出てこない。
そんな気まずさを破るレオの声。
「ライザ、またピザが冷たいままだよ」




