オブジェクトコンタクトインパクト
そして、ついに、その時はやってきた。
「みんな、準備はいい?チャンスは一回だけよ!頼んだわよ。」
「ニャーム」
(もちろん、お任せ!)
「合点承知の助」
カール艦長にも無線通信。
「カール艦長。ここまでどうもありがとう。盾になってくれた事、感謝しています。あなた方が居なければ、きっと帰って来れなかった。」
「司令部の方々もこの通信はお聞きですよね。カール艦長の寛大な処分をどうかお願いします。」
「ライザ艦長。私達はアナタやクルーに全てを託しました。…どうか…どうかご武運を。」
エンタープラジーズを旗艦とした艦隊がⅡ船から離れて行く。
Ⅱ船の周りが虹色に揺らぎ始める。
ライザはふと、シムとの事故の事を思い出していた。
「あの時と同じ。空気が揺らいでる…」
そしてⅡに導かれるように南極大陸に接近して行く。
「コンタクトまで推定5分。大気圏突入!」
ギルがディスプレイを読み上げる。
艦長席から数歩しか離れていないはずのギルの姿が虹色に歪んでいる。
「ビー、平気?」
「ヴェヴェー」
(ボボボ、ボククへへいき)
扇風機の向こう側にいるみたいに声が震えてる。
外皮骨格が赤熱して、観察窓を真っ赤に染める。
「2分」
ガタガタ
バキバキ
ギギギ
船の骨格が悲鳴をあげてる。
「60秒」
マイナス10Gを超えるような負荷が船体を襲う。
ガイドパイプのパネルが数枚吹き飛ぶ。
「30」
「20」
南極大陸、SOLR-Ⅰの上空で停止するⅡ船。
地上設備では地下施設の屋根が取外されてSOLR-Ⅰが暴露されている。
「ギル!ビー!」
ギルがマクロ化した手順のランボタンが押されて、SOLR放出のシーケンスが作動する。
ガイドパイプの放出口からスッと音もなく飛び出るⅡ。
シードと呼ばれる中心体をペタルが3.33Hzで周回しているのが肉眼で観察できる。
虹色に輝きながら、ゆっくりとⅠに近づいていく。
「コンタクトまで推定10秒」
ギルが叫ぶ。
「9,8,7,6…」
「3」
「2」
「…」
真っ白な光に包まれて何も見えない。
カメラのオートゲインも用を成さない。
永い永い一瞬の後、ようやく光が収まってカメラが捉えたのは白く輝くシードと反対方向に周回する二つのペタル。
カール艦長と地上管制からほぼ同時に呼びかけられる。
「ライザ艦長!無事ですか?」
「ライザ!、ライザ!」
だが、暫しの沈黙の後、ギルから発せられた通信は、
「ライザ艦長が消えた!何処にも居ない!」
Ⅱ船にはギルとビー。そこにライザの姿は無かった。




