そして地球へ…
タイムリミットの48時間が迫るなか、ライザ艦長率いるⅡ船は月軌道の内側に入ろうとしていた。
数隻のお供を引き連れて。
「こちらは連邦政府宇宙艦隊所属エンタープラジーズ号、艦長のジェームズ・タイラー・カールです。ライザ艦長応答願います。」
「カール艦長、こちらⅡ船ライザ。ご用件は?何かしら」
「あなた方の功績は他に代え難いものがあります。我々も宇宙船乗りとして尊敬しております。ただ、ご存じの通り、連邦政府より接収命令が出ております。どうか、指示に従ってください。」
「ご丁寧にありがとうございます。ただ、こちらもハイそうですか、とは行かないのです。どうかご理解を。」
「間も無くタイムリミットを迎えます。それまでに、どうか船の空け渡しを。もちろんあなた方の安全は保証されておりますので、ご心配には及びません。」
「カール艦長、SOLRを人類が制御できるとお思い?もう我々に手出しできる事なんてないのよ。だから、お願い、このまま手出しをしないで。」
「……。ライザ艦長、あと10分だ。我々も手荒なマネはしたくない。どうかご決断を。」
その時、秘匿回線に割り込みが入る。
「ライザさん、こちら地球のギルバート博士です。落ち着いてよく聞いて。」
カール艦長がいち早く反応。
「これは最重要秘匿回線のはず。どうやってこの周波数を…?!」
(後にシローが辞表と引き換えに漏洩した事が報告書には記載されている)
「それは後で。それより、手を出しちゃダメです。もはや、進路を変えることはできません。私の計算では消滅反応により地球と月ほぼすべてが消失します。」
「消失…?」
「ええ、正確には観測不可能な異次元へ変位するようですが。」
「私達にできることは?」
「ありません。見守るのみです。ただ、唯一、可能性として残っているのが…」
「何か言いづらい事が?」
たまらずカール艦長。
「地表にあるⅠの中心部、所謂ペタルとⅡのペタルとを精密にずれなく接近、接触させる事です。それにより、ⅠとⅡが結合、一体化し、安定状態を取り戻せると考えています。」
「必要な精度は?」
「ズレなくってどのくらい?」
二人が同時に尋ねる。
「私の試算、とはいっても未知の事ばかりなのでほぼカンですが、1/10ミリメートル、つまり0.1ミリ位。しかも、それよりも重要なのはタイミングで、こちらはもっと精度が必要と思われます。」
「それを一発勝負で?しかも失敗したら地球丸ごとどっかに行っちゃうって?なかなか痺れるわね」
「ライザ艦長、あなたまさか…それで上手くいくとお考えで?…」
「イチかバチかって言うにはリスクが大きすぎるかしらね。」
「し、しかし…」
「カール艦長、貴方には聞こえないかしら?お互いを呼び合う声が…」
接触までの推定残り時間が1時間を僅かに切るこの段階で、本部に判断を仰いでも無駄と判断したカール艦長。これまでの艦隊人生と、己の未来も全て賭けた一瞬の判断を下す。
「ライザ艦長、わかりました。わが艦隊がお供いたします。」
地球に向けて進む艦隊と一隻。




