ライザ、母親であり艦長であり…
シローが駆け出す少しだけ前。Ⅱ船ではライザとギルが善後策を相談していた。
「スラスターとしてもパワーが全く足りてない。要するに指を咥えて見てるしかないな」
「ガイドパイプの超伝導コイルをOFFにしたら?」
「もともとペタルの軌道しか制限してないからな。Ⅱ自体の行先には関係ないな。この船は解放されるが。しかし、エネルギーも受け取れなくなる。バッテリーで航行できる時間なんて僅かなもんじゃ」
「見届けるしか無いって事ね」
二人の間に重苦しい空気。沈黙を破ってくれたのは地球からの着信コールだった。
ピロンピロン
「シロー。何してたの。遅いわよ」
「ライザすまない。少しバタバタしてた。」
「どうだい?そっちの様子は。」
「特に変わりはないわ。あのエネルギーを独り占めしてるんだもの。快適そのものよ。」
「そうか、じゃまず現在地と到着予想時期を教えてくれ。」
「ビー、お願い」
「ニャーニャニャニヤ」
「ありがとう」
あの手でどうやって入力しているのか考えるのは既にやめたライザ。
「真っ直ぐ地球に向かっているのか。到着まで60時間か。それほど加速はしてないんだな。」
地球の管制にもデータが届く。
「実はなライザ、連邦政府が船ごとⅡを引き渡せ、と言ってきた。期限は48時間だと。」
「そんな事だろうってギルとも話してたわ。で?作戦は?どうせ何か考えてるんでしょ?」
「ギルバート博士が軌道計算してくれているんだが、シーアンカーを解除して、加速できないか?」
「接近速度はⅡにお任せじゃなかったの?」
「ああ、本当はそれがいいんだが…地球の手前で再びシーアンカーと逆噴射で減速させる。これでタイムリミットの48時間にギリギリ間に合う計算だ。」
「一発勝負ってわけ?いいわ、そう言うの嫌いじゃない。」
「脱出ポッドの残は?」
「大丈夫よ。何度も確認してる」
「重力場にも影響が出るらしい。脱出できるタイミングは限られる。」
「任せといてよ。何回そんな場面潜り抜けてきたと思ってんの」
「わかった。頼む。ライザ」
「ええ。」
「あ、ライザ」
「?」
「愛してる」
「………なんでいまそんな事言うのよ。バカ。……私だって愛してるわ」
名残惜しそうにモニターを切るライザ。




