シローⅡ局副局長またの名を調整役
執務室に戻り、デスクの、上から2段目の引き出しを開けるシロー。そこには胃薬が大量にストックしてある。
”すっきりストマック液”で”胃痛霧散錠”を適当に流し込む。
「むむむ」
日増しに胃痛はひどくなるばかり。
プププ、内線で呼出。
「シロー、ちょっといいかな?少し外で話そう。」
局長からだった。
これ以上ないくらいの、少し憎たらしさを覚えるほどの晴天。局から少し歩いた公園の噴水脇に並んで座る二人。
よってくる鳩にパン屑を放り投げながら局長が切り出す。
「シロー、すまない。私の力不足だ」
「政府が動き始めてしまった。局ではもう止める事ができない。」
「あろう事か、Ⅱが危険と判断されて、排除する方向だ。」
「そうですか……」
驚きはない。むしろ自分でも予想していた。
「それで、具体的には?」
「Ⅱ船を空け渡せと言ってきている。」もちろん捕縛したⅡごと、だ」
「とは言っても、我々にだって止める術はないのに。」
「そうなんだが…どうもウチが裏で手を出していると思っているらしい。」
「全く、策略とか陰謀とかが好きな連中が考えそうな事だ。そんな事言ってる場合じゃないってのに…それで、どうするんです?」
「猶予は48時間だそうだ。それが過ぎたらヤツらは武力行使も辞さないだろう。それまでに船に残ってる連中を説得できるか?まだ脱出船はあったよな。」
「素直に渡すんですか?全くの素人に?!奴等の手に負えるような代物じゃない事くらい局長が一番よくわかってらっしゃるでしょう?!」
「わかってるさ。わかってるからこそ、武力行使なんぞ避けなければならない。アレにミサイルでも打ち込んでみろ。一体どうなるのか、想像できるか?」
「…局長、ギルバート博士と話はされましたか?」
「あ、ああ、Ⅱは勝手にさせろって話か。それも又,無茶な話だが。」
「………」
「シロー、お前まさか、彼女の言ってることを真に受けて…」
「私は全くの荒唐無稽だとは思っていません。彼女の言う事は尤もだ。」
「しかし、実験の結果を見ただろ。あれの何万倍だと思ってる?」
「彼女だけじゃないんです。レオもそう言ってる。」
「レオ?あぁ、君とライザの子か。しかし、二人とも子供じゃないか。」
「えぇ、そうです。ただ、我々じゃ見えない世界、聞こえない音を感じ取ってる、と私は思うんです。」
「どうせ、政府軍に横取りされるんなら、掛けてみる価値はあるんじゃ?」
黙り込む局長。身動き一つしない。やがて、頭に、肩に、鳩がとまる。小一時間後、黒山の鳩だかり。
ところが、急に鳩が一斉に飛び立つ。局長が立ち上がったのだ。
「シロー、GOだ。至急Ⅱ船の現在地と到着予定時期を。それまでは一切手出しさせない。」
「局長。わかりました。お任せください。」
走って局に戻るシロー。




