エネルギー保存の法則
船内AIにいくら聞いてみてもシローが言っている意味がライザには理解できなかった。
「どうして、どうしてよ。何年もかけてやっとここまで帰ってきたのに。それなのにどうして…」
ベッドに無造作に放り投げられたタブレットからはビデオメッセージの続きが再生されている。
「ライザ、つまりSOLR-ⅠとⅡを近づけると反物質が対消滅するかのようにお互いのエネルギーが一気に解放される可能性が出てきた。これは君達が捕縛したからこそ解析できた結果なんだ。」
「具体的には君達が地球に向かっていることによりⅠとⅡ間の距離が近付いているんだが、それに比例してⅠとⅡで周囲の時空に微細な歪みが生じている。局で検討した結果、月の軌道よりも近付くと、場が重なって、時空が共振を始める。その結果、ⅠでもⅡでもない状態が現れる。」
「この意味がわかるかい?エネルギー保存の法則じゃ推測もできないくらいのエネルギーが解放されるんだ」
「だからクルー達には本当にすまない。でも、いまキミたちを地球に迎え入れるワケにはいかないんだ」
「わかってくれ、ライザ」
シャワー室から出て、バスローブを羽織るライザ。
ベッドに腰掛ける。
空虚な一点を見つめている。
やがて、何かを決したようにタブレットを手に取る。
通信アプリを立ち上げ、録画ボタンを押す。
「レオ、調子はどう?この前気になってる女の子を家に呼ぶって言ってたわよね。どうだった?シローは余計な事言ってない?…
…
…
…
あのね、レオ、ママもうしばらく宇宙に居なくちゃならないみたい。もう少しで帰るって約束してたのに。ゴメン。
…
…レオ…レオ…あなたを抱きしめたい。」




