通信
位相変換器により平常を取り戻した船内。
相変わらず、ギルとレミーがカウンターで飲み交わしている。
「ギルのお父さん、なんでそんなもん入れるの!!」
ギルは炙った小魚を熱燗に落とす。
「これが一番うまいんだって」
「うえぇ……」
ギルは酒を飲み干し、今度はその小魚まで食べ始めた。
「ひゃぁぁ……」
レミーは目を閉じたまま首を振る。
「俺のトマトの方が百倍うまいって」やや在庫がだぶつき始めた船内栽培のトマトを口に運ぶ。
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眉間に皺をよせながらタブレットの画面を凝視するジュン。
ライザも横から覗き込んでいる。
「やっぱりそうですね。」
「ええ、Ⅱ局の言ったとおりだったわ」
カメラの倍率を上げ、撮影した画像を管制に送るジュン。
「ようやくここまで来ました。」
返事はせず、ポンとジュンの肩を叩くライザ。
通信用アプリを立ち上げる。
「こちらⅡ船。Ⅱの画像送ります。やっと捉えたわ。」
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そのころ地上では束の間半日の休暇?のシローが担任と話していた。
「お父さん、今日はわざわざありがとうございます。やっぱりお忙しいんですよね」
「とんでもない、地上の我々は時折届く通信を待っているだけで、暇を持て余していますよ。」
洗濯の行き届いていないヨレヨレのシャツのシローが答える。
軽く愛想笑いをして、レオの担任が本題に入る。
「さて、レオ君ですが、」
「な、何か問題でも?」
「いえ、クラスでも人気者で、成績にも問題はありません。とてもよくやっています。」
「あぁ、よかった。ビデオメッセージのやり取りは自由にしていますが、やっぱり、直接母親に会えない事で、問題がないか、いつも気にしています。あ、父親の私と折り合いが悪いって意味じゃないですよ、私とレオは良好な関係で、夕食の時なんか、その日の事をよく話してくれています。これでも、毎日夕食は一緒に食べるようにしてるんですよ。ま、その後仕事に戻ったりなんかも多いんですがね。ちなみにクラスに気になっている娘も居たりするそうで、内心コイツめぇなんて思ったり…」
一瞬の息継ぎを見逃さず担任が割り込んで話す。
「それで、今日来て頂いたのはこちらなんです。」
タブレットを手渡し、短い動画を見せる。音楽の授業の様子らしい。
楽譜を見ながら演奏する子供たち。
レオだけ様子が変だ。
一人なら上手に演奏できるのに、皆と合わせることができない。
担任が不思議そうに、
「もちろん、うまく演奏できない子は珍しくありません。ただ、レオ君の様に合わせることが苦手な子はそう多くないんです。」
「もしかしたらレオ君には他の子の演奏が我々とは違う聞こえ方をしているんじゃないか、と思っています。」
担任曰く、特に問題視しているのではないらしい。ただ少しだけ普段の生活でも注意して見て欲しい、とのことだった。
帰り道、ハンバーガーをパクつく二人。
「シロー、今日は何の話だったの?ボク、なにか困らせてる?」
「とんでもない。レオはとっても良い子さ。良い子過ぎて心配になるほどに、ね。無理をしてるんじゃないかって。」
「別に。普通にやってるだけさ。」
「ならいいんだ。それより、また明日から出張に行かなきゃならない。すまないレオ。」
「気にしないで。僕なら大丈夫だし、局の人も見に来てくれるし。」
「それより、もう宇宙局のキャップはいらないからね。」
「ハハハ、じゃまた違うお土産を探しておくよ」
仲睦まじく会話する父子。ライザに会えるのはまだ少し先の話。




