出発
慌ただしい半年の準備期間は矢のように過ぎ去り、Ⅱミッションスタートの前日、ライザとクルーの姿は軌道上のⅡ船ドックにあった。
地上のシローと会話するライザ。
「……(真面目に聞いてもバカバカしくなるだけの付き合いたてカップルのような会話)」
…
…
…
「じゃぁレオの事頼んだわよ。」
「任せとけ。担任の先生の名前だって覚えたさ。」
「寝る前にはちゃんと歯磨きさせてね。」
「もちろん。わかってるさ。安心して行って来い。」
「うん。」
通信モニターをOFFにし、振り返る。
ビーがあきれた様子で「ニャー」と鳴く。
これでも、クラウドAIに勝るとも劣らない軌道計算をリアルタイムでこなす。
どうして音声コマンドが認識されるのか、ライザは不思議に思ってるが。
抱き上げて通路に出るライザ。コーヒーを飲もうとしてるギルが目に入る。
「うおぁぁ」
手が震えて砂糖の包装が開けられない。代わりにライザが砂糖を入れギルに手渡す。
「ありがとうライザ。いつもすまないねぇ。俺がこんなばっかりに」
「何言ってんのよ。おとっつあん。それは言わない約束だろ」
毎度の寸劇の会話を交わす。
「まったくあの震える手でどうしてあんなになんでも作ったり直したりできるのか不思議だわ。」訝しむライザ
ジュンとレミーが一緒に居た。
「どう?準備できてる?」
ジュンに話しかけるライザ
「ハッ滞りなく済ませております。艦長」
ブロンドの長い髪を纏めてⅡ局の帽子中に入れている。
直立不動で答える。
「レミーはどう?あなたの植物プラントには期待してるのよ。」
「順調に育っています。物資も充分に積載しております。ご心配なく。」
そういや軍人ってこうだったわと、呆れるライザ。
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明けて翌日、といっても軌道上なので、朝陽が差し込んだりはしないドックとⅡ船を繋ぐ通路。整列したクルーに局長が簡潔に激を飛ばす。
「頼んだぞ」
「はっ」
「ハッ」
ビシッと敬礼するジュンとレミー
一般人のライザとギルは軽く手を挙げて応じる。
ビーの姿はない。恐らくもうⅡ船のどこかに居る。
連絡通路から先は人口重力の影響範囲外だ。マグネットブーツで一歩ずつゆっくりと進む。Ⅱ船に乗り込み最後のレミーがハッチを閉める。通路の連結ロックが外され伸縮式の通路がドックに収納されていく。これでⅡ船は固定を失いフリーとなった。
ほんの少し右に傾いたのち、フォンとジャイロスダビライザの軽い作動音がして安定を取り戻す船。
ここからは地上の管制下に入る。
「さぁ、ライザいよいよだ。まずは進捗報告のリクエスト」
シローの声に安心感を覚えながら、シーケンス通り答えるライザ。
「SOLRエネルギー充填率は99.8%、エンジンはアイドリング状態で安定」
「エアロック警報消えた。ロック完了」
「対ドック姿勢制御順調。ヨーイング、ローリング、ピッチングゼロ」
ジュンからも報告が入る。
「居住区、貨物区、推進部連結ロック、コーションネガティブ」
「その他コーション全て消えました。問題ありません」
「発進準備完了。グリーンランプ点灯確認。
いつでも行けるわシロー」
「OK,こちらでも確認した。T=-100から始める。」
「………10,9,8,7」
いつの間にかビーも専用席に着いている。
「3,2,1、マーク」
「OK,シロー、クラッチエンゲージ、」
「ニャウニャウ」(SOLRエンジン順調)
「行くわよ」
軌道上ドックからの発進なので、派手な爆炎も立ち昇る水煙もない。SOLRエンジン特有の虹色のゆらめきだけ残して音もなく動きだすⅡ船
ここから光速の0.18%まで加速し、希望へと向かう。あるいは絶望か。




