59話 キチョウの頼み事
織田信長ことサブロー・ハインリッヒは、自分が死んだ後のことをキチョウから聞かされ、深く反省していたがキチョウからこちらでの頼み事を持ちかけられ、反省するのは1人の時にするとして切り替えた。
サブロー「して頼み事とは?」
キチョウ「叔父様を助けて欲しいの」
サブロー「キチョウの叔父御は、確かリチャード・バルケス殿であったか?」
キチョウ「えぇ、合ってるわ。私を人質に取られたと勘違いしてね。助けるために父の軍と衝突したのよね。多分、父から報復を受けると思うの」
サブロー「待て!そもそも、どうしてお前は実の父に狙われているのだ?」
キチョウ「あーそこから?えーっとね。まぁ、向こうで寿命で私が死んだ話はしたよね。それが慶長17年、西暦にすると1612年の話でね。まぁ、夫を亡くして息子のように愛情を持って育てていた信忠も亡くなって、匿ってくれていた氏郷殿が洗礼を受けた時に、私も洗礼を受けて、貴方と信忠の菩提を弔っていたのね。で、これでようやく解放されて貴方と息子のように愛情を持って育てた信忠に会えると思ったら訳のわからない世界にいたわけよ。向こうの世界と似たような宗教が禁止されてたとしても縋る気持ちはわかってくれるわよね?」
サブロー「であるか。大体は理解できた。聖十字教か…確かにバテレンによう似ているとは思っておった」
キチョウ「まぁ、貴方はそんな感じよね。貴方は、バテレンの布教自体は禁止しなかったものね。奴隷に関しては目を光らせて、徹底的に救っていたものね。貴方の亡き後の向こうの世界では、ハゲ頭も家康もバテレンを徹底的に弾圧したの。まぁ、アイツら貴方が居なくなってから好き放題してたからそれは別に構わないのだけど。バテレンってだけで殺された民衆も居たわ」
サブロー「成程。奴隷として連れ去ろうとした愚かな連中が居たということか。それさえしなければ布教自体は、ハゲ頭も家康も認めたであろうに…愚かな」
キチョウ「えぇ、そうね。十兵衛の娘も殺されたわ。バテレンとは関係ないところでだけどね」
サブロー「玉か。禅宗であったと記憶しているがバテレンに改宗したのか…って関係ないのか」
キチョウ「えぇ、ハゲ頭の跡を継ごうとした石田三成が人質に取ろうとして、巻き込まれたの」
サブロー「成程。理には適っているが玉のことを溺愛していた忠興のことだ。その怒りは茶坊主に向かったであろう」
キチョウ「えぇ。にしてもその渾名、やけに気に入ってるのね」
サブロー「ハゲ頭の奴から勧誘した時の話を聞いてな。分かりやすく茶坊主とな」
キチョウ「そ、そう」
サブロー「で、話を戻すがバルケス伯を助けるとしてだ。見ての通り、俺はこの世界でも周りが敵だらけなのだが…」
キチョウ「あら、そんな心配必要ないわよ。どうも父はガルディアン王国と付き合いがあるみたい。ここに攻めてきた奴らから接収した物が証拠よ。それに父は、野心だけはある人だから、ガルディアン王国での地位でも約束されたのかも。ナバルは、貴方のことだから既に調べは付いてるのでしょう?」
サブロー「フッ。流石、俺が惚れた女だな」
キチョウ「ふふっ。本当にうつけなら殺せと父に言われたけれど…」
サブロー「義父殿らしいな」
キチョウ「それで、助けてくれるのかしら?報酬は、私じゃダメかしら?」
サブロー「それはとても魅力的な提案だな。だが聖十字教は、一夫一妻制では無かったか?」
キチョウ「あらあら、私は別にそんなこと気にしませんよ。殿が他の女をいくら抱こうとも…いつだって私の元に帰ってくるのはお見通しですから」
サブロー「フッ。生憎だが…不思議とこの世界ではそういった欲が無くてな。お前が親衛隊長と呼んだロー爺にいつも早く結婚して、お世継ぎをなんて言われたりもしている」
キチョウ「まぁ、武家も貴族も変わりませんものね」
サブロー「あぁ。それに、こちらでなら1番愛しい者との間の子も授かれるかもしれんしな」
キチョウ「それは、婚約宣言かしら?」
サブロー「さぁな。お前のことでは無いかもしれんぞ」
キチョウ「またまた」
サブロー「タルカ北部に領地を与える予定の者たちを母に率いてもらいマリーカ領の救援に派遣しよう。鉄砲という兵器を持たせてな」
キチョウ「まぁまぁ、殿はこちらでももう鉄砲を?流石ですわね」
サブロー「まぁな。で、手薄になったオダ領にナバルが攻めてくれれば良いのだが」
キチョウ「それならもうこちらに手札がありますわよ」
サブロー「成程。お前が接収したという兵器か」
キチョウ「えぇ。殿なら興味がお有りかと元の時代では使うことのなかった投石機とやらに」
サブロー「フッ。そういう俺のことがよく分かっているところが好きなのだ」
キチョウ「私も殿の家族に素直に御礼が言えるところが好きですよ」
サブロー「いや、部下には領地などで報いれるが妻には言葉でしか礼は尽くさぬからな」
キチョウ「それがわからぬ者も大勢居るのですよ。特にこの世界は」
サブロー「であるか。では、お互い生きていたらまた共になろう」
キチョウ「クスクス。私は大丈夫ですが殿の方は心配ですね。この前、遠出した時は、私を庇って」
サブロー「さも当然のように、ついこの間のように話をするのだな。あれは、善住坊に狙われた時の話だろう」
キチョウ「えぇ、私は殿が身を挺して庇ってくださったあの時のことをずっと覚えているのです」
サブロー「やめよやめよ。それはこっちの世界では死亡フラッグというらしいぞ」
キチョウ「それをいうなら死亡フラグですよ」
サブロー「であるか」
惚れた女の頼みを断れ無かったとはいえ、キチョウを妻に迎えると本格的にアイランド公国を敵に回すことになる。
ならば、敵の数を減らしておくに越したことはない。
やれやれ、つくづく俺は戦の中でしか生きられぬようだ。
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