53話 番外編(逃亡)
キチョウ・プリストが建築に携わり自らの城とも呼べる孤児院を火計で簡単に捨て去ったのには、理由がある。
キチョウ「まさか叔父様が私が囚われていると勘違いして、孤児院に兵を差し向けるとは思いませんでした」
カトリーヌ「ですが、あれではマリアンヌ様も灰になったと勘違いされませんか?」
キチョウ「ふふっ。叔父様は、最初こそ取り乱すかも知れませんがきちんと現場を調べるでしょう。そしたら遺体が全て男性のものだと分かるはずです。何も問題はありません」
カイト「成程。で、俺たちはほとぼりが覚めたらマリーカ領に戻ると」
キチョウ「いいえ。事はそう簡単ではありません。父は私を殺そうとしました。叔父様は私を守ろうとしました。近い将来、父と叔父様は戦争を始めるでしょう」
フローラ「姫様、それなら尚のこと私たちが戻った方が宜しいのでは?」
キチョウ「それよりももっと良い有効打が打てると思いませんか?」
ルノー「良い有効打ですか?」
キチョウ「えぇ。例えば、父が恐れてる相手に亡命する代わりに叔父様を助けてもらうとか」
カトリーヌ「それはなりませぬ!マリアンヌ様の純潔を捧げる代わりに御身の安泰を乞うなど!」
キチョウ「あら。そんなことをしなくてもあの人は利を取る御方よ。クスクス」
カイト「それって、今から6年ぐらい前に王城に呼ばれて、俺たちの領土を通過した貴族の坊ちゃんの話ですか?」
キチョウ「あら、貴族の坊ちゃんだなんて言い方は失礼よカイト。だって、サブローはあの時から既に領主様だったもの」
カトリーヌ「確かにあの御方は、我々の不手際を酔った奴が勝手に倒れただけだとこちらの落ち度を庇ってくださいました…ですが!それはそれ!これはこれ!此度は、マリアンヌ様の御身を要求してくる可能性が無いとは言い切れないでしょう!」
キチョウ「あら、カトリーヌは心配性だこと」
フローラ「団長、姫様の言う通り、このままマリーカ領に帰ってもリチャード様をお助けする事は叶わないかもしれません。ここは多くを得るために虎穴に入ってみるのもどうかと考えます」
カトリーヌ「フローラ、お前まで何を言う!我らは、マリアンヌ様直属の精鋭兵聖十字騎士団だぞ!マリアンヌ様の御身を危険に晒す可能性は真っ先に排除すべき事だ!」
カイト「姉貴は硬いんだよ!そのお守りするマリアンヌ姉ちゃんが自ら懐に飛び込もうとしてんだ。それを守るのが俺たちの仕事じゃねぇのか?」
フローラ「今のカイト♡カッコいい♡」
キチョウ「(あらあら、フローラの目が恋する乙女丸出しのハートになってるわ。クスクス)」
カトリーヌ「ならん!誰が何と言おうと私は許可できん!この話はこれまでだ!」
ルノー「団長、マリアンヌ様の提案を却下するって事は、このままマリーカ領に戻るんですか?それって、マリアンヌ様の身が安全だって言い切れます?言い切れないですよね?どちらも危険なら俺はマリアンヌ様の方がまだ望みがあると思いますよ」
カトリーヌ「ルノー!お前まで!」
カイト「姉貴は、怒るだけで具体策が無いんだよ。所詮、戦闘脳で戦では知恵も回るのにこう言う時はからっきしダメなんだから黙ってマリアンヌ姉ちゃんに従えば良いんだよ!」
カトリーヌ「ぐぬぬ」
キチョウ「カトリーヌ、貴方が私の身を案じてくれているのは痛い程伝わります。ですが今は叔父様を助けるため可能性の大きな方に賭ける時です」
カトリーヌ「わかりました。マリアンヌ様がそこまで覚悟を決めておられるのでしたら、従います」
キチョウ「ありがとう」
ルノー「なら、先ずはタルカ領を抜けてオダ領を目指しますか。タルカ領はこっちの方角です」
こうして、カトリーヌを何とか説得した私はタルカ領を目指したのですが。
キチョウ「これは」
カトリーヌ「マリアンヌ様、お下がりください。どうやら、オダ軍は最小限の兵力でタルカの主要拠点を陥落。残された他の地域では反オダ派と親オダ派に分かれて、内乱状態のようです」
キチョウ「(平民が束になって乱を起こす怖さを殿は1番ご存知のはずですが。これでは全ての恨みが殿に向きかねません。私たちに出来ることは」
???「クソッタレどもが!反オダ派だか親オダ派だかしらねぇけどよ!元々、このタルカの地全てがオダの地だっての!」
???「そう、怒るなリドル坊。それを知っているからこそ俺たちにしかできぬこともある」
???「あの馬鹿どもが民衆を苦しめないように俺たちが民衆を守る盾となるんだ」
キチョウ「ふふっ(中々、気概のある人がこの地にも居たようです。まさか殿は、これを狙って?いや流石にそれは私の考えすぎでしょう…いくら殿でも身の危険と引き換えに優秀な人材を求めるなど…殿ならしそうですね)」
リドル「アァ?何笑ってんだ!」
???「おいリドル坊!可憐な少女に絡むな!」
キチョウ「あら、ごめんなさい。状況がよく飲み込めてる人も居るんだと思って。良ければ皆んなで、この地の民を守るそんな素敵な城を建築しない?そうすれば、貴方たちが信奉してるオダの領主様が自ら足を運んでくださるかもね」
リドル「それマジかよ!?やるやる!アイツら、クソ貴族どもに食い散らかされるぐらいなら素敵な城を作って、みんなを守るぜ!なぁ!マッスルにスタンリー!」
マッスル「おいどんが役に立つとは思えないんだなぁ。でも、楽しそうだから協力するんだなぁ」
スタンリー「リドル坊が言うなら、それにアイツらを出し抜けるなんてワクワクする」
キチョウ「決まりね。私のことは姫様と呼びなさい。訳あって、名前はまだ名乗れないの。だから姫様で、良いわね?」
リドル「お、おぅ姫様」
さーて、楽しくなってきたわ。
孤児院は焼かれたけどまた私の城を作れるんだもの。
それに、この世界に向こうの世界を模した建築物が現れたらあの珍しいもの好きな殿のことですもの。
気になって、自ら出てくるわきっと。
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