52話 番外編(都落ち)
タルカ領の盗賊リャックダッツ・タノシーナとチャルチ領の将軍コロシノ・タツ、キチョウ・プリストの身柄を確保するという目的を同じとする2人による会談が行われた。
リャックダッツ「アダムスの奴に娘を殺して、デイル様の支配から脱却するとでも言われたか?」
コロシノ「いきなり喧嘩腰か…これだから賊は…いやいやすまない…こちらはタルカ領の者たちを手伝うようにとアダムス様に言われただけのこと」
リャックダッツ「ガキの手伝いなら不要だ。とっとと帰って、ママのおっぱいでも吸ってろ」
コロシノ「ママのおっぱいなら来る時に十分に吸ってきた。親父がそっち方面で全く頼りなくてな」
嫌味を冗談で返してくるコロシノにリャックダッツはイライラしていた。
リャックダッツ「そうかいそうかい。じゃあ、尚更ママが心配だろう?帰って貰って結構だぜ」
コロシノ「まぁ、そう邪険にするな。目的は同じなんだ」
リャックダッツ「アァ?目的が同じだ?こっちは、生きたまま連れて来いって言われてんだよ!テメェんとこの娘を娘とも思わないクソ領主と一緒にすんじゃねぇよ!」
コロシノ「異端者がアダムス様の娘なわけが無いだろう。それにこれは、アダムス様が認めた密書だ。これを見ても俺たちを邪険にするか?」
リャックダッツはコロシノの手にある密書を強引に奪い取り、確認する。
『我らチャルチ領は異端者の住むマリーカ領をアイランド公国のために誅するものである。これに協力してくれた際には、我がチャルチ領にできることならなんでもすることを約束すると誓おう。チャルチ領総督アダムス・プリスト』
リャックダッツ「なんでもだと。このこと嘘じゃ無いんだろうな?」
コロシノ「勿論だ。これさえあれば、あんな異端女の身柄など必要ないだろう…どうだ身柄を拘束するなんてことにとらわれるから被害を出すんだ。こんなボロい孤児院など焼き払えば良いのさ」
リャックダッツ「成程…面白い!俺も身柄の拘束なんて事には、飽き飽きしてたんだ。良いだろうテメェらに乗ってやる」
コロシノ「馬鹿で…ゴホン。英断に感謝するよ」
リャックダッツ「おい、聞いたかテメェら!ありったけの日を待ってこい!孤児院を全焼させるぞ!」
こうして遠目から守るべきキチョウ・プリストのいる孤児院に火をつけられるのを見てしまったリチャード・バルケス。
リチャード「クソッ!兄さんは本当にキチョウを殺すつもりなのか。子を。こんな事許されて良いわけが無い!皆、急げ!例え、兄と血を血で争う事になろうともキチョウを必ず救い出すのだ!」
ガルダン「御意!」
一方、火に包まれそうにある孤児院内では。
カイト「ほら言わんこっちゃない。姉貴の締め付けが響いて、アイツら火を点けるっていう強行手段にでやがった」
カトリーヌ「やむを得まいか。この孤児院を奴らに渡すぐらいなら火で消失させる。カイト、お前は皆を連れて、マリアンヌ様、考案の地下洞窟へ避難するのだ。フローラは、ここの床に奴らの死体を並ばせておけ!」
カイト「ったく人使いの荒い姉貴だぜ全く」
フローラ「かしこまりました団長」
キチョウ「あぁ。せっかく作った私のお城が…まぁいっか命あっての物種だしね」
ルノー「マリアンヌお姉…ゴホン、マリアンヌ様ならそう言ってくださると思っておりました。さぁ、こちらへ地下で奴らをやり過ごしましょう」
燃え広がるまで時間のかかる構造で作ったのが幸いして、皆が地下洞窟へと避難するまで、火事で焼け死ぬのは、向こうが散発的に送り込んできていた盗賊たちの死体で、それは自分たちの死を偽装するカモフラージュとして、利用されるのだった。
その頃、孤児院を囲んでいたタルカ盗賊とチャルチ軍の連合軍にリチャード・バルケスのマリーカ軍が襲いかかった。
リャックダッツ「クソッタレどもが!デイル様からは、しばらく動かないって聞いてたんだがな。ええい!こうなったら迎え撃てテメェら!」
タルカ盗賊「ですがカシラ!こっちは結構な兵を孤児院に立て篭もる奴らにやられて」
リャックダッツ「んなもん周りの金に飢えてる連中を雇って…ガハッ。お前、どうして?」
コロシノ「御役目、御苦労さん。これでアダムス様は、テメェらの支配から解き放たれるよ。忌々しい忌み児は消え、搾取するお前らも消えるんだからよ。ついでにアダムス様はマリーカ領も得られて万々歳。あ!動くなよ。お前らもこんな横暴な奴に従うのは辛かっただろ。俺が雇ってやるよ。コイツの倍でな」
タルカ盗賊「ヘヘッ。旦那は話が分かるぜ。カシラ、そういう事なんで、俺たち抜けさせてもらいますわ」
リャックダッツ「クソが。ぐぇぇぇぇぇぇ」
深々と短剣で刺し貫かれリャックダッツ・タノシーナは、事切れた。
コロシノ「さて、マリーカ領をアダムス様の土地にするには兵が足らんな。ここは、さっき俺が切り殺したアダムス様の文句を言った兵の亡骸に協力してもらうとするか」
この後、チャルチ軍も立ち去って燃え広がる孤児院を前にリチャード・バルケスの嗚咽だけが悲しく木霊したのだが、翌日火が収まった後、灰となった数多の遺体を見聞して、リチャード・バルケスは元気を取り戻した。
遺体はどれも成人男性のものであり、女性のものは無かった。
それどころか、地下空間のようなものを発見し、無事に逃げ出したのだろうと…そう判断して、これから起こる兄弟喧嘩に巻き込まぬよう…決してその足取りを兵たちに追うことは禁じ、マリーカ領の守りを固めるのであった。
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