51話 番外編(マリーカ内乱の始まり)
リチャード・バルケスの側近であるドルマンがタルカの盗賊とチャルチ軍が固めていると言ったスラム街の一角の孤児院。
それはリチャード側から見た状況であり、キチョウ側から見た状況とは少し異なっている。
フローラ「団長!奴ら被害を拡大しているのに一向に諦める気がありませんね」
カトリーヌ「あぁ。何が何でもマリアンヌ様を人質に取りたいのだ。そのための捨て駒が奴らなのだろう」
ルノー「団長!敵の動きが包囲に切り替わっています!」
カトリーヌ「フン。やっと無理攻めはやめて、兵糧攻めに切り替えてきたか。カイト、備蓄はどうなっている?」
カイト「スラムの連中に少し前に配ったばかりだから余裕はない」
カトリーヌ「なら、備蓄を増やすのをスラムの民に協力してもらうとしよう」
カイト「うわー使えるものは何でも使う。やっぱり鬼だ」
フローラ「それが団長の良いところよ。カイトも早く決断できる男になってね」
カイト「う、うん」
キチョウ「(これってフローラから遠回しに早く団長に私とのこと話してよって言ってるよね?うん私もそう思う。だって、カトリーヌは鈍感だからきちんと言葉で伝えないと一生伝わらないと思う。頑張ってねカイト)」
カトリーヌ「ルノー!スラムに潜伏してるうちの連中と連絡は取れるか?」
ルノー「団長!少し時間はかかりますが可能です」
カトリーヌ「良し!なら、可能な限り多くのスラムの民に戦に参加するように伝えよ!向こうの食い扶持を減らしてこちらの食い扶持を増やすぞ!」
カイト「うわーやっぱりえげつないこと考えてる。スラムの民を向こう側で参加させて、兵糧攻めをこちらから仕掛けるなんて」
カトリーヌ「フン。兵糧攻めを仕掛けるのなら兵糧攻めを仕掛けられる覚悟も持つことだな」
キチョウ「えぇ。向こうにできることがこちらにできないことは無いものね」
この状況にイライラを募らせていたのは、タルカ領主に命じられて、リチャード・バルケスのアキレス腱と言われているキチョウ・プリストの身柄を抑えようとしていたタルカ掠奪部隊の隊長リャックダッツ・タノシーナ。
リャックダッツ「ええい!たった1人の小娘の身柄を抑えるのに一体どれだけの時間がかかっている!立ち塞がる者は、全て切り捨てろと言っているのだ!そんなこともできんのか!貴様ら!」
タルカ盗賊A「頭!そんなこと言ったって、アイツら中々の手練れ揃いですぜ!うちの連中がどれだけ死んだことか」
リャックダッツ「死んだら補充すれば良いだろうが!ここは何処だ?スラムだろうが!そこらへんに利用できる駒が転がってるだろうが!そんなこともわからんのか馬鹿ども!」
タルカ盗賊B「んなこと良いやしても。あんな死人同然の連中、何の役に立つって言うんです?ここは、じっくりと包囲して」
リャックダッツ「そんなことしてる間にチャルチの奴らがここに到着して、ややこしいことになるだろうが!」
タルカ盗賊C「いや、頭。ここはいっそのことチャルチと協力するのはどうだ?」
リャックダッツ「アァ?そんなことしたらチャルチの奴らに身柄を押さえられちまうだろうが!」
タルカ盗賊C「そうです。でもチャルチと利害は一致してるはずだ。チャルチのアダムスは、娘がアイランド公国で禁止されてるセイントクロス教の信者であることを知られたく無い。俺たちは、アダムスとリチャードを効率よく利用するためにアダムスの娘でリチャードのアキレス腱を押さえたい。その生死は、関係ないだろう?」
リャックダッツ「成程。確かに一理ある。お前らも文句ばかり言ってないで、No.3のように有意義な提案をすることだ!分かったか!俺は少し席を外す」
リャックダッツは横暴な態度で、同じ盗賊仲間だろうが名前で呼ぶことはなく、No.1とか雑な呼び方であった。
タルカ盗賊A「クソッ頭は一体何様なんだ!」
タルカ盗賊B「そりゃ俺様だろ。さっきは助かった」
タルカ盗賊C「あぁ。さっきは、あのように言ったが頭が癇癪を起こすとこの辺り一体を燃やしかねない。クライム様からは、必ず身柄を押さえるように言われている。それは殺さないようにということだろう」
タルカ盗賊D「しかし、相変わらずクライム様もとんでもないことを考える。扱いやすい馬鹿を上にしておいて、その裏から俺たちがうまくコントロールできるように考えているのだから」
タルカ盗賊C「横暴で暴力を振るわれようが耐えるしかないのを除いてだがな」
タルカ盗賊B「違いねぇ。だが、アイツら思った以上にやりやがる。やっぱり干上がらせるのが1番良いだろうな」
タルカ盗賊A「あの王様気取りの馬鹿の無理攻めのせいで、こちらも少なくない兵を減らしたからな」
タルカ盗賊C「ふむ。身柄を押さえるのも一苦労ときたら、チャルチの連中をうまく利用するしか無い」
タルカ盗賊D「頼りにしてるぜリーダー」
タルカ盗賊C「あぁ」
一方、チャルチ郡領主のアダムス・プリストの命を受け、こちらもキチョウ・プリストの身柄を押さえるためにマリーカ郡へ進軍しているチャルチ軍の将、コロシノ・タツ。
コロシノ「既にタルカの連中も動き出していたか。奴らよりも早くアダムス様の手を煩わせるじゃじゃ馬を捕らえ、事故に見せかけて殺さねばならん」
チャルチ兵A「ですが信仰してはいけない宗教を信仰してるだけという理由で本当に殺す気なの……」
チャルチ兵B「ひぃぃぃぃぃぃ」
コロシノ「他にアダムス様の決定に反対の奴は居るか?居るなら出てこい。不和の種は今のうちに摘んでおいてやる」
チャルチ兵C「イエス、ボス!オレタチ、メイレイ、シタガウ!」
コロシノ「何、カタコトになってるんだ?怪しいな」
チャルチ兵C「ア、アヤシクナイ!ホントウネ!」
コロシノ「まぁ、良い。お前ら、情け見せて、あのじゃじゃ馬を逃そうとしやがったら生きて帰れると思うなよ?」
チャルチ兵C「オーケー!オーケー!」
この後、意外にも馬があったコロシノとリャックダッツとの間で、一時的な共闘関係が築かれることとなるが、それでも攻め落とすに至らない。
それもそのはずで、この孤児院の設計にはキチョウ・プリストが全面的に関わり、防衛機能を持つ要塞のようになっていたのだ。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ブックマーク・良いね・評価してくださいますと執筆活動の励みとなりますので、宜しくお願いします。
それでは、次回もお楽しみに〜




