50話 聖十字騎士団
さらに時は少し遡り、マリーカ郡の孤児院で子供たちの世話をしているキチョウ・プリスト洗礼名ォマリアンヌと言う、その側には、1人の騎士が居た。
カイト「マリアンヌ姉ちゃん!ゲゲッ姉貴も居たのかよ」
カトリーヌ「実の姉の顔を見てゲゲッとは何ですか?貴方もマリアンヌ様を守る騎士の1人になったのでしょう?いつまでも、マリアンヌ様に対してその呼び方はダメだと言っています」
カイト「うっせぇ!うっせぇ!うっせぇんだよ姉貴は。別に俺がマリアンヌ姉ちゃんって呼んで不都合無いだろ!」
キチョウ「そうですよカトリーヌ。私はいつまでもカイトのお姉ちゃんなのですから、それはカトリーヌもですよ」
カトリーヌ「いえ、そういうわけには参りません。マリアンヌ様をお守りする騎士の規律がこれでは困ります」
キチョウ「ふふっ。全く、昔から言い出したら聞かない妹だものねカトリーヌは」
カトリーヌ「歳はマリアンヌ様の方がお若いですが」
キチョウ「同い歳ぐらいでしょ」
カトリーヌ「私、今年で22になりましたが」
キチョウ「あ、そうなのね。私は、見た目は18ね。でも心はだいぶお姉さんだから」
カトリーヌ「分かっています」
皆はこの者たちを覚えているだろうか?
サブロー・ハインリッヒこと織田信長がこの地に転生して間もない頃、王都キュートスクへと呼び出される時に通ったマリーカ郡で、男装して弟の名を騙り兵士見習いをしていた女性である。
当時16歳だった女性も成長するにあたり晒しで隠せないほど大きく成長し、今ではキチョウ・プリストの侍女兼護衛隊長を務める程に成長した。
そして、当時12歳だったカイトは、今や18歳となり、キチョウ・プリストが新設した聖十字騎士団の新米兵士として、日夜姉のカトリーヌにこき使われている。
そして、あの時孤児第1号だった者の多くがキチョウ・プリストの聖十字騎士団に所属している。
キチョウ「それにしても叔父様の騎士団に入りたかったのに、私を選んで良かったのカトリーヌ?」
カトリーヌ「それこそ、今更でしょう。私は姫に見出され騎士を目指したのです。当時は、その先にリチャード様の騎士団しか無かっただけのこと。こうして女性であろうと騎士として取り立てるマリアンヌ様の元には、腕自慢の女たちも集まってきていますし、元騎士団見習いの私も扱き甲斐があります」
カイト「姉貴のあれは、扱きの領域を超えてるんだって!」
カトリーヌ「マリアンヌ様をお守りする騎士団が弱くて良いわけが無いでしょう。あの程度の扱きに付いて来られないのなら潔く騎士の道など諦めるべきです」
カイト「ちぇっ。姉貴はてっきりリチャード様の親衛隊に入ると思ってたから楽できると思って、マリアンヌ姉ちゃんの騎士団を選んだのに、帰ってくるんだもんな。最悪だぜ」
カトリーヌ「そうですか。そうですか。まだまだカイトは余裕があると。なら、腕立てとスクワットとランニングと兎跳びと反復横跳びと」
カイト「待って待って待って、そんなにしたら足腰立たなくなるから!」
カトリーヌ「えぇ。そのつもりですが何か?」
カイト「鬼!同じ母さんから産まれたと思えねぇよ!」
カトリーヌ「文句言わないで直ぐやる!」
カイト「チクショー」
キチョウ「フフフ。あんまりカイトのことを虐めてはダメよカトリーヌ」
カトリーヌ「大丈夫です。アイツは、サボり癖があるだけで、言われたことはきちんとやりますから」
キチョウ「そうね。まだ新米なのに、副団長のフローラが中々見どころのある男ですって言ってたわ」
カトリーヌ「そうですかカイトのことをフローラが甘やかしていましたか。きつくお仕置きしておきましょう」
キチョウ「あら、弟を取られるのは嫌って事かしら?」
カトリーヌ「そうですね。まだまだ可愛い弟で居てもらいたいですね」
キチョウ「今頃、フローラに泣きついている頃よきっと」
カトリーヌ「にしても本当にマリアンヌ様が作られた聖十字騎士団は、女性の割合が多いです」
キチョウ「それだけ、見所のある者たちが女性の中に多く居たってことよ。それにしても、今日は偵察隊の報告が遅いと思わない?」
カトリーヌ「そうですね。何かあったのかも知れません」
???「マリアンヌ様!良かった!早くお逃げください!タルカの盗賊どもがここに迫っております!」
カイト「ゼェゼェハァハァ。ルノーが言ったタルカの盗賊だけじゃねぇ。チャルチ軍の連中まで、来てやがる。まさか異端者としてマリアンヌ姉ちゃんの命を狙ってるんじゃ」
キチョウ「やれやれお父様には本当に困ったものね。何を信仰するかが大事じゃなくて、拠り所が大事だってことに未だにお気付きになられないなんて」
カトリーヌ「カイト!聖十字騎士団をすぐに集めなさい!フローラにもこのことを伝えて、私たちは奴らには屈しない!今こそ、私たちの力を見せつけるときです!」
カイト「疲れてる俺にまだ走れって言うのかよ!」
カトリーヌ「では、フローラの元には私が行きます」
カイト「いや、フローラの方は」
カトリーヌ「フローラ?」
カイト「いえ!フローラ副団長の方には僕が行きますので、お姉様は聖十字騎士団の方をお願いします」
カトリーヌ「嫌です!フローラの方に行きたいのなら両方、貴方が行きなさい。それなら許可します」
カイト「チックショー鬼!鬼姉!ヘトヘトで満足に戦えなくて、フローラに良いところ見せられなかったら一生恨んでやるからな!」
キチョウ「ふふっ(あんなに副団長のことを呼び捨てにしてたら流石に鈍感なカトリーヌでも気付くはずよね)」
カトリーヌ「フローラに良いところを見せても私からの扱きが優しくなることはありませんよ」
キチョウ「えっ?(あれっこれ分かっててやってる?それとも本当にわからない?どっち?まぁ、フローラとカイトの年の差が10も離れてるし姉として心配なのは分かるけども。それにしても鈍感すぎなのじゃ無いかしら)」
新しく孤児院を新設したスラム街の一角、ここには多くのスラムの民が住んでいて、その多くがキチョウ・プリストの世話になっていた。
今、タルカの盗賊とチャルチの軍とキチョウ・プリストを巡る戦いの火蓋が切って落とされた。
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