48話 英雄はのらりくらり
反オダ派の連中を罵倒で追い返したリドルは、今度は隘路方面からやってきた親オダ派の連中を防いでくれているマッスルの元へと向かうことはせずに、村の中へと戻った。
その頃、隘路に完全に挟まってしまったマッスルは、親オダ派の者たちに協力してもらい押し出してもらおうとしていた。
親オダ派「ぐぬぬぬぬ。どうじゃ?抜けそうか?」
マッスル「全然、無理なんだなぁ」
親オダ派「一体どれだけ食べれば、デブ……いやこんな体型になるのじゃ」
マッスル「デブ?今オラのことデブって言っただか?オラはデブじゃない、マッスルなんだなぁ!」
親オダ派「な!?恐ろしい圧じゃ……これはまずい。す、すまなかった」
マッスル「わかれば良いんだなぁ。それにしても朝食べた米10杯が響いたんだなぁ」
親オダ派「米10杯じゃと!?」
マッスル「そうなんだなぁ。オラ、オダの領主様に仕えてるポンチョ様に憧れてるんだなぁ。いつの日か相撲とやらで勝負してもらえるようにいーっぱい食べてるんだなぁ」
親オダ派「はぁ。じゃが、良いことを聞いた。そのぽっちゃりなんたらに会いたいならワシらに協力して、反オダ派の連中を駆逐するんじゃ!そしたらオダの領主様を招き入れられるぞい」
マッスル「ぽっちゃりなんたらじゃない、ポンチョ様なんだなぁ!そもそも、オダの領主様の側近の名前すら知らないのに、どうして招き入れられるのかオラには難しい話はわからないんだなぁ」
親オダ派「それはこの地を完全にオダの領主様に渡すからじゃ。手土産は必要じゃろう」
マッスル「そんなことしなくてもタルカの主要都市のほとんどは、もう落ちてるんだなぁ。悪戯に命のやり取りをしてるアンタらときっとオダの領主様はお会いにならないと思うんだなぁ」
そう、この地の民の英雄は、リドル1人を指すわけではない。
最初に物見から到来を報告したスタンリーは、鵜の目鷹の目を持つ英雄と称される天才児で、その弓の腕前はタルカ1番との呼び声も高い。
そして、このマッスルものらりくらりの英雄なんて呼ばれている。
このおっとりとした話し方といかにも農民にしか見えない見た目に騙されて、いつの間にか交渉してる方が不利になっている交渉話者である。
親オダ派「農民風情が何を偉そうに!主要都市だけがタルカではないわい!それもわからぬとは、さっさとそこから退かぬか!」
マッスル「退けたら退いてるんだなぁ。後、そのことを理解してるのに悪戯に血を流していることにガッカリなんだなぁ。とこの話し方はここまでにしておこう。やれやれ、馬鹿なアンタらにもわかりやすい口調で話してやるよ。このタルカはな。そもそも元からオダの領主様の土地だ。それをどっかから来た馬鹿が横取り……あぁそいつはマジカル王国からのスパイだったんだけどな……って知ってるか?知らねぇよなきっと。知らねぇってこと前提で説明してやるほど暇じゃねぇんだよ。後、人を見た目で判断すると後悔することになるぞ。お前らの探してる英雄が1人だなんて、誰か言ったか?言ってねぇよな?俺もお前らの探す英雄の1人の可能性は考えなかったのか?その時点でテメェら馬鹿どもは、交渉の席にすら付く価値がねぇんだよ。あー武力行使するなら、死ぬ覚悟して来ることをお勧めするよ。俺らは、マジカル王国のスパイに尻尾振ってた連中が今更親オダ派とか名乗ってもなーんも響かねぇからよ」
親オダ派「な!?お前が英雄殿じゃと!?馬鹿なやりとりはいつも16歳にしては少年にしか見えないと報告を受けておった。あり得ん!」
マッスル「まぁ、表に出るのはリドルの役目。そうすりゃ大概は英雄が1人だと思い込むからな。ちなみに……ゴホン。オラ以外にも英雄は居るんだなぁ……って事で、お前らとの交渉は決裂だ。あー、お前らを倒すために反オダ派と手を結ぶかもなぁ。せいぜい、後ろに気を付けておけよ。刺されるかもしれねぇからなぁ」
親オダ派「ならお主だけでも今、殺すだけのことじゃ!ひぃっ」
マッスル「おいおい、そんなに怯えて大丈夫か?頬を矢が掠めただけじゃねぇか。あー、言い忘れてたけどよ。うちの村、腕の良い射手が沢山いるんだ。今のは警告のつもりと受け取って、大人しく帰ってくれるよな」
コクコクと頷く親オダ派の交渉人。
マッスル「じゃ、また会う時は戦場で……と強い者に巻かれるために村民を道具に使う愚かな貴族に帰ってお伝えください」
親オダ派「そ、その言葉。そちらが後悔することになりますぞ」
マッスル「裏では、反オダ派の貴族ともつるんでいるからですか?」
親オダ派「な!?」
マッスル「それでは、ここらで失礼するんだなぁ」
親オダ派「馬鹿な!?完全に挟まっていたのでは無かったのか!?」
マッスル「オラが頼まれたのは、親オダ派の皆様の足止めなんだなぁ。オラのことを殺すそぶりを見せたらこの大斧で、真っ二つにする予定だったんだなぁ」
親オダ派「ぐっ。英雄が1人と読み違えた」
マッスル「あぁ、あの話は嘘なんだなぁ。そもそも相手が安全かどうかもわからないのに英雄が出てくるわけないんだなぁ。見事に騙されてくれて、嬉しいんだなぁ」
親オダ派「くっ!ワシらは初めからこの農民風情の掌の上で転がされたと言うのか。クソッ!」
マッスル「ちなみに、見た目が16歳にしか見えない少年も英雄ではないんだなぁ。情報不足なんだなぁ」
親オダ派「な、な、なんじゃと!?おのれ、ワシらをコケにしよって、その首洗って待っているが良いわ!」
一目散に逃げていく親オダ派の連中を見て、マッスルは一言。
マッスル「弱い犬ほどよく吠える……さて、親オダ派が反オダ派と裏で手を結んでいるのは明らかとなった。ここから忙しくなりますよ姫」
姫「ふふっ。それにしてもマッスルったらリドル坊やからの頼まれごとのために本当に挟まるなんて、面白すぎますわよ〜。プククッ」
マッスル「笑っている場合では無いかと……まぁオラも姫に見出された英雄の1人として、己の任務を全うするとしますよ。普段は畑を耕しながら」
姫「ふふっ。昔、殿がお考えになられました兵農分離もいいですがこの世界は屯田兵の方が合っている気がします。でも殿の事だからもっと面白いものを見せてくれるのでしょうね。お会いするのが楽しみです」
マッスル「何かおっしゃられましたか姫?」
姫「ふふっ。遠い昔の良い思い出と再会に心トキメカせているだけです」
マッスル「はぁ」
そう、オダとタルカの戦が始まると同時に多くの村民を何もなかった場所に集めて、たくさんの英雄を見出した観察力と洞察力の優れた目を持つ真の英雄が居た。
皆から姫と呼ばれていて、その名を知る者ですら人前では姫と呼ぶ程、撤退されていた。
ただ、彼女の容姿は修道女のようであり、彼女に付き従う多くの子供達がいて、その傍らには1人の武芸者が侍っていたそうだ。
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