43話 火を噴く兵器
カメレオンが森の中へ入ってしばらく経つが何の連絡もないまま野営をして待つデビルファイアの面々。
デンデロン「やはりエルフやドワーフが隠れているとしたら森の奥なのであろうな」
ヴァルカス「だろうな(陛下は新たに土魔法使いと風魔法使いの部隊を組織するのだろうな。我ら火魔法使いが花形でいるために、何としても手柄を立てる必要がある。大事な仲間たちを守るために)」
デンデロン「また考え事か。1人で悩むな」
ヴァルカス「あぁ」
トゥルルルトゥルルル。
デンデロン「噂をすれば、通信だ」
カメレオン頭領?「こちら、カメレオン頭領だ。森な異変あり!デビルファイア諸君も速やかに森に入られたし!」
デンデロン「おい、それはどういう事だ?」
カメレオン兵?「頭領早く!ぐっ!コイツら小さい癖にちょこまかと。ぬわっ」
デンデロン「ボキッという音がしたがどうした?何があった?情報を情報を求む!」
ツーツーツー。
ヴァルカス「どうやらドワーフとやらは、カメレオンが苦戦する程の相手のようだな」
デンデロン「みたいだな。どうするヴァルカス?」
ヴァルカス「無論、カメレオンの手に負えない以上、我らも参戦するしかあるまい。だが敵はタルカ攻略に忙しいはずなのに明らかにこれは異様だ」
デンデロン「あぁ。まるで手ぐすね引いて待ってるかのような薄ら寒さがある」
ヴァルカス「デンデロン!少しでも怪しいと思ったら森を焼けるように準備をさせておけ!」
デンデロン「承知した」
敵の進軍を確認するサブロー付き護衛兼世話係のアヤメは、しゅたっと木の上から着地するとサブローの元に報告に向かう。
アヤメ「サブロー敵襲!敵襲だよ〜!」
サブロー「であるか」
アヤメ「であるかじゃないよ!直ぐに鉄砲隊とやらの準備、あ!もう済んでるんだね」
サブロー「うむ。モリトキからの連絡をみるに、今日あたりに進軍してくるだろうと呼んでいた。アヤメよ長い間木の上での見張りと報告御苦労であった」
アヤメ「サブローのためならなんてことないもん」
サブロー「しかし、奴らも軍人ですらない密猟者の馬鹿どもを律儀に待つとは……上下関係がしっかりしてあるとみえる。皆の者!今から敵が来る。だが臆するな!我らにはこのタネガシマが付いている!今まで、散々利用してきた奴らの度肝を抜いてやろうぞ!敵が森に入り怪しい動きを見せ次第、第一陣から順に放つのだ!」
サブローはこちらの世界でも火縄銃のことをタネガシマ伝来にちなんで、そのまま呼ぶことにした。
そして、サブローは弓隊とは別に鉄砲隊を組織するべく、その運用方法を考える点で、ロレンスから聞いた面白い案を試すことにした。
サブロー「ヨコヅナ!準備はできたか!」
ポンチョ「おいどんたちが本当に鉄砲とやらを撃つんでごわすか?」
サブロー「不満か?」
ポンチョ「不満だなんて、滅相もないでごわすよ。だけれども、いくらなんでも敵が近付くまでやる事がないから撃つとは思わなかったでごわす」
サブロー「頼りにしておるぞ!」
セル「ガタガタガタ。サブロー様からの大事な作戦を失敗したら……失敗したら」
スナイプ「そんなに緊張するなってセル。俺たちもいるからよ」
ウマスキ「そうよ。私だって本職は騎馬なのに、鉄砲は非力な女性でも扱えるから良い経験だって言われたのよ」
確かにロレンスの言う通り、戦場で敵が来る間にも遠距離で一撃即殺ができるなら皆が使える方が望ましいと言えよう。
それに弓のように専門的な知識が無くても扱うだけなら扱えるというのも鉄砲の良いところでもある。
サブロー「敵が魔法の詠唱を始めたら間断なく撃ちかけよ!この実り豊かな森を燃やさせるわけにはいかぬ!」
皆が頷いたのを見て、サブローは『デビルファイア』を待ち受けるのだった。
デンデロン「不気味な森だ。ドワーフはこの豊かな森を利用して、カメレオンを手玉に取ったのかもな」
ヴァルカス「だと良いが(進めど進めどまるで景色が変わらん。カメレオンの連中が実は迷ったとかならまだ良いが。あの悲鳴を聞く限り、そうではないだろう。となると『ドワーフ』が海でなら敵がいないが陸にあげて仕舞えば弱くなる『マーメイド』や女ばかりで男に飢えていて、小気味良い言葉でホイホイ付いてくる『アマゾネス』と違いそれなりの戦闘能力を有しているという事である。そこに魔法攻撃も弓攻撃も得意と聞く『エルフ』まだいるとなると……できれば後学のために、生きて捕らえたいが……そうしようとして『カメレオン』が失敗したとも考えられるか。我らまでそれに乗る必要はないだろう)魔法の詠唱を始めよ!ドワーフとエルフの魔石だけを回収する」
詠唱を始めようとした『デビルファイア』の面々が轟音と共に次々と倒れる。
デンデロン「な!?一瞬で、100人の魔道兵が。な、何が起こったんだ!」
ヴァルカス「一体どこから?やはりこの森は危険だ。炎にて焼き払うのだ!」
しかし詠唱の間を待つほどサブロー・ハインリッヒは甘くはない。
次々と撃ちかけられる鉄砲の餌食となり、ヴァルカス・フォン・シュタインが撤退を決める頃には『デビルファイア』の数は、たった数人であった。
マジカル王国による圧倒的兵力を用いての魔法による殲滅作戦がサブロー・ハインリッヒ考案の火縄銃により壊滅的打撃を受ける。
豊かな実り溢れる森の先の平原をナガシノハラということから、マジカル王国では後にこの敗戦を『ナガシノの悲劇』と呼び、勝ったオダの民たちは戦力差10倍であったにも関わらず犠牲者が誰も出なかった事から『ナガシノの奇跡』と呼ぶようになった。
そして誰が言いだしたか火縄銃のことを若殿様考案の火を噴く兵器とオダの人々に親しまれるようになる。
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それでは、次回もお楽しみに〜




