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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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12話 国潰しの始まり



「で、どこにユリアはいるのじゃ?」


 ユリアを助けに行くために高速で飛ぶティオルに乗りながらアルデ達に状況を説明する。


「えっと、隣の国のゲンダルフィンってとこらしい、だったよな?」


 ここまで勢いで来たが、俺自身はっきりわかってないのでエミリに確認する。

 と言うか、俺がいる国がエンスラッドという名前だったのもこの前知ったぐらいだし。俺がいる街の名前すら知らなかった。


「そうです。目指す国はゲンダルフィン。その王都ウォンキッドの王城の中です。その中のどこにいるかはわかりませんが。その国の勇者達に攫われたのは確かです」


「ふむ。城の中にいるのなら、妾がどこにいるか見つけられるのじゃ」


 エミリの言葉にアルデが頷く。


「へー、そんな便利な魔法でもあるのか?」


「魔力探知でどうとでもなるし、「透視」でも使えばよいのじゃ」


 アルデが簡単にユリアを見つけられると言った。

 それだけでアルデも呼び出して正解だった。


 しかし、その魔力感知ってのを俺にも教えてほしい。


「アルデちゃん凄いですね。安心しました」


「本当ですね。この前見た時からお嬢ちゃんはてっきり春原さんの妹だと思っていたから。別に戦力だと考えてなかったけど、そんな魔法が使えるなんてすごいな。でも俺は勇者だからな、危ない時があったら俺が助けてやるぞ、お嬢ちゃん!」


 そう言ってドヤ顔をしながらアルデの肩を叩く健治だが、アルデの琴線に触れる発言をしてしまったようで。


「貴様、妾の事をお嬢ちゃんだと言いおったな……?」


「……え?」


「妾はお嬢ちゃんじゃないのじゃー!!」


「えっ!? ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 アルデの右ストレートが健治の顔面にクリーンヒットした。

 ついでにその勢いのままティオルから落ちていった。


「おいおい!! ティオル、拾ってやってくれ!」


「わかった」


 すぐにティオルに命令をして健治を拾ってもらう。

 俺も言っていなかったから悪いが、無事に拾えたからいいだろう。

 しかし、アルデの攻撃を食らっても生きてるって事で腐っても勇者なのだと再確認した。


「はぁ、はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」


「だ、大丈夫ですかケンジ様!? 『キュア』!」


「ありがとうございます……王女様。こんなにお嬢さんが強いだなんて……」


「ん?」


「す、すみません!! アルデさん!!」


「うむ」


 可哀想に、アルデにビビらされてしまって。


「まあ、健治の事は置いておいて話を戻そう」


「春原さん!?」


 健治が何か言いたさそうな顔をしているが、無視して話し始める。


「改めて今回の目的は攫われたユリアを助ける事。目的地はゲンダルフィンの王都ウォンキッド! 王城に着いたらまずアルデがユリアの居場所を見つける。そしてこの国を潰す!」


「はいっ……えっ!? 潰す!?」


「はい! いい作戦ですねおにーさん!」


「王女様!?」


 エミリは俺の意見に賛同しているが、健治は戸惑っている。


「一国を潰すか! ふははははっ! それは最高なのじゃ!」


「主も面白い事を考えるな! 腕がなる!」


 アルデとティオルも同調する。


「ちょっと春原さん!? 本気で言っているんですか!? もっと平和的な行動で……」


「何を言っているのですかケンジ様? ユリアを攫ったのですよ? こんな危ない国を放置していい訳がありません。今は最強戦力があるのです。できるなら潰しましょう!」


「なっ……」


 エミリの言う通りだ、健治はなに悠長な事を言っているのだろうか。

 しかし、エミリも中々過激な事を言うようになったな。こりゃ、お父さんも真っ青だわ。


「じゃあエミリ、作戦はこんな感じだ。まずはティオルを……」


「ふふっ。それはいいね。だったらこの方が……」


「なる程。それがいいな」


「おにーさん完璧じゃない?」


「だな?」


 俺とエミリは黒い顔をして作戦を練る。エミリも口調が戻るぐらいノリノリだ。


 はははっ!

 あの国の絶望に満ちた顔が目に浮かぶ!

 実際らどんな国なのこ全然知らないけどな。


「主、国が見えて来たぞ? あれが城か?」


 王都を出てから数十分。

 少し遠くに壁に守られている巨大な街が見え、その中心らしき所に大きな白い建物が見える。

 あれがゲンダルフィンの王都ウォンキッド、そして王城なのだろう。


「本当だな! エミリ、あれが城か?」


「そうです。ティオルちゃん、そのままあの城に向かってください!」


「了解した」


 ティオルがスピードを上げる。

 王都の周りにある村々を過ぎ、王都の上空に到着する。

 しかし、緊急事態の鐘すら鳴らない。

 それ程のスピードで上空を飛ぶ。


「よし」


 ここか、ここにユリアはいるんだな!

 俺達を怒らせた罪だ! 受けて貰おうか!


 そして、俺は高らかに叫ぶ。


「さてお前ら! 俺達の仲間に手を出した事を、後悔させてやれ!」



◇



 俺の名はクリフォード。

 この国、ゲンダルフィンの王都ウォンキッドの騎士団に入ってから数日が経つ。

 やっとの思いで入った騎士団はやりがいはあるが、思っているよりもすることがなかった。

 平日の昼間は訓練をして体を鍛える。そして飯を食い、また訓練をする。

 その日々は望んでいた騎士生活なのだが、鍛えた体を使う機会がなかった。それは末端の兵士が戦うことが無いからだ。

 つまり戦いに行くのはほとんど上の人たちで、騎士団のトップや、近衛騎士達だ。

 はっきり言ってあこがれの騎士団長は最強だ。近衛騎士長に限っては雲の上の存在であって、勇者様の次に強い。


 でもそんな騎士団に入れた事自体が名誉な事で俺の家族は周りに自慢している。だから俺は王城の訓練施設で訓練をしながら日々を過ごしていた。


 しかし、今日はなんだか忙しい。

 何かの準備を言われるがままにしている。


 俺みたいな下っ端の兵には何も伝えられていないが先輩が言うには、実はもうすぐ戦争をするらしい。

 明日か明後日には敵国の兵がこの国に攻めてくると聞いている。どの国なのかは知らないが、その準備で今日は稽古もなしで動きっぱなしだ。

 昼過ぎからずっと先輩と二人で組になり物を運んでいる。


「先輩、今回の戦争はどの国とするんですか?」


「ん? ああ、お前は戦争は初めてか。まあ、俺もどの国とするのかは知らないが、そんなに気にする事は無いぞ?」


「どうしてですか?」


「どうしてって、お前も知ってるだろ? この国の騎士団の強さを。俺ら下っ端は何もすることが無い。ただ戦争が終わるのを見守るだけだ。まあ、こんな感じで準備をするのが俺らの仕事だな」


 先輩は「戦争なんて面白くねーよ」と言いながら準備を再開する。

 先輩は戦争を経験したことがあるらしい。その時も今回みたいに準備をするだけで終わったようだ。

 

「多分今回も一緒だろ。敵が攻めて来るから国を守る形になる。それがこの国の得意な構図なんだよ。前にも話しただろ?」


 面倒臭そうに言う先輩の言葉を聞いて、前に説明してくれていたことを思い出す。


 確か……敵が攻めてきたら、まずこの国の最強の宮廷魔導士100人で上級魔法を撃ち放つ。

 大抵はこれで終わるのだが、その中でも生き残る奴がいれば近衛騎士数十人で討伐する。少なくとも先輩が見た戦争はそれで終わったらしい。

 つまり、近衛騎士団の下部組織になる騎士団は動く事は無いようだ。騎士団長は近衛騎士にも所属しているから動くのだろうが。

 まあ、俺達はいわゆる雑用係みたいなものだ。


 雑用ばかりはしたくない、なんでこんなところに入ったのか、それは周りの同僚も言っている。しかし、この騎士団には夢が詰まっている。最強になれるっていう夢だ。

 なんと、この国の近衛騎士になれれば王とその側近から加護を貰えるのだ! その加護によって自分の潜在能力を超えた力を手に入れられるらしい。

 つまり、俺もその力が欲しくてこの騎士団に入ったわけだ。


 そんな軍事力を持った国が負けるわけがない。

 しかし、もしそれでも突破されたら? そんなわけあり得ないが、もしもが起こっても心配なんていらない。

 この国には最強の勇者様がいるからだ!

 その勇者様はある魔王の幹部を10体討伐したという。それに魔王も倒したという噂すらある。そんな最強の勇者様がいれば何も心配することはないのだ。


 だから今回の戦争も簡単に終わり、俺達騎士団が出ることはないだろう。

 でも、一度でいいから俺もそんな戦いをしてみたいなとは思う。


「……ん?」


 そんなことを考えながら作業をしていると、ふと俺の影が消えた。

 いや、消えたわけではない、空が暗くなった!?


「な、なんだ!?」


 反射的に空を見上げる。


「えっ!?」


 その光景に声が漏れる。

 空では巨大な黒い影が傾いた太陽を遮り、周りを暗くしていた。


「先輩これは!?」


 意味が分からない現象に先輩を見るが、先輩はその影を凝視して何も喋らない。俺が知らないだけではなく先輩も何もわかっていない様子だった。

 そしてその影が太陽を完全に隠すように大きくなっていき……。

 それが何かはっきりと目に映った……。


 ……これって……あの影って……。


「ど、ドラゴンだぁっ!!」


 誰が叫んだ。


 ……は? 嘘だ! ドラゴンだって?

 どうしてそんなモンスターが!?

 最強種であるドラゴンがこんな所に来るわけがないだろ!?


 絶対嘘だ! そんなわけが……。


「っ!!!!」


 音を立て、勢いを殺さず巨大な何かが降り立つ。

 地響きが鳴り、激しく大地を震えさせ、暴風が吹き荒れ、周りにあるものを全てなぎ倒す。


「うわぁぁぁぁぁっ!! ……ぐふっ!」


 俺自身が暴風によって吹き飛ばされて転がり、壁に背中を強打する。

 それで転がるのは止まったが……。


「なん、なんだよ……これ……」


 俺は目を開ける。


「ひぃ……!!」


 目に映るのは凶悪な全貌。

 深紅の鱗に覆われ、巨大な尻尾を振り回す。

 全てを噛み殺すだろう鋭く尖った牙、見ただけで全てを殺す程の金色に光る眼、全長10メートルは余裕で超える巨体。


 その姿はまさしく、本や物語で聞いた……ドラゴンの姿だった。


「ゴアァァァァ!!!」


 今までに味わったことのない激しい咆哮。

 それだけで死にそうになる。


 ドラゴンの叫び声だけしか聞こえない。

 何も考えられない。もう終わりなんだと……。


 その瞬間、形を成した絶望がやって来たのだと俺は悟った。




      

ティオルの本気の咆哮なら一般人は死にます。

次回の更新は木曜日のお昼ごろです。

※すみません、昼頃は無理そうで、20時ごろになります……

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