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魔王は倒せるが、スライムが倒せない 〜最強魔王も倒せるけど、スライムが倒せないってどういうことですか〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第3章「封惑の魔王」

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13話 ウォンキッドの王城



「ゴアァァァァ!!!」


 ティオルが打ち合わせ通り激しい咆哮をする。


「いいぞティオル! 恐怖だ! 絶望をもたらせ!」


「ふははははっ! 面白いように人間が逃げて行くのじゃ!」


「ティオルちゃん凄い!!」


「な、なんだこれ……」


 アルデの言う通り兵士たちが面白いように逃げて行く。

 そりゃこいつの咆哮を聞いたら逃げたくもなるだろう。

 まあ、まともにティオルの咆哮を受けたら普通の人間は再起不能になるから、手加減をさせているけど。


「では妾達は行くのじゃ! エミリついて来るのじゃ!」


「はい! アルデちゃん!」


「そうだな! おいティオル! 言ってた通り手加減しろよ? 敵国と言っても兵士自身に罪はないからな。殺したらダメだからな!」


 罪もない人間を殺すのはやっぱり俺の倫理観的に厳しい。と言うか、人を殺すと事には抵抗がある。

 一応理由としては、生かしておくことで後々営利に動く事があるからにしているが。

 まあ、それが出来るぐらいの実力差があるから言え事なんだけどな。


「主の言う事だから守りたいが、ふと殺してしまうかもしれないぞ?」


「いや、それはダメだぞ。これも修行のうちだと思って動けよ。強くなるには魔力も力も微妙な使い分けが必要だ。殺さずに無力化はかなり難しい事だから精密な加減が求められる。大雑把にしてるだけなら誰でもできるからな」


「成る程! これも修行なのか! 主からまともな修行を教えてもらったのは初めてだ! 全力で頑張ろう!」


 ティオルが納得したように叫ぶ。

 手加減とか精密なコントロールとか俺自身した事ないんだけどな……。こいつが納得したのならいいだろうけど。


「じゃあ、行ってくる! 頑張れよ!」


「ああ! 高評価になる事を期待しててくれ!」


 ティオルはもう一度気合を入れるように吠える。

 その声で周りの兵士達は余計動かなくなってるんだけど。


「さて、行くのじゃ!」


 俺達はティオルから降りて、ユリアの場所を確認しているアルデの後ろにつく。

 アルデが目の前で魔法を使ったので俺も使えるはずなのだが、こいつが使ったのは「透視」なので俺は使えない。「メガネ」の能力がここでも邪魔をしてくる。

 と言うか、他にも魔法はあるはずなのにこれを選んだのは多分俺に対する嫌がらせなんだろう。

 これが終わったらロシアン串カツを食わしてやろう。


「見つけたのじゃ! ユリアは王の間にいるようじゃな」


「ホント!? ユリアは無事なの!?」


 アルデがユリアを見つけた様だ。


「うむ、生きておるぞ」


「よし!」


「良かったですね、王女様!」


「はい! 今生きてるとわかっただけでも良かったです」


 現状ユリアの無事を知って、安心した様にエミリが胸に手をやる。


「しかし周りに数人いるのじゃ」


「えっ?」


 しかしユリアの周りに危険はまだあるらしい。

 そりゃそうだ、まだ見つけただけで何も解決していない。エミリじゃ無いとわかったから殺されるかもしれない。


「危ない感じか?」


「いや、まだ大丈夫そうじゃが、剣を持っておる奴もいる。それに……魔力が普通の人間ではないのう。早く行った方がいいかもしれん」


「わかった。案内してくれ」


「アルデちゃんお願い!」


「うむ! 付いて来るのじゃ!」


 アルデが走り始める。とにかくアルデについて行くしか無い。

 アルデに続き、俺、エミリ、健治の順番で走る。


 するとアルデがふと振り返り俺を見た。


「あっ、そうじゃ! 一つだけ其方に忠告してやろう」


「なんだ?」


 走りながらアルデの話を聞く。


「貴様の能力……マイナス能力なんじゃが、その中に「面食い」と言うのがあるのじゃが。簡単に言うと美人の女にとても弱いという能力なんじゃが……」


「……は?」


 意味が分からなかった。

 待って、「面食い」? 俺って面食いだったの?

 いやまあ、誰だって美人の方がいいだろうが。でも能力の詳細が美人に弱いって……。


「……ちょっと待て! なんだそれ? またマイナス能力か? って、何で急に言うんだよ!」


 今からって時になに急に言い出すんだ!


「つまり、美人からの攻撃は全て受けてしまうわけじゃ。あと、美人からの命令が断りにくくなる。限定はされる様じゃが、気をつけるのじゃ」


「だからなんでこのタイミングなんだよ!? 意味が分からないって!」


 このタイミングに言われたのでアルデの説明が頭に入ってこない。


「まあ、妾が側にいれば大丈夫じゃ」


「だから、なんなんだよ!」


 そう言ったアルデは満足そうに前に向き直る。

 もう変な能力は聞きたくない! いや、全部理解しないといけないんだけど。

 この前聞いたときはニヤニヤしながら何も教えてくれなかったのに、このタイミングで言うって嫌がらせしかない。

 もしかしてこんな感じでこれからも小出しにしていくつもりか!? 


 くそ! アルデのせいで不満が溜まったんですけど!? 能力の詳細も理解できてないし!!


「っ!! 侵入者がいたぞ! 止めろ!!」


「「おぉぉぉぉぉ!!」」


 すると騒ぎを聞いて、騎士なのか衛兵なのか分からないが奥から溢れるように出てきた。


 はははっ! このタイミングで出てくるとは、俺の発散に付き合ってくれるんだよな!


「ぶっ飛ばすぞお前ら! 死にたくない奴は近づくな!」


「「ぐあぁぁぁぁ!」」


 叫びながら来る奴らを吹き飛ばして行く。武器なんか使わない素手だ。

 殴る事でアルデに植えられたフラストレーションが発散される。


 手加減しながらなので死人は出ていないが、思ったよりも難しい。

 ティオルに言ってたが本当に修行になるんじゃないだろうか? モンスターと戦っているのと勝手が違う。


 そんな感じで出てくる兵士達をぶっ飛ばしているが、蟻の巣を突っついたように次々に出てくる。

 そして後ろからも囲まれるように現れる。


「くっ、多いな! 春原さん何か対策は……」


「ああっ! スノハラ面倒くさいのじゃ! この城ごと吹き飛ばすぞ!」


「アルデちゃん! 流石にそれは!!」


「そうだぞ待て! それはダメなやつだ! ここにいないユリアも危ないだろ! 動けなくするだけでいいから!」


 アルデの我慢が限界に来ている。上級魔法どころか極大魔法を撃ちたそうな顔になっている。


 とにかく何か有効な魔法を考えないと、アルデが暴走する。

 そんな事を考えながら進んでいると、


「……ん?」


「『ウインド・スラッシュ』!」


 後方からエミリに向かって魔法の刃が飛んで来た。


「くっ!」


「きゃぁっ!?」


 しかし健治が咄嗟に剣で弾き飛ばす。

 俺も一応「絶永結界」を発動していたが、すぐに解除する。


「近衛騎士長!!」

「おおっ! ケビン様が来たぞ! これで賊も終わりだ!!」

「「「おおぉぉぉっ!!」」」


 近衛騎士長と呼ばれた人物が片手剣を持って後方から歩いてやって来る。

 その出で立ちは歴戦の猛者と言っても過言ではない、体格がいい中年の男だ。


「貴様ら! 賊如きに押されよって! 気が弛んでおるのではないのか!」


「す、すみません!! しかしこいつら中々の強さでして……」


「言い訳は不要だ! 貴様ら、これが終わればデスマーチが待っていると思え!」


「「「は、はいっ!!」」」


 兵士達が絶望した顔で叫ぶ。


「それに魔法部隊はどうした!」


「そ、外のドラゴンの対応で此方に来れません!」


「ドラゴンだと!? ……仕方がない」


「近衛騎士長、とにかくこいつらをどうにかしてください!」


「ふん、良かろう! 儂がこいつらの相手をしてやる! こんな賊は儂一人で十分だ。貴様らはドラゴンの下に迎え!!」


「「「はっ!!」」」


 何か知らないがこの近衛騎士長が来てから兵士達に覇気が戻った気がする。

 まあ、やる気がある所残念だけど、邪魔だから一瞬で片付けよう。


 そう思い俺が一歩踏み出したところ、健治に手で止められた。


「春原さん、俺に行かせてください! こいつは王女様を狙いやがった!」


 健治が怒りながら剣を構え、俺の前に出る。

 こいつも凄いやる気だ。怒る気持ちはわかる。


「アルデ、ユリアは危なくないか?」


「むー、まだ大丈夫そうじゃな。……魔法陣が描いてあるのう……そう言えば今日はあの日だったか? ……うむ。まだ大丈夫じゃと思うぞ?」


 アルデはじっとユリアがいる方を見ながら何か意味深な事を言っていたが、まだ時間はあるようだ。


「わかった。おい健治! 時間は無いからな! すぐに決着をつけろ! 遅かったらアルデを投入する!」


「うむ! 10秒じゃ!」


 10秒って……。この近衛騎士長って割と強そうな感じがするんだけど? 健治なら無理じゃないか?


「わかった、アルデさん! 10秒も掛けませんよ!」


「あぁ? ガキが儂を10秒で倒すだと? 10秒で負けるの間違いじゃないのか? ゲンダルフィンの近衛騎士長をなめるでないぞ! 『ウインド・スラッシュ』!」


「俺はエンスラッドの勇者、羽柴健治! 時間が無い、一瞬で終わらせる!」


 近衛騎士長の攻撃を剣で弾き、そのまま構える。


「ほう、儂の攻撃を2度も受けるか! ただのガキじゃ……」


「宝剣開放! 『グランダム』!」


 健治が宝剣の名を叫ぶ。


「なにっ!? その剣は……!?」


 その瞬間健治の剣が眩く光始める。


「『雷の化身』!」


 その瞬間、健治が雷を羽織る様に身体に纏わり付かせ、一瞬で距離を詰め、


「『雷光の断斬』!!」


 近衛騎士長を一撃で切り捨てた。


「ごっ、はぁぁぁぁぁ……っ!!」


 近衛騎士長が着ていた鎧が破壊され、その場に崩れ落ちる。


「ふっ!」


 健治は剣を振り宝剣の光を収束させ、鞘に納めた。

 その行動は10秒以内だっただろう。


「皆さん行きましょう!!」


 そして振り向き笑いながらそういう健治は、勇者らしい佇まいだった。


「こ、近衛騎士長!!」

「ケビン様が負けた!?」

「この国で勇者達を除けば一番の近衛騎士長を!?」


 周りの騎士達が親玉が倒れたことで取り乱している。全く俺達に攻撃しようとしてこない。


「ゲンダルフィンの近衛騎士長を一撃で……! 前よりも強くなってますねケンジ様!」


「はい! 毎日修行してますので! それよりもユリアリア様を助けに行きましょう!」


 そして健治は駆けだす。


 ……いや、思っているよりかっこよかったんだけど!? 何と言うか「死の斬撃」とかより魔法の名前がかっこいいんだけど!?

 あれか? 王道に進めば、神様に選ばれた勇者ならかっこよくなるのか!?


「春原さん何してるんですか? 行きましょう!」


「……おう」


 その場で立ち止まっていた俺を追い抜いた健治に声を掛けられ俺も走る。

 少し解せないがまあいい。

 今の俺の気持ちよりユリアが優先だ。





    

まさかの健治の一瞬の活躍。普通に騎士団長レベルなら倒せるのは勇者だからです。

次回は土曜日の20時頃です。

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