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異世界貴族に転生した主人公は辺境領地を立て直す  作者: 古座一
第二章 領地繁栄
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第二十四話 イザーク式経済政策・Ⅰ

 ヘルタベルン中央都市イプセンに向かう馬車の中、イザークはアシュレイ、アリーゼ、フィオナに問い詰められていた。


「イザーク大丈夫なの?移民全てに職を与えるとか言っていたけど、あれほどの数を雇い入れれる商会なんてヘルタベルン領三州を合わせてもとてもじゃないけど無理よ。」


アシュレイが焦りの表情でイザークに詰め寄った。


実際アシュレイの言う通りヘルタベルンの商会にあれ程の人数を賄える程の甲斐性は無い。新領の二州はイプセンよりも発展しているとはいえ、流石に十万もの人数を雇用できる規模ではなかった。


「商会に雇用させるなんて初めから考えてないさ。」


イザークはさらっと言い放ち、そのまま続けた。


「イプセンもトリステン州もオーレン州も俺から言わせればまだまだ発展途上の土地だ。だとすればこれは【()()】の問題ではなく【()()】の問題になってくるんだ。」


イザークは転生前ニートになるまでは一流大学を卒業し、一流企業で働いていた経験を持っていた。

前世での経営学、経済学は一通り学んでいたのだ。イザークは頭の中でそれに照らし合わしこの世界でどう舵取りをしていけばいいかの結論は既に出ていた。


「そもそも経営と経済ってどう違うの?」

アリーゼが根本的な疑問を投げかけた。


「【経営】は商会や商店が儲けを出し規模を拡大させる為の方針の事だ。【経済】は【()()民】の略で『世を治める為に民に道筋を立てる政』という意味だ。」


「う~ん、中々難しいですね……。具体的にはどうすれば良いのです?」

フィオナが眉間にしわを寄せ、困った顔でイザークに問いかけた。


「具体的にはやることはたった一つだ。《需要と供給のバランスと取る事》、そして《民の所得を増やす事》だ。」


「兄様、一つじゃなくて二つになってるよっ!」

イザークの説明にすかさずアリーゼがツッコミを入れた。


「いや一つだ。何故なら需要と供給のバランスを取りさえすれば自動的に民の所得は増えるからさ。」


実際にそうであった。

例えば需要(投資や購買意欲)が高く供給(生産力)が低い場合、生産される物やサービスの値段が上がり続ける。

高く売れるのだから儲かると思いがちだが極端な話今日金貨一枚で買えた物が翌月には金貨百枚でしか買えなくなるという事だ。

所得が上がるよりも早いスピードで金の価値が下がり続けることになり金貨が石同然となって結果貧困化する。いわゆるインフレ状態である。


逆も然り。供給(生産力)が高く需要(投資、購買意欲)が低い場合、物が余るので物やサービスの値が下がり続ける事になる。売れないのだから値下げ以外に道はないのだ。

すると店の儲けが減る一方なので儲けを確保する為に従業員の首を切る。首を切られて無職になった者は所得が無いので物が買えなくなる。

買う人が少なくなると物の値段が下がる。以下ループ……。という負の連鎖が起こり貧困化する。いわゆるデフレ状態である。


実際にこの需要と供給のバランスをいかに取るかで経済は成り立っているのだ。


「なに、現状を正確に把握さえできていればやるべき事は簡単だ。」


イザークにそう言われ、アシュレイが整理する。

「現状を考えると、今ヘルタベルンは多くの移民を受け入れて人口が爆発的に増えたのよね。旧領と新州二つを合わせて人口は今二十万人位かしら?そこに十万人の移民が加わるって事だから……約三割の領民が無職って事になるわね。」


「という事は現状のヘルタベルンはイプセンの生産力もあり三十万人の人口でも賄える供給力があるのに対して三割の領民が無職で物が買えないから需要が低いデフレ状態って事になりますね。」

アシュレイの現状の整理からフィオナが結論を導き出した。


「なら需要を増やしてバランスを取ればいいって事だね!」

フィオナの導き出した結論にアリーゼが正しい今後の方針を導き出した。


「のみ込みが早いな流石だぞ。」


イザークが二人の少女の頭を撫で、アリーゼとフィオナは気持ちよさそうに目を細めた。


「わっ私も現状の整理に一役かったでしょ?」

アシュレイが妹達に対抗意識を燃やして抗議してきたのでイザークは仕方なくアシュレイの頭も撫でる。


満足そうに目を細めるアシュレイを見て『あんた姉さんだろうに……。』と心の中でつっこんだが口には出さないのであった。

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