第十六話:魔楯の誕生と、新たな防具
「いまだ、小僧! その赤く光る素材に――お前のスキルを叩き込め!!」
ドナトの野太い怒鳴り声が、轟音と火花が飛び散る工房に響き渡った。 俺は一歩踏み込み、頭の中で自分の全魔力を極限まで高める。思い出すのは、あの絶望的な森で、理不尽を突きつけられたあの日の悔しさ、そして全てを吹き飛ばした『シールドバッシュ』の感覚だ。
(俺のスキルは、ただ受けるためのものじゃない……!)
「オオォォォ――ッ!!」
気合と共に振り下ろしたハンマーが、赤く爛々と光るオーガの素材と魔石の塊に叩きつけられた。 ガァンッ!!! と、工房全体が鳴り響くような凄まじい金属音が爆ぜる。 その瞬間、俺の体内を巡っていたレベル82の莫大な魔力がハンマーを通じて素材へと一気に流し込まれ、ドナトの固有スキル『魔化』の光と完璧に融合した。
眩い閃光が工房を包み込み、やがて熱気がスッと引いていく。
そこに鎮座していたのは、もはやただの武器ではなかった。 漆黒のオーガの素材をベースにしつつ、要所要所に神々しい黄金色の魔力脈が走る、圧倒的な重厚感を放つ大楯。表面にはまるで古代の呪文のような美しい幾何学模様が浮かび上がり、触れずとも持ち主の意志に呼応するかのような脈動を感じさせる。
――『オーガ・ガーディアン』。
それが、この魔楯に宿る名だった。 俺は息を整えながら、恐る恐るその大楯に手を触れた。ずっしりと手に馴染む重量感がありながら、まるで自分の身体の一部であるかのように軽やかな魔力のつながりを感じる。
「……すげえ……」
思わず感嘆の声を漏らす俺に、ドナトは汗を拭いながら、どこか満足げに鼻を鳴らした。
「ふん、悪くねぇ出来だ。お前の魔力と俺の『魔化』が奇跡的に噛み合いやがった。これなら、お前のその規格外のパワーがどれだけ暴れようとも、びくともしねぇよ」
伝説の鍛冶師にそこまで言わしめた最高傑作の出来栄えに、胸の底から熱い高揚感が込み上げてくる。これで、次の戦いでは一切の加減なしに全力で『シールドバッシュ』を叩き込むことができる。
一息ついた俺に、ドナトは工具を置きながら、ふっとニヤリと笑った。
「おい、小僧。まだ終わりじゃねぇぞ」 「え?」
俺が目を丸くすると、ドナトは工房の隅に山積みにされていた余った素材の山を顎でしゃくった。
「オーガの素材はまだかなり余ってやがる。せっかくの極上物だ、その半端な旅装束じゃ釣り合わねぇ。……残った素材で、お前にふさわしい防具も仕立ててやるよ」
その言葉に、俺は思わず目を見開いた。 最強の魔楯に加え、希少種オーガの素材から作られる専用の防具。 俺の冒険者としての装備は、今、名実ともに最高峰へと生まれ変わろうとしていた。




