第十三話:特級の報奨と、新たな装備の予感
翌日の昼下がり。ぐっすりと睡眠をとって疲労を完全に洗い流した俺は、再び冒険者ギルドの扉をくぐった。
昨日の一件ですっかり顔なじみとなった受付嬢のマリアは、俺の姿を見るなり、冷や汗混じりの複雑な笑みを浮かべて小さく一礼した。 「お、お疲れ様です、シードさん……。昨日は本当に、凄まじい報告をありがとうございました……」
ギルド内は、昨日の今日とあって、どこか異様な興奮と緊張感が入り混じった空気に包まれていた。あちこちから「おい、あのシードって奴だぞ」「オーガの希少種を一人で狩ったっていう……」というヒソヒソ声が聞こえてくるが、俺はそれを適当に聞き流し、カウンターへと歩み寄った。
すると、奥の個室からあの隻眼の巨漢がずっしりと重い足音を立てて現れた。 ギルド長・バルトロだ。
「よく来たな、シード!」
バルトロは豪快に笑いながら、俺の肩をバァンと叩いた。その顔には、一冒険者に対するものというよりも、最高峰の稼ぎ手を迎えるような深い感心の色が浮かんでいる。
「昨日の回収班からの報告はすでに受けている。街道に転がっていた『4本牙の猪』と、あの希少種オーガの回収は完璧に終わらせた。お前が言った通り、すさまじい戦闘の痕跡だったぞ。本当によく一人であんな化け物を仕留めてくれた」
バルトロが手合図をすると、マリアが震える両手で重厚な木箱をカウンターの上にそっと置いた。 カチャリ、と蓋が開く。
中から放たれたのは、周囲の空気を歪ませるほどの濃厚な魔力の波動だった。 鎮座していたのは、濁りのない極上の輝きを放つ「特A級の魔石」。そして、オーガの硬質な角や希少な素材の数々。さらに、ずっしりと重みを感じさせる金貨の山――特級の報奨金だった。
「これだけの素材と功績だ。うちのギルドとしても最大の評価をさせてもらった。受け取ってくれ」
「……ありがとう、助かるよ」
俺は素直に頭を下げ、その報酬を受け取った。これだけの資金があれば、今後の活動拠点や生活には当分困らない。
だが、報酬の山を眺めながら、俺はふと自分の右手に視線を落とした。 ――愛用の大楯だ。
昨夜の希少種オーガとの激闘、そしてレベル82の身体から放たれる規格外のパワーと魔力を受け止め続けた結果、その表面には無数の細かいひび割れが走り、所々が黒く焦げ付いていた。 (耐久限界が近いな……)
どれほど自分の肉体が強化され、スキルが強力になっても、それを支える武具の強度が追いついていなければ、次の強敵と戦った時に一撃で粉々になってしまうだろう。
バルトロは俺の視線の先にある大楯に気づき、ふっと含みのある笑みを浮かべた。 「ほう、その盾か。昨日の凄まじい衝撃を物語っているな。……おい、シード。お前ほどの腕利きが、いつまでもそんな一般の店売りの盾を使っている場合じゃないぞ」
ギルド長のその言葉に、俺は思わず顔を上げた。 「何か心当たりでもあるのか?」




