第56話 【正装】さらば『大は小を兼ねる』!俺が 辿り着いた「本当のジャストサイズ」
翌日。俺は決戦の地、ユニクロへと降り立った。
以前の俺なら、「一番大きなパーカー」という、無難な選択肢を選んでいたかもしれない。
だが、今の俺は違う。脳内にはファッションアドバイザー・木場課長からの教えがインストールされていた。
(……まずはネイビーのジャケットと白シャツ。それに、細身のスラックスだ)
課長の指示通りの服を揃え、迷わず試着室へ。
自分なりに「少し小さいか?」と思うサイズを選び、鏡の前で自撮りをして課長へと送信した。
数分後。既読がついた。
『八天くん。……話にならないわ。もうワンサイズ落として』
スマホの画面越しに、深いため息まで聞こえてくるようなツッコミが即座に入った。
(……結構攻めたつもりだったけどな)
以前の俺にとって、身体のラインが出る服は「弱点」を晒すようなものだった。無意識のうちに、身体を隠すための大きなサイズを選ぶ癖が染み付いていたのかもしれない。
俺は半信半疑のまま、さらに一回り小さいサイズを手に取り、試着室へ戻る。
(……きつくないか、これ?)
不安になりながらもボタンを留め、再び写真を送る。
『……いいわね。それが「ジャストサイズ」よ。肩のラインが綺麗に出てるわ』
画面に表示された、力強い「OK」のスタンプ。
改めて鏡を見る。そこには、ダボついたシルエットではなく、程よく引き締まった「一人の男」が立っていた。
サイズ選び一つで、ここまで印象が変わるのか。
「大は小を兼ねる」ということわざは、ファッションにおいては通用しない。価値観がアップデートされた瞬間、俺の「かっこよさ」のステータスも、アップしたのかもしれない。
さらに、課長から追い打ちのワンポイントアドバイスが届く。
『あと、美容室に行ったら「眉」は必ず整えてもらうこと。顔の印象も“先端”で決まるの。自分でやらず、プロに任せなさい。分かった?』
「……はい、承知しました」
俺はスマホを握りしめ、レジへと向かった。
カゴの中にある新しい装備は、今の俺の身体に、そして心に、驚くほど確かなフィット感を与えていた。




