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第42話 【願望】夢幻の戦場に散る名もなき一兵卒。その血の代償と沸き上がる渇望!

転生アニメが放つ青白い光が、暗い部屋を淡く照らしている。


明日は休日。


誰に気兼ねすることなく「別次元の物語」にどっぷりと浸かる事が出来る。


だが、今日のトレーニングのせいだろうか、いつもより早くまぶたが重くなる。


画面の中の派手な爆発音と、現実の静寂が溶け合い――境界が曖昧になっていく。


……気づけば、俺は深い眠りの中へと落ちていた。


鉄の匂い。むせ返るような土埃。そして、肺を焼くような硝煙。


目が覚めると、そこは凄惨な“戦場”だった。


俺は伝説の魔術師でも、選ばれし勇者でもない。


泥にまみれ、安物の革鎧を纏っただけの、名もなき一兵卒。


だが――視界の先に、ひときわ強く輝く「光」がいた。


白銀の甲冑を纏い、戦場を切り裂くように駆ける姫騎士。


「全軍、突撃! ――道は私が切り拓く!」


凛と張り詰めた、その声。


ジムで何度も聞いた、あの魂を鼓舞する声。

(……みさきさん)


俺は必死に、彼女の背を追う。


砂を蹴り、血の匂いの中を駆け抜ける。


戦況は優勢だった。このまま、あの背中を守り抜けば――勝てる。


その時だった。


崩れた石壁の影。乱戦の隙を縫って、敵の奇襲部隊が牙を剥く。


狙いはただ一つ。部隊の象徴である、先頭の姫騎士。


「……っ!」


考えるより先に、身体が爆発的に動いた。


地面を蹴り抜く脚。間合いを詰める速度。

腰の回転を乗せて振り抜く剣。


すべてが、これまで積み上げてきた“トレーニング”の延長線上にあった。


敵を弾き、叩き、押し返す。


――守れた。

そう確信した、その刹那。


倒したはずの敵兵が、最期の力を振り絞りボウガンを構える。


鈍く光る照準が、無防備な彼女の背を一直線に捉えていた。


静かに迫る死の予感。


迷うことなく俺は、その射線へと踏み込む。


――とん。


乾いた、あまりにも軽い衝撃。


「……あ、が……っ」


腹部を貫く冷たい違和感。


遅れて、焼けるような熱が全身を駆け巡る。


膝から力が抜け、視界が激しく揺らぐ。


「なぜ……! なぜ、私のために……!」


彼女が駆け寄り、崩れ落ちる俺の身体を抱き上げた。


白銀の甲冑が、俺の腹部から溢れ出す赤でゆっくりと染まっていく。


その瞳に浮かんでいるのは、戦場で見せる強さとは正反対の――剥き出しの悲痛。


意識が、砂のようにほどけていく。

視界が、細く、暗く閉じていく。


その最期の瞬間。


(……守れた)


「良い人生だった」と、一度は満足しかけた。


なのに――。


猛烈な、焼き付くような渇望が胸の奥から突き上げてきた。


こんなところで、終わっていいはずがない。


あの背中をただ追うだけじゃなく、その隣に、堂々と立てるようになるまで。


もっと、強く。


もっと、俺自身の「意志」で。


「……まだ……だ……」

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