第3話 【悲報】女神に会った直後にこれかよ。俺を待っていた公開処刑
「ヒロイン……やっぱヒロインは全てを解決するんだな」
そう確信し、俺の心は晴れ渡っていたが、それが危険なフラグであることに、俺はまだ気付いていなかった。
人生最大の危機から生還し、オフィスへと滑り込んだ、その時。
(……やばい、社長がいる)
本来終わっているはずの、ミーティングが長引いていた。
全員が直立不動で沈黙する中、コソコソと一番後ろへ潜り込む。
正面に立つのは、歴戦の将のごとき風貌をした男──社長だ。
気に入らない社員を公開処刑し、謎ルールを押し付け、屍を量産する「破壊と創造の神」。
今日の表情は、いつにも増して険しい。
社長が咳払いをすると同時に、全社員に沈黙のバッドステータスが付与される。
「今期の売上は危険水準に達しています。このままでは人件費の削減を検討せざるを得ません」
低く響く神託。微かにざわつく空気。
だが反論する者は誰一人としていなかった。
「自己管理のできない者や勤務態度の芳しく無い者は、現在のような給与やポジションを保てるとは思わないように!」
「ハイ!」
反射のように響いた一糸乱れぬ返事。
「ところで……」
一拍間を置き、社長がゆっくりと周りを見渡す。
その視線がオフィスをなめるように走り、俺のいる座標を捉えた気がした。
静かな足音とともに、沈黙を切り裂いて近づいてくる。
祈りも虚しく、その御足は俺の前で止まった。
「八天くん……君かね?」
「は、はいぃ……」
心臓が跳ねる。
だがゲームの告白シーンのような甘い展開が待っているはずもない。
「出社時刻を、教えてくれないか?」
「……9時15分です」
「始業時刻は」
「……9時です」
社長の大きな声が、オフィス中に響き渡る。
「だらしない体型で自己管理もできず、遅刻をした彼のようにはならないように。」
俺の時が止まった。
吐き捨てるように去っていく社長。
後に残されたのは、罪を背負わされたスケープゴート。
同僚たちの視線が針のように俺に突き刺さる。
これは組織の指揮系統を無視したパワハラ。
法をも軽んじた蛮行。
言いたいことは山ほどある。
だが、だらしない体型も、遅刻も、紛れもない――「事実」。
悔しさと情けなさが胸を抉る。
午後の仕事は全く手につかず、俺のメンタルは、完全に深淵へと沈んでいた。




