第25話 【執行猶予】120秒のセーブポイントで、俺は再び王への謁見を誓う
1、2、3、4、5。順調だ。スタミナにはまだ余裕がある。
6、7、8、9、10。呼吸が、少しずつ苦しくなる。
太ももの奥で、じわじわと炎が燃え始めた。
11、12、13、14――まずい。酸素供給が追いつかない。
肺が悲鳴を上げ、脳がけたたましく警報を鳴らし始める。
15。――ここだ。ここが、俺の現時点での「限界」だ。
キリもいい。ここで一旦クエスト完了のボタンを押し、リザルト画面へ移行すべきだ。
そう判断した、その瞬間。
「はい、あと2回いきましょう!」
背後から「神託」が飛んできた。
みさきさんによる、絶対的な命令。
――マジか。
脚はすでに、制御が怪しくなってきている。
だがそれ以上に、呼吸が追い付かない。どれだけ大気を飲み込んでも、酸素という燃料が枯渇していく。
「……っ、16!」
気合いという名のリソースで足りない分を補う。
ガクガクと震え出した膝を精神論でねじ伏せ、必死に立ち上がる。
「はい、ラストいきましょう! 」
即座に追撃。
――既に自分で決めた限界は超越している。
だが、これが最後だと自分に言い聞かせ、魂の出力を最大まで引き上げる。
肩で激しく息をしながら、ゆっくりと、慎重に腰を落とす。
視界がわずかに歪み、意識が遠のく。
それでも――。
「……17ッ!!」
その瞬間、すべての糸が切れた操り人形のように崩れ落ち、俺は床に四つん這いになった。
肺が、焼ける。
――これが。キング・オブ・エクササイズ。
王の洗礼か。
完敗だ。
だが、ほんの少しだけ――「昨日の自分」が支配していた領土に、新たな旗を立てられた気がした。
そんな勝利の余韻に、心地よく浸っていた時。
「はい、2分休んでから、もう一セットいきましょう!」
頭上から、この世のものとは思えないほど涼やかな「死刑宣告」が降ってきた。
――嘘だろ。
二分。わずか百二十秒。
死闘を終えたばかりの戦士に与えられる休息としては、あまりにも短い。
血液がすべて、破壊された筋肉の修復へと急行しているせいか、俺の顔はリアルに土気色
――文字通りの「顔面蒼白」になっていた。
そんな俺をよそに、聖女の微笑みを崩さぬまま、無慈悲にストップウォッチの針は進んでいく。
……もしかして。
この人、優しい顔をして、とんでもなく「攻撃」に極振りしているタイプなのでは?
荒い呼吸の合間に、そんな生死に関わらない思考が意識の端をかすめていった。




