表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生悪役令嬢は何も知らない  作者: 桜祈理
表側 ベアトリーチェの概ね平和な日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/11

 しばらくして、すべてが白日の下にさらされた。


 ステラが関与を疑われていた『国家を揺るがす大罪』とは、『魔物の王グウェルの封印を解き、復活させてこの国を恐怖と混乱に陥れようと画策していた罪』だったらしい。


 原作の中では魔物と戦い、グウェルを封印するはずのステラが、なぜそんな、いわば真逆の暴挙を計画するに至ったのか。


 実は、この策略の首謀者はステラではなく、ステラの後見人でもある王都神殿の神官長だったというのだ。


 数百年前、伝説の聖女と剣聖は激闘の末にグウェルを倒し、その体を湖の底に沈めて封印した。そして、万が一にもグウェルが再びこの世に現れることのないよう、魔物の体の核でもある『魔石』を取り出して、厳重に保管することにしたという。


 その保管場所というのが、かつての聖女も身を寄せていたという王都神殿だったのだ。


 代々の神官長は、王家も知らないこのトップシークレットを密かに語り継ぎ、門外不出の超重要機密事項として秘匿し続けてきたらしい。


 ところが、長い年月を重ねるうちに、人々の心の中から聖女や聖女をこの世に遣わした神に対する信仰心は徐々に失われていった。聖女の伝説は残っても、グウェルの封印以降新たな聖女は現れない。


 結果として、王都神殿もその絶大な影響力を失い、どんどん弱体化の一途をたどる。


 当代の神官長は、この現状を深く嘆いていた。


 そんなとき、運よく、というか運悪く、なのか、ステラという聖女候補が現れた。その事実を知った神官長は、邪な野望を抱いたのだ。もしも再び魔物が復活し、その圧倒的な危機的状況下でステラが『星の聖女』として覚醒すれば、人々は聖女にすがり、聖女を敬い、崇拝することになるのではないか。


 そうすれば、聖女の後ろ盾である王都神殿もまた、かつての権勢を取り戻すことができるのでは……?


 神官長は秘匿されていた魔石を使って、グウェルを復活させようと目論んだ。


 ただし、復活したグウェルを再び封印するためには、覚醒した『星の聖女』の存在が必要不可欠になる。


 そこで、神官長はステラに協力を求めた。ステラは自分がたくさんの人々に敬われ、傅かれ、信仰の対象となって優雅に暮らす未来を想像し、すぐさま快諾したという。


 それから二人は、グウェル復活と聖女としての『覚醒』に向けて、密かに準備を進めていたらしい。


 でもステラの不用意な発言からすべての企みが露見してしまい、最終的には神官長ともども身柄を拘束されることになったのだ。



 ――――というのが、公に発表された今回の騒動の『全容』である。



 でも、恐らく、これは真実ではない。



 だって、あのときステラは私に向かって、「あんたなんか、いずれ殿下に断罪されて捨てられて、あっけなく死ぬくせに!」と叫んでいたのだ。


 それに、何の躊躇もなく「本来殿下と結ばれるべきなのは、この私」と断言していた。そもそも、そんな事実はないというのに「どうせあなたはアンディ殿下に迷惑をかけて、困らせてばかりなんでしょう!?」なんて決めつけてもいた。


 結論。ステラも『星降る夜のフェアリーテイル』の内容を知る、転生者だったのでは……?


 だというのに、物語のヒロインである自分が学園に入学してもアンドレア様との距離は一向に縮まらず、かなり戸惑ったはずである。


 そのうえ執拗な嫌がらせを仕掛けてくるはずの私も、我関せずを貫いている。


 原作とはだいぶ異なる改変された現状に、ステラはだんだん苛立ちを募らせていったのだろう。


 そしてとうとう業を煮やして、アンドレア様との婚約解消を直談判すべく私の前に現れたのだ。すごい瞬発力と行動力である。うらやましくはないけど。


 ただ、腑に落ちない点も多い。


 確かにステラは、魔物の復活を目論んでいた節がある。「こっちには切り札がある」と言っていたのは、そういう意味なのだろう。


 でも、動機が『人々の信仰を集めて優雅に暮らすため』というのは、ちょっと無理があると思う。そんな理由で、原作の内容を知るステラが魔物の復活を画策するとは思えない。


 原作では、ステラとアンドレア殿下が想いを通わせたあとで魔物が復活し、それをきっかけにして二人は『星の聖女』『暁の剣聖』として覚醒する。


 でも実際の二人は、新たに入学してきた聖女候補と学園生活のサポートに徹する王太子という、至って事務的な関係。いくらアンドレア様がにこやかで親切でも、そこに色だの恋だのといった浮かれた感情は存在しないとステラも気づいている。


 だったら、あえて魔物を復活させることで、改変された筋書きを強制的にもとに戻そうと考えたのではないか。


 魔物が復活してしまえば、アンドレア様も物語のヒーローとしてヒロインとの愛を選ばざるを得ないはず。そうすれば、自分は筋書き通り、ヒロインとして生きていくことができると考えたのでは?


 それこそが、ステラの暴挙の真の動機なのでは……?



 もちろん、確証はない。



 それに、依然として謎は残る。



 例えば、神官長と共謀した本当の理由は何だったのだろう、とか。取り調べの際に、自分が転生者であることを明かさなかったのだろうか、とか。


 まあ、転生者だと語ったとしても、王家や国の上層部がそれを信じることはないだろうし、聖女もどきの狂った妄言として処理されるのがオチだろうけど。


 もはやステラ本人に真実を問い質すことはできず、結局のところ謎は謎のまま。


 すべての真相は闇に葬り去られ、明らかになる日は永遠にこないのだろう。






◇・◇・◇






「リーチェ、どうしたの?」


 私を膝の上に乗せてご満悦なのか、アンドレア様の声がやけに弾んでいる。


 あれから、ステラの処分はすんなりと決まった。


 私利私欲のためにグウェルの復活を目論んだとして、神官長とともに公衆の面前で極刑に処されたのだ。


 王都神殿で保管されていたグウェルの核である魔石は、今後は王家が責任をもって保管することになったという。


 ステラが去ったことで学園はいつも通りの平和な日常を取り戻し、案内役の任を解かれたアンドレア様はこれまで以上に私から離れない。


 すべて終わったというのになんだかんだで王宮に引き留められているのも、アンドレア様が裏であれこれ画策しているからだと思う。果たして私は、家に帰れるのか?


「何の憂いもなくなったというのに、考えごと?」


 アンドレア様がちょっと不服そうな目をして、私の顔を覗き込む。


「俺と一緒にいるのに、俺以外のことを考えているのかな?」

「そういうわけでは……」


 騒動が一段落してからというもの、なぜかアンドレア様の独占欲に拍車がかかっているような気がしないでもない。ステラに振り回されていた反動なのか? とにかく、愛情表現の圧が半端ないというか、なんというか。


「ねえ、リーチェ」

「は、はい」

「この前も言った通り、俺はとっくにリーチェ中毒なんだけど」

「……はい?」

「リーチェにも、俺中毒になってほしいんだよね」

「俺中毒」


 またしても、未知の珍妙ワードが飛び出した。


 見上げたアンドレア様の瞳の奥に、いつか見たどろりとした仄暗い何かがうごめいている。私ってば、また何がしかのやばいスイッチを押しちゃった……?


「わ、私も、アンドレア様をお慕いしておりますが……」

「そうだろうけどさ。でも、ただ好きなだけじゃなくて、もう俺なしじゃ息もできないくらい俺に溺れてほしいんだよね」

「……へ?……」

「だからそうなるように、これからリーチェをもっとでろでろに甘やかして、もっとメロメロにしようと思うんだけど、いい?」


 どこか獰猛な匂いすらする愛情過多な懇願に、なんだかくらくらとめまいがする。


「も、もう、十分すぎるほど甘やかされておりますよ……?」

「うーん、でも今までは、ちょっと遠慮していたというか」



 遠慮!? あれで!?



 確実にトップギアだったと思うけど!?



「とにかく、これからは本気でリーチェを俺のものにするつもりだから。覚悟しておいて」


 不敵な笑顔でやや不穏な宣言をする美貌の婚約者に、私は中途半端な薄笑いを浮かべるしかなかった。





「……お、お手柔らかに、お願いします……」




 



次話からは、アンドレア視点のお話になります。


ベアトリーチェの物語の裏側で、アンドレアが暗躍しまくりです……!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ